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第9話 蛍

知ってしまった後悔よりも


知ってしまった幸せを『私』は感じたよ?



「という訳で、少し物語が深刻になってきましたね。読者の皆さん、お久しぶりです。蛍です! さてさて……、前回のお話からなると……今回は僕の謎が明らかに……? さて、どうなる事でしょうか!? それでは、第9話をどうぞ〜♪」


 

チュンチュンと小鳥のさえずりが聞こえてくる。

ああ、もう朝か……。


「ん……んぅ……」


ベッドから起き上がった僕は腕を伸ばして、小さな欠伸をする。

近くの鏡を見ると、目の下にうっすらとだが隈が出ていた。

それに昨夜、泣いた事もあってかすごく酷い顔だった。

気楽に眠れる方がおかしいに決まっている。


「ふぅ……」


すぐ近くにある小さな机に飾られた写真に写るお母さんを見つめる。

どうして……、どうして昨夜、あんな変な映像が頭に流れ込んだんだろう。

まったくもって、意味不明だ。

あんなの……僕は知らないのに。

僕の記憶の中には入っていないのに……。

それに『私』って……一体……。












海斗が助けに来てくれた後、パジャマに着替え終えた僕は海斗を招き入れた。


「ありがと、海斗。助かったよ」


あのまま、風呂場に閉じ込められていたら、きっと逆上せ死んでいただろう。

海斗に軽くお礼を言うと、海斗は少しむくれた表情で僕に話してくる。


「なぁ、なんであんな状況になっていたんだ? その、壮士さんと二人きりでお風呂なんかに……」


「あ、ああ、あれね……。たまたま、僕が入っている時に兄さんが間違って入ってきたんだよ」


突然の海斗の質問に動揺してしまう僕。

……うぅ、なんとも情けない。


「……そうか」


渋々と納得したようだが、どうやらまだ疑った目を向けてくる。

一体何だと言うんだ……、こっちはそんな所じゃないというのに……。

風呂上りで体が熱かったために、自室に海斗を招き入れる前にリビングで汲んできた牛乳を飲んでいく。

ふぅ、美味しいなぁ〜。

やっぱり、風呂上りは牛乳と相場が決まっているよ、うん。


「壮士さんは……もう寝たのか?」


牛乳を一気に飲み干しながら、頭を縦に振る。


「っ……ぷはぁ〜! うん、今日はもう疲れたって……」


豪快な飲みっぷりを海斗に見せながら、答える。



そう、兄さんは風呂を出た後、すぐに自室へと戻っていった。

いつもなら、この後しつこく僕に構ってくるのだが……。

何故かはわからないが、直感的にそれがまるで、僕の事を避けているように見えた。



「そっか……」


そう言って頷くと、海斗は僕の目をまっすぐ見てきた。

そして、体をゆっくりと僕の方へ近づけさせてくる。


「ど、どうしたの?」


「なぁ、お前……あのさ。保健室の事……その件で俺の事をここに呼んだんだよな?」


「あ、……うん」


「それで……何?」


ふてくされた感じで言う海斗の言葉に、少しムッとするがおさえる。


「……とりあえず、ごめん」。


「え? な、なんだよ……、いきなり」


海斗が意外な顔で僕を見つめてくる。

僕は頭を少し下げて、続きを言っていく。


「いや、今日……その事があって、僕が海斗の事避けていたから……。だから、ごめん」


「…………」


「本当に済まなかったって思っているよ。……ごめん」


「…………」


海斗からの返事がない。

気になりゆっくりと顔を上げてみると、黙ったまま海斗がため息をついていた姿が目に映った。



「はぁ〜……」



なんだか少し残念そうな顔で、小さなため息をまたついた。


「か、海斗……?」


一体全体、どうしたって言うんだろう。

というか、まずどうしてそんなに残念そうにしているんだ、海斗は。

……逆にこっちがため息をつきたい気分になってしまうよ。

せっかく、ちゃんと面と向き合って謝ったというのに……。

はぁ〜……。ほら、ため息をついてしまった。

……心の中でだけど。


「はぁ……やっぱり……いくら蛍が女になったとはいえ、……男同士じゃ……だめだな……」


「ん? 今、何か言った?」


小声でぼそぼそと呟く海斗の言葉が聞こえなかったために、聞き返す。


「いや、別になんでも……」


そう答える海斗の姿を見て、思わず鳥肌が立ってしまった。



赤くした顔を僕から背ける海斗を気色悪いと思った僕は異端だろうか?

いや、まぁ、大事な親友にこう言うのはなんだが、……いつもの男らしさがまるっきり感じられない。

何、この弱弱しくてなよなよしている海斗は。

……一体、全体本当にどうしたっていうんだよ。

まさか、変な食べ物でも食べておかしくなったんじゃないだろうな。


……それはないか、うん。



「さて……っと」


海斗が立ち上がり、僕の部屋から出て行こうとする。


「もう帰るの?」


「ああ、用件はこれだけだろ? 明日は休みだけど、俺ちょっと予定入っていてな」


「そっか……。うん、わかった」


「それじゃあ……」


そう言って、海斗は僕の部屋から出て行く。

僕も海斗の後を追って、玄関まで見送った。














それが昨日の出来事。

あまりの眠たさに昨日あった事の大きさを忘れかけてしまうが、それはいけない。

流石に兄弟ギクシャクしたままで生活するのは、気まずいだろう。

僕はベッドから降りて、パジャマから着替え始める。

着るのは、兄さんに買ってもらった服だ。

かなり裾の短い青のショートパンツとノースリーブと……。

明らかに今の子供っぽい容姿の僕には、とてもじゃないが似合いそうではないと思うが……。

まぁ、仕方ない、……今日はこれで兄さんのご機嫌をとろう。


自分で言うのもなんだけど……僕、我ながら健気な少年に育ったな……。



「兄さん! 起きていますか〜?」


着替え終わった後、僕は兄さんの部屋へと向かっていく。

休みの日の兄さんはほとんどの場合、朝遅くまで寝ているのだ。

そのために、いつも僕が起こしに行く事になっている。

トントンと、軽いノックを入れて確認する。

いつもなら、僕の掛け声とこのノックで目を覚ましてくれるのだが。

どうやら……返事が返ってこないところを見ると、まだ寝ていらっしゃるようで。


「ふぅ……。兄さん、入りますよ?」


僕は無許可で兄さんの部屋へと侵入した。

兄さんの部屋の中に入るのは随分久しぶりに思える。

兄さんは僕の部屋に入ってきているのに、……なんだかおかしな気分だ。

ベッドでは兄さんが、すやすやと眠っていた。


「……おーい、兄さん。朝だよ〜? 起きてよ、もう九時回っているよ〜?」


「ん……すぅ……すぅ……」


……くそ、なかなか起きてくれないな。


それに結構、綺麗な寝顔で寝てやがるし。

なんだか……、これじゃあ起こすのがもったいないような気がしてきた。

僕は兄さんの寝顔に見惚れながら、その頬をつんつんとつついてやる。

兄さんの肌は思ったよりも、プニプニとしていて……柔らかい。

「むぅ……、こやつの肌。すごく柔らかいじゃないか」

と、馬鹿な事を言いながらも兄さんの顔で遊んでいく僕。

昨日のお風呂の兄さんのあの顔も良かったけど、でもこの兄さんの無邪気そうな寝顔の方が可愛らしい。


って……、何を考えているんですか、僕は。



「はぁ〜……。馬鹿だ、僕」


そう呟いて、兄さんの頬をつつくのを止める。

そうして、部屋の辺りを見回しながら、調べていく。

本棚には色々な小説や難しい本まで置かれていて、僕が読めそうな本はない。

更に、意外……というかありえないのだが、兄さんの本棚の奥底まで調べても、エロ本が出てこない。

本当にこれは驚愕すべき事だ。

あの兄さんが……いつでも思春期真っ盛りの兄さんが、エロ本の一つや二つ、本棚に入れていないなんて……。

いやはや、もう昨日の出来事がどうでもよくなってきたくらいだ。

こればかりは、僕も深く感動してしまった。

次に僕は兄さんの勉強机の椅子に座りながら、机を探索していく。

何か、他に面白い事はないだろうか?

そう思いながら、僕の動く手と好奇心は止まらなかった。

むしろ、増すばかりだった。


「ん? なんだろう……。鍵が掛かっている?」


机のある引き出しを開こうとするが、そこには鍵が掛かっていて開けない状態でいた。

力任せに引っ張って見せるが……やはり開かない。

どこかに鍵がないか、探してみる。

すると、机のシートに鍵らしき物を発見して、僕はそれを手に取った。

多分だが……、間違いない。

これがこの机の鍵だろう。

この引き出しの中に、何があるのか……。

駄目だ……心がワクワクしてきた。

何か、見られてはいけない物とかが入っているのかもしれない。

というか、この中にエロ本が入っている可能性だってある。


でも……、本当にこの引き出しを開けてしまっていいのかな?


唐突に僕は疑問に思った。

もしかしたら、兄さんにとって……すごく大事な物がこの引き出しの中に入っているのかもしれない。


ああ……、どうしよう……。


……ええい! この際、見たとしても知らぬ振りをして入れば、なんとかなるだろう。



「それでは……兄さん、すみません」


一言、寝ている兄さんに断りを入れる。

そして、僕は兄さんを起こすことを当に忘れて引き出しに鍵を入れて開けていった。

引き出しの中には、一枚の写真と一冊の日記帳があった。

僕は期待を胸に、写真を手にする。

どうせ、兄さんの初恋の相手の写真だろうと思いながら……。



「あれ? これって……」






でも、それは兄さんにとって、初恋の相手でもなければ友達との写真でもない。






映っているのは……僕。






それも女の子の姿の僕を、そのまま子供にしてしまったような写真だった。


髪の毛は今よりも短くて、ショートカットだが……これは明らかに僕本人。

写真の裏を見てみると、紛れもなく『蛍、六歳』と書かれている。


「なに……これ……」


唇をブルブルと震わせながら、そう呟いてしまう。

昨日、不意に風呂場で見てしまったあの映像が頭に浮かんだ。

『私』という幼い女の子の姿をした、もう一人の僕を……。

その子はお父さんから、酷く虐待を受けていて……すごく可哀想で……。

でも、それは僕じゃない……。

僕であるはずがない……。



ありえない。



だって、僕は……男で……。





それに僕が六歳の時の記憶だって、ちゃんと―――





……あるのに、……あるはずなのに……!












どうして……、どうして僕は思い出せないんだ……?












何がどうなっているんだ……。



僕は本当に『伊藤 蛍』なのか……?


それとも、写真に映るこの女の子が本当の『伊藤 蛍』なのか……?



駄目だ、頭が混乱してきた。

それに、激しいくらいの頭痛がする。


「僕は……、僕は……一体……?」


そう、答えを求めている者のように独り言を言うと、もう一つ、引き出しの中から取り出された日記帳の存在に気づく。

そうだ、もしかしたら……真実はこの日記帳に書かれているかもしれない。

日記帳を開いてみると、有難い事に兄さんはこういう事に几帳面なのか、日記の初めには目次欄が記入されていた。

具体的に書かれているところを探し当て、その目次欄に書かれた最後の題名に僕は目を疑ってしまった。




蛍が“男の子に変わってしまった”日……。




僕はそれを見て、驚きながらも目次欄に書かれたページを開いた。

ページを開いてみると、そこにはより詳しく詳細が書かれていた。















 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇



今日、僕の従兄妹の蛍ちゃんが……僕のパパが作った薬を飲んで男の子になってしまった。


蛍ちゃんは、蛍ちゃんのお父さんに酷い事をされていて……いつも傷だらけで……。

それを見て、いつも悲しんでいた僕に蛍ちゃんはいつも笑顔だった。


「私は大丈夫だよ、お兄ちゃん」


そう言われて……余計、悲しくなった。

僕は蛍ちゃんに何も出来ないのに。

それでも、蛍ちゃんはいつも……いつも僕に心配ないよと、そう声を掛けてくれる。



守ってあげたい。



守りたかったのに……。





ある日、蛍ちゃんはお父さんからあまりに酷い暴力を受けて入院してしまった。


全身痣だらけで……お見舞いに行った時、蛍ちゃんはずっと眠っていた。

すごく、悲しかった。

蛍ちゃんのお父さんが許せなかった。

僕はパパに言った。

蛍ちゃんを助けてって……。


でも、パパは無理だ……って。


パパにはどうする事も出来ない。


そう、僕に言った。

それでも、僕は諦めなかった。

蛍ちゃんは僕が一番好きな女の子だから。






蛍ちゃんが入院して目覚めた日、僕は急いで蛍ちゃんの入院する病院にお父さんと行った。

でも……蛍ちゃんと会った際に言われた言葉が「だれなの? お兄ちゃん」だった。

すごく悲しかった。

その場で……泣きそうになった。

病院の先生は僕とパパに言った。



蛍ちゃんは『記憶喪失』っていう病気にかかってしまったって……。



だから、僕の事を全部忘れていたんだって……。

僕とパパが先生の話を聞いている時だった。

蛍ちゃんが間違えて、パパのあの薬を飲んでしまった。

それを全部飲んでしまい、蛍ちゃんは男の子になってしまった。

病院の先生もパパもびっくりしていた。


でも僕が一番びっくりしていた。





それでも、僕は蛍ちゃんのそばにいた。


男の子に変わっても、蛍ちゃんは蛍ちゃんだから……。






蛍ちゃんのお父さんが蛍ちゃんを『育児放棄』っていう事で、蛍ちゃんのお父さんの弟のパパに『親権』っていうのを譲った。

それは、蛍ちゃんが男の子になって一ヶ月くらいのことだった。

これであの意地悪なお父さんからいじめられずに蛍ちゃんは僕とパパと三人で暮らせる。



本当に嬉しい。



蛍ちゃんが男の子のままでも、僕は好きだよ。





ずっとそばにいるよ、僕だけは蛍ちゃんの正義の味方だから。






 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


















日記はそこで止まっていた。

だが、そこからの出来事は大体、予想できた。

この後、兄さんやお父さんは僕のために精一杯尽くしてくれたのだろう。

僕が女の子に戻るきっかけとなったあのジュース……薬も、きっとお父さんが必死になって開発したはずだ……。

そう思うと、なんだか胸が熱くなった。


僕は……いや、“私”は……。



私は……『伊藤 蛍』



でも、私は女の子で……それで兄さんとは兄妹じゃない。

兄さんは従兄妹の壮士お兄ちゃん。

それで……、私の本当のお父さんは……。

お風呂場で流れたあの映像は私の昔の記憶。

残酷なあの日常を救ってくれたのは、兄さんと今のお父さん。

その事にすごく感謝する。



でも……、分からない事が一つ。



「お母さんは……」


そう、私のお母さんについての事が一切、そこには書かれていなかった。


私のお母さんは……?

私のお母さんって、あの写真に写るお母さんは……果たして、私の本当のお母さんなのだろうか?


思い出そうとするが、あの辛く悲しい日々よりも前の事は思い出す事が出来ない。

これも、兄さんの日記に書いている『記憶喪失』のせいなのだろうか。

兄さんの方を見てみると、すやすやとまだぐっすりと寝ていた。

私は、兄さんに近づき……そして、その顔を見る。


「私……思い出したよ、兄さん……」


兄さんの顔をじっと見つめる。

この人はずっと私を見守ってくれた。

それも、すごく小さい時の頃から、今まで。

本当の兄妹でもないのに……まるで、本当の兄妹のように接してくれた。

記憶を取り戻した今だから、兄さんの過度のスキンシップの裏返しに宿るその想いが痛いほど、伝わってくる。


「ねぇ、兄さん……。私、昔の辛い記憶を思い出して、悲しいけど……でも、それ以上に嬉しいんだよ?」


兄さんの顔へだんだんと近づいていく。

今だから……今、思い出す事が出来たから、だから、こんなにも想いが溢れてしまう。


「兄さん……今まで、ありがとう。事あるごとに結構、酷い事ばかり言ったよね。……ごめんね? 兄さん……―――」


「ん……んん……」


兄さんは幸せそうに、寝顔で応える。

そのだらしない返事に、クスッとつい笑ってしまう。





その愛しい顔を見て、私は―――唇を重ねた。





「大好きだよ、兄さん」






|ω`)やぁ、皆様。

眠いです、朝方の更新となります。

桃月です。

皆様の要望につき、早めに更新をしました。

というか、更新した日の読者様の数がかなり多くて舞い上がっていますw

|ω`)本当にありがとうございます!


さて、今回の話ですが、もちろんこれで終わったわけではありません。

まだまだ回収しなきゃいけない矛盾点や伏線、それに蛍、壮士、海斗の関係もまだはっきりしていませんので;;


ですが、これだけははっきり言っておかなければなりません。






蛍、ついに記憶を取り戻し、一皮向けてデレ期に突入しましたwwww



黄金期キタ━━(゜∀゜)━━!!!!






本当に申し訳ないw!

というか、展開に無理があったから、伏線回収が多くなってしまった←自業自得だw

もう少し後にした方がいいと思っていたが、だが後悔はしていない←おい




さて、ここから私も書きやすくなると思います。

なんたって、蛍がデレるのでwww←まてw


さてさて、だんだんと作者自身も楽しくなってまいりました。

『僕なり』、今後ともご愛読よろしくお願いします!


あと、メーデーさん、いつも感想ありがとうございますw笑

その感想にいつも励まされて、ここまで頑張ってきましたw!

これからも、感想をどうか、どうかぁあああああwwww←結局それかw


では、皆様

次の話でまた会いましょう


ヾ(*゜∇^*)ノ~ see you next time !!

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