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自作小説倶楽部 第4冊/2012年上半期(第19-24集)  作者: 自作小説倶楽部
第22集(2012年4月/「嘘」&「愛」
40/62

6 吾木 ご気分 著  嘘 『マジカルふりかけ』

 ターロット陰陽師の吾膿郷太ごうみ・ごうたの持つ、マジカルふりかけには不思議な力があった。

そのふりかけを熱々のご飯にかけて食べると、食べた人間が分裂してしまう。

その分裂は普通の人間には見えないが、郷太には見えるのだ。

分裂といってもひとりの人間がばらばらになるのでなく、分身が現れると言ったほうがいいかもしれない。

その現れた元人間の影は、元人間の右に現れれば陽の影、左に現れれば陰の影と郷太ごうたは見分ける。

元人間の性格はその影の現われ方によって違っていて、両方の影が同時に出ることは無く、どちらの影が多くでるかで肉食的か草食的かを判断し、どちらの影がどのよう場面でどのように出るかで、自己中心的な度合いを推測するのだ。


 今日の占いの一番のお客様は自称女性社長で、この不況で自分のお店の経営が難しくなり、この後どうすればいいのか占って欲しいみたい。

「おはようございます。郷太先生の占いは良く当たると聞いてご相談に伺いました」

そう言って、占い部屋を訪れて来たのはセレブマトゥア、金持ちそうな熟女だ。

「おはようございます。お美しい奥様でいらっしゃいますね。まあ、遠慮しないでお掛け下さい」

「まぁ、奥様なんて。わたくしはまだ独身ですのよ」

熟女はそう釘を刺し、椅子に座った。

「失礼しました。こんなお美しい女性がまだ独身なんて。世の男性は見る目がないのか、お目が高くて振られたのか」

「まぁ、先生ったら、お上手でいらしゃるわね」

女性は何歳になってもお世辞が好きなのか、熟女は少し機嫌よくなっていた。

「失礼ですがお名前をお聞きしていいですか?予約の時に一応お聞きしてますが、確認のためにお願いします」

この業界も競争が激しく、同業者が偵察のために偽名を使って占いを受けに来ることがあった。

「はい、本名は太井幹子たい・みきこで源氏名は和子かずこです。業界では和子ママって呼ばれています。高校を卒業してすぐにこの商売に入り、二十歳の時には自分の店を持ちました」

「強運の持ち主でいらっしゃるのですね。では、和子ママさん、もう朝食を済まされましたか?」

突然の意表をついた質問に、和子ママは当惑していた。

「いいえ。予約の時に朝食は抜くように言われました。なんでも朝食付きの占いをして頂けると聞いてます」

「はい。私の占いの前には食事をして頂くことになってます」

「えぇ、占いをする前に食事をするのですか?なんかおかしくないですか。占いが終わってから先生とゆっくりお話をしながら食事するのだと思ってました」

「はい、ちょと変わった占いなんです」

「食事の方法で占うなんて初めて聞きました」

「いや、そうじゃなくて。占いの前に食べて頂きたいものがあるのです。企業秘密で言えませんが」

 

 


 和子ママに出された朝食は、熱々ご飯にマジカルふりかけと味噌汁、そしてだし巻きたまごだった。

「まぁ、美味しそう。この中のどれが秘密の食べ物なのかしら」

和子ママはそう言って、美味しそうにすべてを平らげた。

しばらくして、ママの右横に影が現れたのを郷太は確認した。

陽の影だ。

おいしい朝食を食べてママは満足しているらしい。

「では、占いを始めます。お茶を飲みながらで結構ですので、私の質問に正直に答えて下さい」

「質問されるのですか?なんか取り調べみたいですね」

「あなたの性格を分析する簡単な質問ですよ。はい、いいえで結構ですので直感で答えて下さい」

「はい。わかりました」

影が右から左へ移り陰の影となった。

和子ママは完全に防御の体制にいっているのが郷太には分った。


「では、第一問です。あなたは自分が好きですか?」

「うぅ~。はい」

影が右に移り、すぐに左に戻った。

これは自分に対して嘘をついていた時の影の動きだ。

郷太はママが自分を飾って、本当の自分を隠してると読んだ。

「第二問です。あなたは今の自分の姿を本当の自分だと思いますか?」

「いいえ」

影は右に移り、そのまま右に留まっていた。

ママが本心でそう考えていると郷太は思った。


「はい、結構です」

「えぇぇ、もう終わりなのですか?」

「はい、質問はこれで終わりです。占いにはいりましょう」

「なんかもう少し質問して欲しいように思うのですが」

和子ママが不安そうにそう言ったが、影は右にあったままだった。

「じゃ、もうひとつだけ聞きます。本当は何の仕事がしたかったのですか?」

影が右に左とうろうろし始めた。

郷太は和子ママが動揺しているのを知っていた。

 


「本当は子供の世話をする保育園の先生です」


和子ママの影は右に留まっていた。


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