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I・COLOR  作者: かたお
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エピローグ

ジジィとの一件から一週間後。実篤にいいところを全部持っていかれた俺は少し不服になりながらも「あいつ」に会いに行こうと街中を歩いていた。


中村家だが、ジジィも真弓に謝罪しこれからは門限を延ばし寄り道してもいいということにした。

真弓は満足しているようで、最近は女友達と楽しく遊んでいる。カラオケも行ったことがなく初めていってからは病みつきのようだ。

ただ、1つ。いいところを全部持っていった実篤に災難が降りかかった。

ジジィに自分の気持ちをぶつけた実篤は(自己)満足しその場を去ろうとしたが、強さと堅実さをジジィに気に入られ真弓の見張り役をやらされている。

……警察にストーカーとして捕まらなければいいけど。


とにかくこの件は丸く纏まったんじゃないか?正直、実篤がいなかったら纏まらなかったのかもしれない。結局俺は自分ひとりで何かしたわけじゃない。

だから救世主には相応しくない、救世主にはなれないけど鍵にはなれるのかな。


近くのコンビニを見つけて中にはいる。とりあえず甘いシュークリームとかエクレアなんかを買っていけばいいだろうか…。

そう思いコンビニのデザートコーナーに行くと真弓とクラスの女の子がいた。



「あ、志賀君!!」



「よう、真弓。」



艶やかなロングストレートの髪を耳にかけるような仕草をしながらスイーツを選んでいる。その瞳には、その瞳の色には芯の強い光が感じられた。


真弓を視界の中央に捉え「知りたい」と願う。途端背景がセピアに変わり彼女のシルエットが浮かび上がる、青色…もう心配は無いようだ。

さて、俺も何か買わなきゃな…。しかし女の子が好きなデザートってなんだろ?



「なぁ真弓、女の子ってどんなデザートが好きなんだ?」



「ん…?人それぞれじゃないかな?」



デスヨネー。

とりあえずカゴにエクレア、プリン、ヨーグルト、シュークリーム、カットパイン、チーズケーキ等々ありったけのデザートを突っ込みレジに向かう。



「2780円になります。」



「はい。」



財布から樋口を取りだしレジの店員に差し出す。元より物や食に浪費していなかったのでお金には余裕がある。

……こんだけあればどれか一つは気に入ってくれるかな?


コンビニから出てあいつのところへ向かう。

コンビニから出るときに雑誌を読んでいる実篤のような背格好の黒ずくめの男が居たが…、まぁ実篤じゃないだろうな。俺の友人があんな変質者なわけがない。そう頭で唱え続けた。





「あら、おかえり直哉君。」



「ただいまです。美羽さん。」



自宅であるマンションに戻ってきた。そこにはいつも通り掃除をしている美羽さんがいた。



「最近あまり二人でいないのね、喧嘩しちゃった?」



うふふ、と笑いながら楽しそうに話している美羽さん。



「今から仲直りしにいく予定です。」



そう言ってレジ袋を軽く上にあげ苦笑いをする。美羽さんはそんな俺を見てクスクスと笑いながら近づきレジ袋の中のエクレアをすっと抜いた。



「これ貰っていくわね、ちゃんと仲直りするのよ?」



そう言うと美羽さんは俺の肩を叩き管理人用の一室の中に戻っていった。

俺は数百円と引き換えに勇気を貰いエレベーターに向かった。

いかん…、今になって緊張してきた…。

どんな顔をして会いに行けばいいんだろうか?しっかりお礼も言いたいし…。

エレベーターにはいりボタンを押す。不安が大きくなり心臓の音が大きくなるにつれて、エレベーターも上昇していく。

彼女の住んでいる階に着く。今思えば彼女の部屋に出向くのは初めてだろうか。

ドアの前に立つ、手はわなわなと震えインターホンのボタンまで指がたどり着かない。

何分もそこで迷っていたが急に扉が空いた。



「ぬわ!?」



思わず尻餅を着く。すると物凄い殺気を放った友妃がドアの隙間からこちらを覗き込んでいる。

その形相はメデューサ、ゴルゴン、そんな感じの敵を石化させようとするそんな瞳だった。



「……何のようだ?」



彼女はまるで会話をする気はさらさらないぞという意思表示のように重たく、気だるそうに呟いた。



「えっと…、少し話をしてくれないか?」



「…テメェと話すことなんざねぇよ。」



ドアを勢いよく閉めようとする、今閉められたら二度と会えないような気がする。

俺は足を反射の速度で扉の隙間に足を滑り込ませる。正直骨折するかも知れないが骨折ですむなら安いもんだ。



「っ!?」



友妃が驚いたような表情をし、ドアを一気に開いた。



「バカ野郎!おま…ケガしたらどうすんだよ!?」



「お前と話せるんなら構わないよ。」



なにバカなこと言ってんだと彼女は怒りながらも心配してくれる。



「なんだよ…何がしたいんだお前は?」



だからお話しようよっていってるんだけどな。

彼女はわかったと発すると部屋の奥に入っていった。ドアにはチェーンがかけられていて外からは空きそうにない。



少し経つと友妃が部屋の奥からきて何かを少しためらいながらもこちらに投げつけた。

チャリン、とそれが音を鳴らし俺の足元に滑ってきた。



「…鍵?」



「お前の部屋の合鍵だ!!これを返してほしかったんだろ、返すよ!!」



あぁ…、確か友妃が俺の部屋で爆睡してたときの…。

俺が彼女に渡した「物」、彼女が俺から貰ったもの。

つまり彼女にとっては俺との決別を表したいんだろうか?

だとしたら…。俺は鍵を拾い上げる。

そしてそれを投げ返した。鍵は音を鳴らしながら友妃の前に落ちた。



「……なんなんだよ。何がしたいんだよ!?」



彼女は睨み付けるように俺を見る。

しかし話が進まない。

俺が行動を起こそうとすると彼女は全力で避ける。



(もうここで全て吐いたほうが説得できるか…?)



気づけばしらぬ間に緊張は無くなっていき、冷静な判断が下せるようになっていた。

まぁ、下した判断は馬鹿な答えだったが。



「友妃!聞いてくれ!」



「嫌だ!」



即答、間髪も入れず即答した。

でもここで退いてはまたどうと堂々巡りに付き合わされるだけだ。



「お前に会ったのは真弓の上履きに画ビョウを入れてたときだったな。」



友妃の体が少し跳ねる。だが聞きたくないと答え両耳を塞いだ。

意地でも聞かないってか。



「あのときはマジおっかねぇなぁって思ってた。」



「……はぁ?」



友妃が怪訝な顔でこちらを見る。

今答えたということは、彼女は聞いているようだ。



「レディースというかスケバンみたいな?そんな感じなヤツがいるなって」



そう、最初に彼女に会ったとき、俺は彼女に睨まれていた。

真弓をいじめている人間だと思い近づいたのだ。

だが蓋を開けてみると彼女は友人の作り方を明らかに間違えていた不器用な女の子だった。

あと、動物や植物が好きで、家庭的で…。


よく人を外見で判断してはいけないと聞くが、人間は大体無意識…、生理的に顔で人を判断している。

俺だって最初見たときは恐怖を感じた。

だが彼女は、人の心配ができる、いい人間…というのは幼稚な表現かもしれないが。

悪いヤツではないのだ。


だけど。


いや、だから。


だからこそ。


俺は彼女に恋したのかもしれない。


俺は普段人との関わりを持たなかった。

怖かった。その人物に嫌われるのが、怖かった。

気持ち悪がられるのが。

真弓に近づいたのもあくまで彼女が「黄色」だったため、放っておけなかったからだ。

考えてみればおかしかったんだ。色々と。

「人と関わりたくない」なら「関わるはずが無かった」んだ。

今までの俺なら真弓と別れた後部屋に招いたりは絶対にしなかった。

そうすれば関わりはなくなるから。だがしなかった。何故だろう?

答えは「関わりたかった」からだろう。

俺は彼女に興味を抱いていたんだ。



「なぁ友妃。もし俺がさ、お前の事好きだとしてさ。」



「…なんだよ。フったやつのセリフじゃないな。」



「いいから聞けって。もし俺が気持ち悪い力を持っていたらどうする?」



俺の力。「相手の生きる気力を色で識別できる能力。

これを聞いた母は俺を軽蔑した。

これを聞いた洪庵先生は調べてくれた。

これを知った友達「だった」人間は離れていった。

これを聞いた戸尾先生は親身に話を聞いてくれた。

これを聞いた実篤はすげぇと驚き受け入れてくれた。

友妃はどうなんだ?



「……その能力ってのは、透視とか透明になるとかか?」



あぁ……。気持ち悪いというか変態じゃないか。



「違う、俺は他人の生きる気力が見えるんだ?」



「生きる…気力?」



わかってないみたいだな…。仕方がないから昔の考え方で伝えるか。

なんだかこう宣言するのはなかなか久しぶりな気がする。


夕日が俺の背から入る。彼女に俺の影がかかる。

これで嫌われたら嫌だなとかそういうのは頭に浮かんでこなかった。

頭のどこかで彼女なら理解してくれると思っているからだろう。

なぁ友妃、俺はな…。



「俺…人の『寿命』が色で見えるんだ。」




どうもはじめまして、野菜と大豆が好きなヤサイスキー・ダイズスキーです。


まずはここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

今後とも暇な時にでも読んでいただけるとありがたい限りです。


最近の話をすると私は大学の入学式と研修旅行がありました。

入りたくって入った大学ではなく一番下の滑り止めだったのですが、元女子校ということで楽しみなキャンパスライフでした。が。

初日の試験で見た面子はなんだかEXILEにいそうな顔した奴等が…。

終わった…。サラバキャンパスライフ…。

まぁ人を外見で判断してはダメですよね。


後、アンケートの入学の動機の欄も大変でした。


「Q1何故あなたはこの大学に入学したのですか?」


「A.滑り止めにしか受からなかったから渋々入学しました。」

………………………………。

アカン!これケンカ売ってるじゃん!


「A.女の子が多いからです。」

…………。

変わらねぇえええええええ!!



結局思い付かず友達がいたから、と書いたヤサイスキーでした。



さて、次は直哉と小さな男の子の話で寿命編を終わらせます。

ほどほどに(今週HUNTERXHUNTER載ってるかな?レベルに)期待して待っててください。



ヤサイスキー・ダイズスキー。

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