表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/3

まだ自分が何者かを理解していませんでした

目の前いっぱいにトラックの鮮やかな原色が広がる。


「_____________!!!!!!!!!!」


私の名前を叫ぶ君の声。


スローモーションでこちらに向かってくる大きな鉄の塊。


こんなに動きが遅いなら、走れば逃げられるかもしれない。

でも体が全く動かない。


あぁ、私このまま死ぬんだな。

トラックに轢かれるなんて、なんてありがちなんだろう。

こんなんじゃ恰好がつかないなぁ…


そんなことを考えているうちに、体に体験したこともない大きな衝撃が走る。


私の体は吹き飛ばされる。

よく痛くもなかったなんて言うのは嘘なのか。

とてつもなく痛い。これだったら、今すぐ死んだほうがましだ。


ああでも私が死んだら君は泣くだろう。

最期に、ずっと伝えてきた想いをもう一度。


力を振り絞って叫びながらこちらを見つめている君の方を振り返る。


「愛してる」


この声は、君に届いたかな。

小さすぎて聞こえなかったかな。



君の双眸から涙が零れる。


もう地面が目の前に迫っている。


私が最期に見たものは_____





゜・。+☆+。・゜・。+☆+。・゜・。+☆+。・゜・。+☆+。・゜・。+☆+。・゜・。+゜・。+☆+。・゜・。+☆+。・゜・。+☆+。・゜・。+☆+。・゜・


「京香さん、行ってきまーす!!」

「はい、行ってらっしゃい。」


私、かがみ 京香きょうかはここ時雨町で喫茶店を営んでいる。

時雨町は冷涼な気候で、病気療養で有名な土地だ。

だから、お客さんは身体の弱い人が多い。

実は私もその一人だったのだが、治った後も町の人たちの温かさから離れることができず、

ここで喫茶店をしているのだ。


今元気に走っていったのは、涼宮すずみや 凛音りんねちゃん。

この近くにある夕凪学園にかよう高校2年生だ。

明るい性格で人気者らしく、いつもたくさんの友達に囲まれている姿を見かける。

あの子も昔は病気がちだったのだが…



「京香さん、おはようございます」

「あ、おはよう早ちゃん」


この子は東雲しののめ ひでりちゃん。

凛音ちゃんと同じ、夕凪学園にかよう高校3年生だ。

生徒会長をやっているらしく、言葉遣いもとても丁寧だ。

早ちゃんはこの町に生まれた時から暮らしているらしく、風邪なんかをひいたところを見たことがない。


というわけで私はこの町で充実した生活を送っている。

この平凡な暮らしがずっと続けばいい、そんな風に思っていた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ