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勇者な幼馴染と村人Aな俺  作者: 松田利斗
初めての勇者
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 西へと歩を進めるうちに、ウサやスラ以外のモンスターも現れるようになり、現在俺達は足が生えた大きなエビみたいなのと戦闘中だ。


 そんなでかエビ君を相手に遊者会長が剣を薙ぐ。


「はっ!」

 

 彼女から詳しく話を聞いたところ、遊者は基本的には優秀な剣士なのだがマイナスの特性があり、戦闘中に攻撃が外れたり転んでしまったり、あるいは遊び出したりなどしてしまうそうだ。


 しかしマントを翻し剣を振るう会長の姿からは、一見そんな変な職業とは思えない。様になっている……というか、まるで勇者のようだ。


 一方、本物の勇者はというと、


「っはわー……こんな大きかったら一匹でお腹いっぱい食べれるねー」


 まるで駄目。


 俺もエビは大好きだけど、こいつを見てそういう発想にはならん。もはや呆れるばかりだ。


「坂野君!」


 そこへエビのハサミを切り落とした会長からコンビネーションの合図。


「おう!」


 俺はそれに応え、ハサミのなくなった側からエビに接近し、頭部に棍棒を振り下ろす。


 ――ゴキャッ!


 そんな鈍い音と同時に甲殻が砕け、それからエビはぴくりとも動かなくなった。


「よっし!」


 勝利を確信し汗を拭っていると、横目に飛び跳ねて喜ぶ彩乃の姿が映る。


「やったー。えびー、にくー」


 こいつ、気は確かなのか……。


「すぐ消えるから、食えねえだろ」


 よしんば食えたとして、よくこんな得体の知れんものを食べる気になるよな。


「えー……」


「えー、じゃねえ。それより何度も言うようだけど、ちゃんと戦闘に参加しろよ。今のはスライムと違ってドロドロしてねえだろ」


「あ、そういえば私も戦わないといけないんだっけ」


「まだその段階なの!?」


「ごめーん。すっかり忘れてたー」


 『テヘヘ』と頭を掻いてとぼける彩乃に呆れる俺と微笑む会長。


「ったく、お前は……」


 村人ですら戦ってるのに、なんで勇者が毎回不参加なんだ――と思う一方で、彩乃の性質を考えると仕方のないことだとも思う。何しろこいつは昔から誰かと争ったり競ったりすることが苦手だった。


 高い戦闘能力を持ちながらも、知識がなく性格も不向きな彩乃。


 知識とやる気はあるものの、戦闘能力が低い俺。


 俺達の性質と職業はどちらもかみ合っておらず、微妙としか言えない。そうなると、たまに悪癖が出てしまうもののちゃんとした戦闘能力を有し、かつセンスもある会長が俺達のエースと言っていいだろう。


「あーあ……俺も戦闘職だったらなあ。武器も一人だけ棍棒だしよ……」


 右手の棍棒を見つめ、思わず愚痴がポロリとこぼれた。


「坂野君、肩書きや見た目を気にしては駄目よ。大事なのは自分が持ってるものを最大限に活かすことができるかどうかよ」


 会長が優しい目でそう俺を諭す。


 いいこと言うぜ。さっき鬼のような形相してたのはきっと夢かなんかだな、うん。


 それにバッタモンの職業に就いてるだけあって説得力もある。本当の勇者にこれを言われたら上から目線しか感じないからな。よし、少し元気出た。とにかく自分にできることをがんばろう!


「会長、ありが――」


「それに、坂野君には棍棒が似合っているわ」


 俺の感謝の言葉は、喜んでいいのか判断に苦しむ発言で遮られた。


「……え……っと……」


 これ、どう返したら正解なんだ?


「お、俺って棍棒似合ってるか?」


 結局わからなかったので、彩乃に聞いてみることに。


「うーん……似合ってるかどうかはともかく、勇ちゃんの棍棒振り回して戦ってる姿って、なんか原始人みたいでかわいいよー」


「げ、原始人て……」


「プッ」


 顔を腕で覆い、明後日の方向を向く会長。


 まあ、隠しても噴き出す音は聞こえたんですけどねー。


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