2 BENクー 著 愛 『代えがたい存在』
「もしもし、おっ、タケシね!元気しよんね!…うんうん、よかよか!ハッハッハ!」
祖父の電話はいつも変わらない。逆に僕の方が、この言葉を聞くたびに祖父が元気でいるのを確認する。
「また野菜ば送ったけんね!…あさって辺り着くけん!」
祖父は春秋期に獲れた野菜を必ずウチに送ってくる。この時期はジャガイモ・ニンジン・タマネギというカレー材料のオンパレードだ。
「おばあちゃんと代わるけんね!」
代わって祖母が電話に出る。これもいつものこと。僕の頭には、ちょっとそわそわしながらイスに座り、受話器が渡されるのを待っている祖母の姿が浮かぶ。
「もしもーし、タケシ!みんな元気しよん?…うんうん、何もなかならよかよか!ホッホッホ!」
祖母の言葉も変わらない。笑い声で祖母も元気でいるのが分かる。変わらない電話の変わらないやりとり。
小さい頃からずっと続けられているこのやりとりの中に、僕は何物にも代えがたい“祖父母の愛”を感じる。震災後、特にそう思うようになった。僕はまだ、特定の異姓をひたすら思い続ける“純愛”を知らない。もちろん、妻や夫がいながら別の異姓と関係を持つ“不倫”の良し悪しすら分からない。だが、祖父母の姿を浮かべるたびにこれ以上の“純愛”はないと思ってしまう。何しろ二人は共に欠かせない存在なのだから。また僕は、父母たちも同じだったと思っている。父が亡くなってからの母があきらかに男らしくなったのも父の代わりを果たそうとした現れで、それこそ父という存在が如何に母にとって欠かせないものだったかを物語るからだ。『果たして、僕はそんな欠かせない存在と巡り合えるだろうか。それより僕を欠かせないと思ってくれる存在が現れるだろうか。』“純愛”とは自然に自分を強くする代えがたい存在との出会いなのだろうと思いつつ、僕は祖父からの電話を切った。
☆☆おしまい☆☆
自由テーマ:愛『純愛』




