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第3話 人気者って辛いですよ

とうとう第三話ですね!


どうも、お久しぶりです!


兄の壮士です!


前回、第二話で何とか下着と服を買ったのはいいものの、蛍がなかなか着てくれないんですよ〜。


本当に辛いです!


思わず、涙を流しましたよ!


あ、もしかして……。


蛍は着たいけど、恥ずかしくて着れないのでは?


そうか……。


それしかありえんな!



「蛍、兄さんには素直にしてくれてもいいんだよ〜!」



「……は?(また、いきなりなんだ?)」



「でも、そんな恥じらいな蛍もまた好きだ〜!!」



「…………(筆者様。あなたはいつまで、僕にこのコーナーを続けさせるつもりですか?)」



「ああ! 蛍、可愛いぞ、可愛いぞぉ〜〜〜っ!!」



「……えーと、読者の皆様。本当にアホな変態兄さんですみません。それでは、第三話へどうぞ〜っ!」





ついにとうとう、この日がやってきました。

 

 




……そう、始業式!

 





 

学園側には前もって、事情を説明しておいたからいいものの。

果たして、これから本当に、女の姿のままで学園生活をうまくやっていけるのだろうか?

ああ、不安の種が多すぎて、もう考えるのが嫌になってくる。

 

「はぁ〜……」

 

風見学園女子生徒の制服を着た自分の姿を鏡に映して、僕はため息を吐き出した。

 

 

 

この数週間、ジュースの効力が切れる気配はまったくと言ってもいいくらいになかった。

しかも、お父さんの出張がどうやら延びてしまったらしく、当分、家に帰って来れそうにもないらしい。

 

はぁ〜。鬱だ。

なんて鬱な気分になるんだろう。

……ああ、なんだか、また現実逃避したくなってきた。

だいたい、学園側もなんであっさりと事情を受け入れてくれたんだ?

確かに、受け入れてもらった事には感謝しているのだが、男が女となって、学園に登校する事って、安易に認められる事じゃないだろう。

というか、男から女に変わってしまった事に疑問を持って欲しいくらいだ。

……普通に考えるとおかしいと感じるだろう。


まぁ、学園長が気をきかせて、他の教師、及び生徒にはこの事を極秘にしてくれたので助かるばかりだったのだが……。


 

「はぁ〜。それにしても、この制服のスカート、短すぎだよ……」

 

スカートの裾を持ちながら、位置を調整する。

このスカート、階段を上がる際に下にいる人に見えそうなくらい丈が短かった。


……うぅ。


今なら、短いスカートが嫌な女性の気持ちもわかる気がする。

 


「おーい! 準備できたか〜?」

 

兄さんの呼ぶ声が一階から、聞こえてきた。

僕は用意した学園用の新しい鞄を持って、一階へと降りていく。

玄関には既に支度を整え、準備万端の兄さんが待っていた。

 

「ごめん、兄さん。待たせた?」

 

「いや、全然大丈夫さ! マイハニー!!」

 

はぁ〜、……朝から本当にうざいテンションだ。

いい加減、「マイハニー」や「マイシスター」とか言うのを本当にやめていただきたい。

 

「それよりもだ! 蛍!!」

 

「……なんですか? 兄さん」

 

 

 

 







「なんでツインテールじゃないんだぁあああーッ!?」

 

 

 

 






兄さんが大声で叫び出す。


……そんな狂言をいきなり、言わないでください

それに朝から本当に騒がしい。

近所迷惑という事をこの人はわかっているのだろうか?

 

ああ、でも……わかっていてもこの人はそんな事、きっと聞かないだろうな。

はぁ〜……。

 


「あのね、兄さん。あの髪型にするの、凄く時間がかかるんです。それに面倒くさいし……」

 

「い、いかん!! それではいかんぞ!! 面倒くらいなら、代わりにこの俺が……――!!」

 

「遠慮します」

 

「ぐはぁあああーっ!!」

 

兄さんが言葉を言う前に、僕はきっぱりと断っておく。

 

だって、兄さん。

ツインテールにした時の僕の姿を見たら……。

 

 

 

 

 

 

 



……襲ってくるじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 


女の子になって数週間、ツインテールの髪型にしては、襲ってくるの連続だった。

しかも、懲りずに何回も襲いかかってくるので本当に性質が悪い。


「お願いだよ〜!! 一生に一度のお願い!!」

 


……兄さん。

こんな事に一生のお願いを使わないでください。

はぁ〜。

だんだんと頭が痛くなってきた。

 

「嫌です。だって、あの髪型にしたら、襲ってくるじゃないですか」

 

「大丈夫! 家の外では襲わないぜ!!」

 

親指を立てて、「GOOD!」のサインをこちらに向ける兄さん。

 


えーと……。

兄さん、外だけ限定ですか?

家でなら、襲う気なんですか?

 

うぅ……、本当に兄さんは欲望に忠実すぎます。

はぁ〜、まるで獣のようですね。

実の兄ながら、つくづく哀れに思えて悲しくなってくる。


……はぁ〜。

 

 

「と、とにかく! 無理なものは無理……って、あれ? 兄さん?」

 

 

いつの間にか、兄さんの姿が玄関から、消えている。

兄さんの靴はまだあったため、家の中にはいるはずだ。

何か忘れ物でもしたのだろうか?

 

「お〜い! 兄さ〜ん」

 

呼んでみても、兄さんからの返事が返ってこない。

はぁ〜。

一体、何をしているのやら……。

 

「兄さ〜ん、早くしてくださ〜い! ……先に行ってますよ〜?」

 

「ちょ、ま、待ってくれ〜!! 行かないで〜!!」


二階から姿を現した兄さんが、玄関へと降りて戻ってくる。

というか、兄さんはあの短時間で一体、いつ、どうやって二階へと上がってたんだろう?

 

……謎だ。


 

「悪いな! ちょっと忘れ物を取りに行っていたんだ。待たせたか?」

 

「……別にいいよ。それより何を取りに行っていたの?」

 

「ああ!! これさ――!!」

 

そう言って、兄さんは手に持っていたものを僕に見せた。

 

 

 

 

 





「えーと、……リボンだよね、これ?」

 

 

 

 

 




兄さんが手にしているのは、僕がツインテールの髪型にする際に、髪の毛を結ぶリボンだっだ。

何故にリボンなのだろうか?

 

……ま、まさか。

 

 

 






「さて、蛍! ツインテールにしようか!」

 

 

 






……やはり、そうきましたか。

はぁ〜。

なんで、こんな展開ばっかりなのでしょうか、神様?

 

兄さんが物凄い笑顔でこっちに迫ってくる。

なんだか、その笑顔が不気味に見えて、仕方ない。

体中に怖気が走ってきた。

 

ああ、何か嫌な予感がしてきた……!

 

「えー……っと、兄さん、……聞いていなかったの? ぼ、僕は――!」

 

「大丈夫だよ、蛍はツインテールがいいんだよね〜!」


僕の話をまったく聞かず、兄さんは迫る行為を止めようとしない。

 

ねぇ、兄さん。

僕、“ツインテールがいい”って、言った事がありませんよ。


というか、兄さん、恐いです!


うぅ……、兄さんの目が本気になっている!

 


「に、兄さん! お願いだから、落ち着いてください!」

 

「はっはっは! 大丈夫だ。俺はいつでも、どこでも落ち着いているぞ!!」

 


そ、それは顔をニヤケながら、言う台詞なんですか?


ああ、……兄さんの顔が異様に恐く見える。

 

 

 

……ち、近づかないでください!


そんな笑顔で近づいてこないで!

うぅ……、恐い。



不気味なくらいに恐すぎます!

 

 





って、あ、そんな強く髪を引っ張っちゃ……っ!

 

 

 



「い、痛いっ! に、兄さん、やめ……ぁ……っ! ……やだ、僕いやですよっ!」

 

 

「だ〜め! 兄さんの言う事は、ちゃんと素直に聞かなくちゃ……ね〜!」

 

 

「あ……ぅ……あは……んあ……っ!」

 

 

「そんなに嬉しい声を出さないでくれよ、蛍。……可愛いから、なんかいじめたくなるしさ」

 

 

「あぅ……っ! だ、駄目……駄目、駄目ぇ……ぁ……んっ!」

 

 

「はっはっは! 大丈夫だよ、……優しくするからさ」

 

 

「に、兄さん、兄さんっ!! ……ん、あ、あぅ……! い、いや、……いやぁああーっ!」

 

 

 

 

 






…………………

 

 

 

……………

 

 

 

………

 

 







「はい、完成! やっぱり、とても凄く似合っているぞ〜!!」

 

「うぅ……むぅ〜」

 

あっという間に兄さんに髪型を変えられてしまった。

 




そう、……ツインテールに。

 




隣には、まるで勝ち誇ったような満面の笑顔で立っている兄さんが、僕の姿を見て、満足げに言って見せた。

 

一方、僕の方はというと……。

 

「むぅ……っ!」

 

もちろん、怒っています。

はぁ〜……!

この人は本当になんて自分勝手な人なんだろう。

 

はぁ〜、もう金輪際、ツインテールにはしたくない。

 

本当にそう思ってしまう。

でも、兄さん……強引だからな……。

多分、さっきのように簡単に屈してしまいそうだ。

 

ああ……、本当にもう、嫌だ……。

はぁ〜。

 

「まだ怒っているのか? ごめんよ。……でもね、蛍のツインテールは本当に可愛いんだ! もう、破壊的な可愛いさなんだよ! だから――!!」

 

「……だから、何ですか?」












「兄さん、欲望に勝てなかった♪ テへッ」

 

 









……おい、こら。

 

テへッ、じゃないだろう。

あまりにも、自分勝手すぎるよ。

……というか、実の弟に己の欲望をぶつけないでよ。

そういう事は彼女でも作って、彼女にやってもらえばいいだろう。

はぁ〜、……ああ。

朝から、本当に気分を害してしまった。

 


……もう、この人を放って置いて、先に学校に行こうかな。

 


僕は靴を履き終えた後、鞄を持って、外へと出て行った。

 

 

 


――バタンッ!

 

 

 

 


「え、あれ? ち、ちょっと〜! ま、待ってよ、蛍! 俺、靴まだ履き終えていないんだよ、ま、待ってくれ〜〜〜っ!!」

 

 

 

 

 




 

 

 

   






通学中に何人もの風見学園生徒に出会い、その度に、僕はジロジロと見られていた。

 

 

「お、おい! あの子、すっげー可愛くないか?」

 

「ん……? うわ、めちゃくちゃ可愛いじゃん!」

 

「あれって、同じ学校の制服だよな! うわ〜、あんな可愛い子が同じ学校だと思うと、凄くテンション上がるんだけど!!」

 

 

前にいた男子生徒二人がこちらを見ながら、ひそひそと話していた。

 

……というか、話の内容は全部聞こえているので、ひそひそ話にはなっていないのだが。

言動から見て、僕と同じ、新入生なのだろう。

僕を見ていた二人の顔は、下心がむき出しになっていた。

 

 

「可愛いよな〜。あんな子、彼女にしたいな〜」

 

「ばーか! お前じゃあ、絶対に無理だって」

 

「う、うっせーな!」

 

 

……全くもって、冗談がきついです。

僕は男ですよ〜?

あなた達と同じ性別ですよ〜?

 

……まぁ、言っても信じるわけないと思うけどさ。


はぁ〜。


男子生徒達に見られながらも、学園へ向かって歩く事、10分。

これから、毎日通う事になる風見学園。

……もとい、「私立風見ヶ丘学園」に着いた。

学園の正門を、ささっと通り、僕はクラス発表が張り出されている掲示板へ向かった。

 

 

「おい! 見ろよ、あれ!」

 

 

掲示板へと向かっていく中、一人の男子生徒が僕を見て、声をあげた。

それが周りの生徒へと伝わり、僕の方へと振り向いていく。

 

 

「うおっ! か、可愛い〜!」

 

「……すげー」

 

 

「そこらのアイドルも顔負けだな、あれは」

 

 

男子生徒のギラギラした視線が浴びせられる。

 

あぅ……、またですか。

 

 

「スタイルすごく良いなぁ〜、あの子」

 

「う、羨ましい……」

 

 

男子生徒に混じって、女性生徒からの視線も浴びせられた。

 

こ、今度は女の子から……。

……僕は男ですよ。

 

「はぁ〜」

 

軽い嘆息をする。

どうやら、見事なまでにこの容姿は目立っていた。

僕は周りから、ざわざわと聞こえてくる声を、聞こえないよう振りをして、掲示板へと歩いていった。

掲示板には生徒が囲むように集まっていた。

僕はその中を潜り抜けていく。

 

その際、また周りで声が湧き始めたが気にする事なく、クラス分けの紙が張られている真正面へと立った。

そこには六枚の紙が、ザラッと並べられていた。

 

なるほど、僕達のクラスは全部で6クラスなのか。

えーと……。


僕の名前は……っと!

 


「……あっ、あった! クラスは……一組か」

 

しかも、出席番号も一だったので、一年一組の一番。

なんか、一尽くしだな、僕。

 

……そうだ。

ついでだから、海斗のクラスも見ておこうか。

 

「海斗は……あっ! 海斗も同じ一組だ」

 

……まさか、海斗と同じクラスになるとは。

 

 

 



神様、本当にありがとうございます。

 

 

 



海斗と同じクラスになれた事、凄く嬉しいです。

できれば、この調子で僕の体も早く男に戻して欲しいです。

 

「――おはよ、蛍」

 

背後から、海斗の声が聞こえて、振り返る。

そこには、はにかんだ笑顔を見せた海斗が僕の後ろに立っていた。


「あ、おはよう」

 

「もう、見たのか? 蛍は何組だったんだ?」

 

「うん、……一組だよ」

 

「へぇ〜、そっか」

 

会話をしながら、海斗が掲示板に張られた、クラス発表の紙を見る。

 

「あっ、海斗、僕と同じクラスだよ」

 

「おっ、そうなんだ! ありがとな、俺の分も見てくれて」

 

そう言って、僕の頭を二回撫でた。

 

「こら。撫でるな」

 

「わりぃ、蛍の背が小さくなったから、つい」

 

笑いながら、からかう海斗に、僕は「う、うるさいな〜!」と小言を漏らした。

海斗がゆっくりと、口を開く。

 

「まぁ、なんだ……。よろしくな、蛍」

 

「うん、よろしくっ!」

 

僕と海斗は握った手と手をお互いに軽く当てた。

 

 

「な、なんだ! あの爽やかな笑顔をした野郎は……!」

 

「……羨ましい」

 

「ち、ちくしょぉおおおーッ!」

 

「あーあ、やっぱり彼氏いたんだな〜……」

 

 

後ろでは、かなりの数の男子生徒が悔しげな、または怒りの顔を浮かべて、僕達を見ていた。

 

……はぁ〜。

なんか、すごく勘違いしているよ。

……なんだか、嫌な展開がくるような気がする。

ああ、神様。お願いします!


どうか、この勘が当たりませんように……!

 


「蛍? ……どうした?」

 

「な、なんでもない、……なんでもないよ!」

 

「ん……本当かな〜?」

 

僕の様子が何かおかしいと感じたのか、海斗が少ししゃがんで、僕の顔を覗き込もうとする。


 



「な、海斗……っ!」

 




その光景は、僕の後ろから見れば、顔が重なったようになる。


 

つまりだ。

 

……僕達がキスをしているように見えてしまう、という事だ。

 

 

「あ、あの野郎ぉおおおー!!」

 

「……見せつけてるな」

 

「ちくしょぉおおおー!!」

 

 

後ろで僕達を見ていた男子生徒数名が、怒りの視線をこちらに向けている。

ある生徒は、殺気まで送っていた。

 

……まずい、かなりまずいよ。



「なんか、すごい汗かいてるぞ? ……本当に大丈夫なのか?」

 


……無理です。

この状況に耐えられません!

 

海斗が心配して、僕の額に手を当てる。

 


「っ……!」

 

「熱は……ないみたいだな。よかった」

 

 

 

 

 




よ、よくないっ!

 

 

 

 

 




海斗、後ろの視線に気づいてよ。

……僕達、結構危ないんだよ?

 

後ろからは、今も男子生徒からの視線が向けられていた。

 

このままでは、拉致があかない……。

 

「か、海斗! 早く、クラスに行こうよっ!」

 

僕は海斗の手を離し、顔を上げて言った。

 

「あ、ああ。でも、体の方は大丈夫なのか?」

 

海斗は、まだ納得していないのか、心配している。

 

「だ、大丈夫だから! ほ、ほらほら、早く!」

 

「あっ、ちょっと! 蛍――!」

 

「い、いいから! 早く行こっ!」

 

僕は海斗の腕を強引に引っ張って、校舎内へ向かっていった。

 多分、僕達の後ろでは、今も男子生徒がこちらを睨みつけているだろう。

 

 

 

 

ああ……。

 

絶対に、振り向きたくないな。

 

 

はぁ〜……、なんで僕っていつもこんな目に……、あぅ。



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