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I・COLOR  作者: かたお
6/12

行動

日曜日の朝、いつもとは違う地下鉄に揺られながらある病院に向かう。

適塾病院、子供の頃、俺の「力」について気味悪がった母が俺を連れていった病院だ。


そしてその医者の中に一人だけ群を抜いて頭のおかしい人がいる。

俺はその医者に今から会いに行く、あの人なら何かわかるかもしれない。

俺の「力」を認めてくれたただ一人の人間なら。



「で、なんで友妃がついてきてるんだ?」



「だ、だって病院に行くんだろ!?心配でいてもたってもいられなくて!!」



あー…またなんか一人で妄想を膨らませているな。

というかなんでお前が心配してるんだよ。

別に俺は病気でもなんでもないが…。



(いや、病気なのかもな。)



目を押さえながら頭の中で自嘲ぎみにボソッと呟く。

しかし…、彼女がついてくるのは正直面倒かもしれない。

別に隠しているわけではないがこの「力」について相談しにいくわけだし。


結局、色々試してみたが彼女は帰ろうとはしなかった。




「すいませーん。」




病院の受付の前に立ち人を呼ぶ。すると奥からナースさんが出てきた。



「はい、本日はどうなされましたか?保険証や…。」



「あ、いえ、会いたい人がいるんですが…。緒方洪庵(おがたこうあん)先生っていられますか?」



「えっと…ご予約の方ですか?」



「あ、いえ。予約はしていないんですが…。」



「大変申し訳ないんですが、予約していないと緒方先生も忙しい方なので…。」



…予約をしないとダメなのか?

今までの人生で大きな病院に通ったことのない俺には病院のルールというものがわからなかった。

隣で友妃が呆れた顔をしている、コイツにこんな顔される時がくるとは…っ!!

仕方ない今日は諦めるかと思っていると。

ふいに声がどこからか聞こえた。



「あぁ…その子はいいんだよ。言うなればVIPさんみたいなもんだから。」



受付の奥から白衣の男がやって来る。

後ろで結った少しウェーブがかった髪の毛にメガネの中の細い目…、間違いない。



「君は志賀直哉君だろ?大きくなったねぇ…。だけど……その目はかわらないみたいだ。」



「…お久しぶりです、緒方先生。」



彼はにっこり笑みを浮かべる、やっぱり緒方先生だ。

緒方洪庵先生、自称「力」の研究家…とは言っても俺の知る限り事例は俺だけのはずだが…。

ナースさんと友妃が二人の顔を交互に見て不思議そうな顔をしている。

まぁ無理もないか。



「えぇっと…、こちらは緒方洪庵先生。俺が子供の頃相談に乗ってもらったんだ。」



「どうも初めまして、緒方洪庵です。いやぁ…かわいい彼女だね直哉君。」



「「なっ!?」」



俺と友妃の言葉が重なる…が。



「別にそーゆんじゃ…。」

「かわいいだなんてそんな…。」



……考えまでは重ならなかったようだ。



「ともかくこっちにおいで、診療の方は変わりに伊東君にやらせといて。」



「せ、先生!?」



ナースさんが慌てふためいているが緒方先生は気にせず受付横から出ていき俺たちを手招いている。



「こっちに私の部屋がある。あれについての話だろ?私の部屋で話そう。友妃くんは…、歩美ちゃーん。この子応接室でおもてなししてあげて。」



「え!?私も行きます!」



「ごめんねー、でもたぶん直哉君も君に聞いて欲しくないんだよ。」



先生よくやった。

正直どうしようかと悩んでいたところに助け船、いやイージス艦がやってきた。先生に言われたら友妃も退かざるおえないだろう。



「悪いな友妃。」



彼女は悲しげな、心配そうな顔をしながら歩美さんと思われるナースの人についていった。

これで厄介払いはできた。だが何だろう、この胸に引っ掛かる気持ちは。

頭の中に友妃の顔が何度も浮かび上がった。





「それで…、いつの間に愛知に来ていたんだい?旅行中かね?」



「あ、いえ。私一人だけ越してきました。」



先生の部屋はなんだかよくわからない機材やらレポート用紙やらが散乱していてとても女の子を呼べるような部屋ではなかった。



「これじゃあ…呼べないでしょ?」



「えぇ確かに…。」



近くにあったレポートを拾う。

患者12,「欲が識別できる目」……って、



「せ、先生!これって!!」



「うん。君に会ってから色々探ったんだ、今はインターネットって便利なものがあるからね〜。」



先生は俺の寿命の話を聞いて以来目について何か能力のある人間を探り続けているらしい。

それでその人たちを(病院の経費で負担し)集め研究をしていたそうだ。



「それで君はどうしたんだい?」



「あの…、俺の力についてなんですが…。」



「確か…寿命が色で判別できるんだよね?」



「はいそう思っていたんですが…。」



俺は昨日起きたことをありのままにすべて話す。

寿命が延びるなんて現実的にはありえないようなものだ…と。



「なるほど…、君は彼女の手料理を食べていたと。」



「どこだけ抜き出してるんですかっ!!」



「ごめんごめん冗談だよ…。うーんそうだねぇ…、ちょっとついてきて。」



そう言って部屋から出ていく、どこへ行こうというのか。

別の病棟に渡り廊下を渡って移り、ある病室に入る。そこには老人が一人いた。



「あぁ…洪庵先生じゃあないですか…。どうされましたか…?」



「いえ、少し様子をばと…。直哉君、彼は何色に見える?」



「え?あ、はい!」



老人を視線の中央になるように見る。

そして知りたいと思う。

瞬間背景はセピアカラーになり老人のシルエットが浮かび上がる。



「何色に見えた?」



「…赤です、それも黒よりの。」



「なるほど…、すみませんお邪魔しました。」



「そうかい…、ありがとのぉ…。」



緒方先生と俺は一礼して部屋の扉を閉める。

先生は俺に何をさせたいんだろうか…?

本意はわからないまままたついてこいと言うので後ろをついていく。

階段を登り一階上に行き、また別の病室に行き扉を開く。



「あぁ!洪庵先生!ご無沙汰してます!!」



「あ、安藤さん落ち着いてください…。」



今度は元気な老人が出てきた。

さっきの人はなんだか元気がなかったがこっちはありあまっている。



「また確認してもらえるかな?」



俺は頷くとさっきと同じ手順で「力」を使う。

また背景がセピアカラーになり老人がシルエットとして浮かび上がる。



「黄色です。」



「……うーん。」



先生はなんだか腑に落ちないような顔をしている。

この歳ならよくある黄色だが…。



「じゃあ次が最後、安藤さんお大事に。」



「はいはい!!また顔を見せてくださいね!!」



そういってまた一礼して病室を出ていく。

先生は次で最後と言っていたが、最後はどこに行くのだろう。

今度は足早に廊下を歩く。歩いているとなんだか医者やナースが増えてきた気がする。

そしていかにも厳重そうな扉の前に立ち、その中に入る。


そこにはなんだか色んな機材に接続された女性の姿があった。

しかし目はとじていて体も動いていない。



「直哉君、最後だ彼女は何色に見える?」



ごくり、と生唾を飲み込み知りたいと思う。

背景がセピアカラーになりベッドに寝ている女性がシルエットとして浮かび上がる。



「せ、先生っ!?」



「どうした直哉君、まさか『黒色』に見えたのかい?」



「は、はいっ!!」



黒、それは死を意味する。俺の「力」で見たのは二人目だ。

祖父と、この女性だけ。だけれどおかしい、機材はちゃんと動いている…。延命治療とやらをやっているのだろうか…。



「直哉君、戻ろう。なんとなくわかった。」



「え…。あ、はい!」



そして俺達は一度先生の部屋に戻った。






「だぁあああああああああ!!!!!!!!つまんねぇつまんねぇつまんねぇつまんねぇつまんねぇつまんねぇつまんねぇつまんねぇぇぇぇえええ!!!!!!」



応接室に叫び声がこだまする。友妃は歩美さんに連れられ応接室に入った。

だが応接室にはフカフカのソファーと観葉植物以外何もなくただただ暇なのである。



「ちょっと友妃さん?女の子がつまんねぇとか言うんじゃありませんよ?」



「な…。す、すいません…。」



歩美さんに怒られ言葉を失う友妃。

沈黙が続く、すると耐えかねた歩美さんが話を切り出してきた。



「ねぇ友妃さん、あの直哉君ってこの子と好きなの?」



「あ、あいつは…、私が婆さんになっても一緒にいてくれるって言った…。」



「ヒュー、彼ってなかなかキザな台詞吐くのね。そんな風には見えなかったわ。」



「でもアイツ…真弓の事ばかり考えている。」



「その…真弓って子はどんな子なの?」



友妃は真弓について歩美に話した。

すると歩美は腹の居所が悪いような、バツの悪い顔をしている。



「つまり直哉君は浮気性なのね…?許せないわね…。」



「だ、だろ?」



友妃は歩美の後ろからでる何らかの負のオーラが見え少し引きぎみになっている。



「だけど…、貴女も悪いわね…。」



「っ!?な、なんだよ!?」



「まずその男勝りなしゃべり方!!あなたそれで男の子が好きになると思うの!?」



「え!?だ、ダメなのか!?」



「当たり前でしょ!男の子はかわいい女性が好きなのよ。少なくとも直哉君が真弓って子に浮気しようとしているなら、それは確実に貴女に無いものを求めているのよ!!」



「そ、そうか!!じ、じゃあどうすればいいんだ!?」



「そうねー、まずは…あれをこうして…」



志賀直哉の知らないところで女性達による作戦会議は続くのであった。





「ひっ!!」



なんだか寒気がした。まるで俺の事を誰かが悪く言っているような…、更に言えば身の危険を覚えた。



「直哉君聞いてる?」



「は、はいすみません。」



「だからね、僕の調べたなかにアマチュアボクサーがいたんだ。そして彼は勝利する度にマネージャーに『俺は相手の弱点が見える』って。」



「弱点が…見える?」



「僕が君を診察してからわかった新しい情報が数個あるが、その内のひとつとして『全体的にシルエットとして浮かび上がる』タイプの「力」と『対象もセピアカラーになり一部だけ色が浮かび上がる』タイプの「力」があるという事がある。」



「つまり…ボクサーには弱点のみが浮かび上がって見えた…と?」



「そういう事になる。彼の「力」に対して興味を持った私は彼と対戦したあとの選手に質問をしたんだ、彼は君の弱点を積極的に攻めてきたかって。すると答えはNOだった。」



「ってことは…、彼の「力」は弱点を見るものではない…と?」



「うん、彼の「力」は『対象のもっとも負傷している部分を判別』というものだった。負傷具合により色も変わる。確かにもっとも負傷しているところに攻撃されるのはキツいかもしれないね。」



「やっぱり、本人が思っている「力」と実際の力は別のものの場合もあるんですね?」



「そういう事。では本題に入ろう、君の「力」についてだが…。」



俺の力、『人の寿命を判別する力』。

だが実際の「力」はそうでは無いのかもしれない。

俺は確信じゃなくていいから少しでも情報がほしかった。



「君には今日三人の患者を見せた。老人二人と意識不明の女性、覚えているよね?」



「はい。」



「最初から順に『赤』『黄』そして『黒』…そう見えたはずだったね?」



「はい、間違いありません。」



先生は腕を組み数回頷いてから俺に目を合わせ口を開いた。


「実は赤の老人は余命10年、黄の老人は余命半年、意識不明の女性は延命治療を続ければ、言い方は悪いが、まだしばらくは生き長らえることができる。君の「力」に準じた結果ではないんだよ。」



やっぱり、俺に見えているのは寿命じゃなかった。

じ、じゃあ。



「じゃあ俺の力はなんなんですか!?」



「まずこの娘を見て。」



隣に一人のナースが来る。なんだかぶつぶつ呟いている。



「私の何が悪いのよ…どうして彼氏ができないのよ…なんでおじさんばかりにモテるのよ…。」



……う、うわぁ…酷く心が傷んでいる。

言われた通り「力」を使って見る。

……赤。



「赤に…見えます。」



「そうかいそうかい、なら。」



先生はイスから立ち上がり彼女の腰に手を回し目を合わせた。

うわぁ!?何やってんだこの人!!確かにイケメンだし身長高いから似合うけども。



「ねぇ…、僕が彼氏じゃダメ?」



「え…?で、ですがそんな、私は可愛くないですし釣り合わないです…!!」



「僕が君を好きって理由だけじゃ足りない…?」



うわぁ…さっきから昼ドラを見ている気分だ…。

きっと後々もう一人ヒロインかイケメンが登場するなぁ…。

てかナースさん目がトロンとしてるし。



「…直哉君、力を使って彼女を見続けていて。」



小声で俺に伝えてくる。そして言われた通り力を使い持続させる。

すると先生はナースの顎に手を添えてそっと唇にキスをした。

な、な、な、何しとんじゃこの人はぁあああああああああ!!!!

人の、それも一応患者がいる前でキスをって…っ!!



「な、なんだこれ…っ!?」



見えていたナースのシルエットが赤からオレンジ、黄色、緑、ついに青までいった。


先生はナースにまたあとでと会釈し帰らせると唐突に質問をしてきた。



「直哉君、彼女はどうみえた?」



「色が…若い世代に多い青まで回復しました…。」



先生はやはりか、と呟くと机の上のパソコンを素早くうち俺に解答をくれた。



「直哉君、君の力…確証は無いけどたぶんこれだ。」



先生は大きく息を吸いそして言った。



「生きる気力を色で見分ける力だ。」



「生きる気力を…?」



つまり、その人間がどれだけ生きたいかを大体知ることができる「力」ってことか…。



「自分で死にたい思ってる人は赤く見える…いや、たぶん死を受け入れてる人たちもかな。それが段々薄くなる。そして思考停止が黒。」



「つまり、寿命が近づくにつれ死期を悟るから…。」



「寿命と勘違いしたんだと思うよ。」



ってことは…真弓は…。



(死のうとしているのか…死期を悟ったのか…。)



結局問題の解決には至らなかった。

そろそろ帰りますと俺が切り出すと応接室に向かいそこで友妃を回収し帰路についた。



「青、黄、青、緑、緑、緑、緑、青、オレンジ、青…」



「ど、どうしたの直哉?」



「緑…あぁ、すまん…ちょっとな。」



病院からの帰り道、「力」を使い情報を集めていた。

「どんな年齢層」で「どんな性格」の人間が「どんな色」なのかをだいたい集計しようと思っていた。

目も疲れてきたから一度休憩しよう。

目を閉じ目頭を指でつまむ。



「疲れているのか?だとしたら…私にできることは…えーっと…。」



「悪いが友妃、何かしてくれるなら晩飯を作ってくれないか?あんなうまいもん食ったあとじゃもう卵かけご飯しか食わない生活を続けては行けないからな…。」



「な…、そんな不健康な生活を送ってたの?」



不健康とはなんだ…卵にはビタミン以外の栄養素が含まれているとても優秀な食材だぞ。



「まぁいいや、そ、その…直哉が望むなら毎日作ってあげてもいい…わよ?」



なんだかしゃべり方がぎこちない上にひきつっている。まぁありがたいが、毎日となるときっと迷惑かけちまうからな…。



「あ、迷惑だと思ってるなら気にしなくていいよ。どうせ私も一人暮らしだしさ、一人より誰かとご飯を食べていた方が楽しいから。」



そう言った彼女の顔から、俺は目を離せなくなっていた。

いかんいかん!!最近友妃を見るとなんだか顔が熱くなる。

そして俺と友妃はスーパーで晩飯の材料を買い家に帰るのだった。



「あら、また二人で仲良く帰宅?仲がいいわね羨ましいわ。」



「「あは、あはははは…。」」



マンションの入り口ではいつもと変わらず美羽さんが掃除をしていた。





俺は自分の部屋に戻る。友妃は一度自分の部屋に戻るそうだ。

今のうちに今日起きた内容をまとめておこう…。


俺の力は寿命を知るものではない。

生きる気力を知るものであった。

つまり真弓は死にたいと思っているか、死を悟っている…。まぁつまりなんの解決にもならなかったが、もしかすると救えるかもしれない希望は見えた。


そして俺以外にも「力」を持ったものがいるということ。

とは言っても、力の種類は様々で今のままではなんとも言えない状態らしい…。

ともかく、今は明日真弓に会ってからのことを考えよう。



しばらく考えに耽っているとドアホンがなり友妃が部屋に入ってくる。

どうやら自分の部屋で下準備をしたらしくご飯はすぐに出てきた。

やはりおいしい。母の手料理をあまり食べていないのも原因のひとつかもしれないが、そもそも外食ばかりしていた俺にとってこのなんというのか…、やさしい手作りの味わいはやすらぎをくれた。



「なぁ友妃、本当に毎日作ってもらってもいいのか?」



「あ?…じゃなかった…。え?うんいいよ、あ、あ、ああああああ、あなたが望むなら…。」



なんだか妙に顔面が赤い気がする。それに今日の友妃はエプロンをつけており、そんな姿の女の子に「あなた」などと呼ばれると、恥ずかしくなってしまう。



「そ、それなら頼んじゃってもいいか?」



「う、うん!任せろ!!」



最後にはまた男勝りな友妃がいた。だが俺はこっちの方が気が楽だ。





月曜日の朝小鳥のさえずりが、チュンチュンという音が耳に入る。

いつも通りの朝……。

………。



(ジャナーイ!!)



なんだか二の腕辺りにあたたかく、そして柔らかいものを感じる。

ま、まさか…。いや、待てよく思い出せ。俺は昨日飯を食ってベットに座って…。



(記憶がねぇ…っ!?)



シーツを思いっきり上にあげる、そこには友妃が俺の腕に抱きつく状態で眠っていた。



「ゆ、友妃!?おま、おま、何して…。」



「ふぇ…?あぁ…私の部屋にぃ、直哉がいるぅ…ふぅ…。すー…すー。」



「起きろ!というかお前の部屋に朝俺がいたら大問題だろ!!」



コイツ…朝にめっぽう弱いんだな?だから学校も毎日毎日遅刻してるんだ。

しかしこう見ると…やっぱり綺麗な顔立ちをしている。

って、なに考えてんだ俺は!?



「友妃、学校に遅刻しちまうぞ!!」



そう言って彼女を引き剥がそうとするが彼女は力一杯腕にしがみつく。お…折れちゃう…っ!



「行かないで…。すー…すー…。」



「こ、こら起きろよ…。」



「やーだ、寝るのぉ…。すー…すー…。」



うわぁ…どうしたらいいんだろうか。顔を洗う要領で水を貯めた洗面台に顔を突っ込めば起きるだろうか?よし、善は急げだ。

友妃を腕に吊るしたまま引きずり洗面台へ、そこで水を貯めて友妃をお姫さま抱っこの状態にしその顔を俺の肩から突っ込む。



「ぶ!?ぶくぶくぶるるる…ブファ!!な、直哉!?一体なにして!?え!?」



ようやく覚醒した友妃は自分が今俺の腕に抱きつきながらお姫さま抱っこされているのを理解し顔面を真っ赤にしてうつ向いてしまった。

俺はとりあえず近くにあったタオルを友妃の頭の上から被せて自分の用意をすることにした。



20分ほどで準備は完了した、着替えはトイレで済ました。あとは…。



「友妃いつまでそうしてるんだ?学校に間に合わないぞ?」



「ほっといて!!」



いやほっといてってここ俺の部屋なんですが…。仕方ないな…。

確かリビングの電話下の引き出しにあったあった。これをアイツに渡しておこう。



「ほら、これこの部屋のスペアキー。出るときはちゃんと閉めとけよ。」



「す、スペアキー!?」



なんだか友妃はあたふたしていたようだが、このままでは遅刻してしまう。

俺は友妃を言われた通りほっといて学校に向かった。




「おはよ〜なおやん。」



「おはよう実篤…、なんだなおやんって?」



直哉だからなおやんか?あだ名をつけてくれるのはスゴくありがたいがなんだかピンとこない名前だな…。



「そんなことはどうでもいいんだなおやんっ!!」



「うわぁビックリした!なんだよ…。」



いきなりスゴい剣幕で迫ってくるからビビってしまったじゃないか。



「土曜日…中村さんと謎の美少女とデートしてたらしいな…ほんとかっ!!」



うわぁ!!しゃべる度に近づくな気持ち悪い。



「デートじゃなくてここら辺を案内してもらっただけだよ…。」



なるほどなるほどと頷き実篤は中村さんが無事ならそれでいいと謎の発言をしている。



「だが問題はもう1つ!!」



「だからしゃべる度に近づくな!!」



「この謎の美少女とお前は中村さんと別れたあと、二人でお買い物をしてお前の家に行き翌日二人で病院に向かったらしいな…これはつまり!!そういう事をしたんだろっ!!」



「んなわけあるかっっっ!!!!!!」



というか謎の美少女ってなんだ…?友妃の事を言ってるんだよな。あ…、マスクをしている時の彼女しかしらないから実篤は友妃だと気づいてないのか。

言わないでおこう、話がややこしくなりそうだ。

この後20分くらい実篤から質問攻めをされ自分の席に長い間座ることができなかった。


しばらくして真弓が入ってきた。まわりに元気よく挨拶をしている。

よし今だ、俺は彼女を知りたい、そう願う。

すると背景はセピアになり彼女のシルエットだけが浮かび上がる。



「おはよう志賀くん、どうしたの?そんな怖い顔して。」



いや、だって、ついこの間までは黄色だったじゃないか?

一体彼女に何があったんだ…?






真弓は真っ赤なシルエットになっていた。


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