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自作小説倶楽部 第4冊/2012年上半期(第19-24集)  作者: 自作小説倶楽部
第19集(2012年1月)/「干支」&「男」
4/62

4  シェル 著  男 『王子の国』

   あるところに  「 王子の国 」 とよばれる 小さな国がありました。   


   

その国に生まれた男の子は 

 

得意な事、 頑張っている事を 

 

周りの大人が 「 この子は素晴らしい! 」と評価すると 

  

国の役人から 「 王子の称号 」が貰えるのでした。  

  

 

文学が得意な 文学王子、

  

運動が得意で 汗を拭く仕草が素敵な タオル王子、

  

食べ物に詳しい スプーン王子、

  

絵が上手な キャンバス王子。。。。   

 

  

いろんな王子がいました。

  

王子になったからといって 特別な待遇は何もありませんでした。 

  

でも どの親も  「 うちの子も 早く王子になってほしい 」と 願うのでした。

  

 

 ◇

    

カイはいつも  母さんのお手伝いをしていました。

 

小さな弟や妹がいるから、 洗濯物も毎日 山のように出るのです。

 

 

 「 カイ。 すまないねぇ。  立派な学校に 行かせてやれなくて。。。

 

 これじゃあ王子の称号は貰えないねぇ。。。」

    

母さんはそう言いながら 少し残念そうな顔をしました。  

 

   

父さんも母さんも 一生懸命働いていたので、  カイは学校が終わると すぐに家に戻り  幼い弟や妹たちの面倒を みなければなりませんでした。

  

  

でもカイは幸せでした。

   家族が大好きでしたし   それに 洗濯物を取り込んだ後、

  

楽しい事が待っているんですから。

 

 

 ◇

 

 

それは 洗濯物を干す時に使った洗濯ばさみを  パチパチと組み合わせて

 

弟妹がねだる 動物や 船や ロボットを

 

本物のように 見事に作りあげることでした。   

    

弟妹はもちろん  

 

カイ自身も いろんなものを作る事が

 

とても楽しくて仕方ありませんでした。

 

  

 でも次の日の洗濯のために  作った動物や 船や ロボットは

 

壊さなければなりませんでした。

 

    

だからこの事は 弟妹たちしか 知らなかったのです。

  

 

  

 

 

長い長い年月が経ち カイたち兄弟は 老人になりました。  

 

    

弟のソラルは 遠い国で映画監督になり

  

妹のモモは裁縫学校のパッチワークの先生を今年退職しました。

 

カイは持病が治らず入院していました。

      

 

 

ある日、 病室のカイと カイを看病しているモモの元に

  

素晴らしい知らせが届きました。

 

   

弟のソラルが 世界映画祭の 最優秀監督賞を受賞したのです!

   


  授賞式の様子が衛星中継で見られるというので

 

カイの病室には 大勢の仲間が集ってきました。

 

そしてソラルのスピーチが始まりました。

   

 

 

  

「 私が幼い時に   兄が作ってくれた洗濯ばさみの動物や船やロボットが

  

 今の監督としての 私の原点なのです。

    

 私は 王子の国の出身ですが   私も兄も 王子にはなれませんでした。

 

     

 でも兄さんに伝えたい。      あなたは私のヒーローでした。

   

 洗濯ばさみ王子の称号を    このトロフィーと共に 私から贈ります 」

    

  

  

カイはベッドの上で泣いていました。

  

僕に謝っていた母さんが聞いたら  どんなに喜ぶだろうと思いました。

  

 

  

おじいさんになって 弟から貰った王子の称号は

  

どんな偉い役人に貰うよりも誇らしく   温かな気持ちになりました。

 

                 ~ おしまい ~


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