5 パールくん 著 嘘 『時計屋』
あるところに、嘘を絶対についてはいけない国がありました。
人は、正直に生きるべきだと、愛に満ちた王様が決めたのです。
でも、人びとはささいな嘘もつかないでいることに、疲れてしまいました。
そこで王様は、1年で1日だけ嘘をついてもいい日を作りました。
その日だけは、どんな嘘をついてもいいのです。
人びとは喜び、お祭りになりました。
恋人に内緒でプレゼントをして驚かせる人。
親に、暮らしは成功していると言って、いつもより多く仕送りする人。
病気で死にそうな人に、きっと治りますよと励ます人。
国じゅうが、優しい嘘でいっぱいになりました。
ところが、ひとりの男がほかの人とは違う嘘をついていました。
町の時計屋です。
時計屋は、町中の時計の時間を狂わせていきました。
なんと、驚くことに、お城の時計までもです!
そして、人びとが怖がるような嘘を大きな声で言って歩きました。
今度の週末に、爆弾が降ってくるんだって。
いや、もう国の一番はじっこの島に落ちたんだってよ?
怖い病気が流行っているんだって。
うつったら、かならず死んでしまうらしいよ?
時計屋はおもしろがって、どんどん悪い嘘をつきました。
この国の王子様は、本当は王様の子じゃないんだよ。
お妃様と家来の間に生まれた子供なんだよ。
もうすぐ、世界恐慌がおきるんだ。
お金が紙くず同然になっちゃうよ。
王様は、これを聞くとかんかんに怒りましたが、自分で作った決まりごとなので、我慢しました。
そして、1日が終わりに近づきました。
時計屋は、最後にもうひとつ、大きな嘘がつきたいと思いました。
時間ギリギリまで、知恵をしぼって考えました。
そのとき、時計屋のおかみさんが言いました。
「アンタ、教会の時計の修理は終わったのかい?」
「ああ、そんなの、とっくに終わってるさ」
すると、突然兵隊がやってきて、時計屋は捕らえられてしまいました。
「今日は、嘘をついてもいい日じゃないか!何故捕まえるんだ。放せ!」
「もう、日が変わったんだ」
「嘘だ!俺の時計はまだだ!時計屋の時計が!」
「アンタ、どうしよう…いたずらで、アンタの時計を5分遅らせてしまったよ…」
時計屋は、嘘をついても良い日を過ぎてから嘘をついたので、お城で処刑されてしまいました。
それから、馬鹿な嘘をついた時計屋にちなんで、年に一度のこの日を四月馬鹿と呼ぶようになりました。
おしまい♪
(嘘話を書いてしまった…僕も処刑か…)




