3 シェル 著 猫 『月夜の集会』
「 あれ? 山田さんちのルーちゃん 来てないの? 」
「 あそこのムスメの友達が泊まりに来たみたいだよ。
猫好きだからって離してもらえないみたい 」
「 最悪だね。 相手するのも大変だ 」
「 ま、 それもしょうがないさ。
山田さんちの猫まんま、缶に入っててさ かなり美味いらしいよ 」
「 そういやあ君んちのオトウサン、 浮気がばれたんだって? 」
「 そうなんだよ、マジで修羅場。オカアサン 人相変わってたもん。
せっかくの美人が台無し。 あれじゃ余計 男は引くって。
オトウサンなんか、 話し相手はお前だけ とか言って
僕に 沢山ごはんくれるんだ 」
「 ケラケラ! それ以上太っちゃ駄目よ 」
「 あんたのとこのゴシュジン、最近帰ってないじゃん。 何してんの? 」
「 なんかね、研究してるみたいよ。 宇宙の研究してるんだって 」
「 宇宙? 」
「 ビッグバン、ブラックホール、 宇宙のなりたちとか 」
「 えー! マジで? 」
「 知らないみたいよ、 人間たち 」
「 賢そうに見えるけどなぁ 」
「 あ、でも分かる。
人間ってさ 月とか結構近いみたいに思ってるふしがあるじゃん 」
「 北極星も 割と近くに感じてるんじゃない? スピカなんかもさ 」
「 宇宙の記憶がないんだ 人間って・・・。 知らなかった 」
「 猫も犬も 人間と話せないから教えてあげられないしね。
ま、知っていても知らないふりしておく方が利口だよ 」
「 人間も何か失くしたら そのうち思い出すんじゃない? 」
「 そうなったら教えてあげてもいいね 」
「 おまえの最も大切なものは? それを奪う喜びをくれないか 」
「 それって ゲームかなんかのセリフでしょ?」
「 あ、バレた? テヘヘ。 うちの中学生が好きでねぇ 」
「 知らないふり か・・・ なるほどね。
さてと、 明日も かわいい声でも上げて 思う存分 撫でらせてあげるとするか 」
「 気まぐれだからねぇ ゴシュジン様たちは 」
「 エコとか言ってるのに ポイッて捨てるからなぁ 」
「 エコだの 地球を守るだの。
人間がいなくなれば 地球はすぐ元気になるっつーの。
エコじゃなくてエゴだね、 ありゃ 」
「 まず人間ありき だからね 」
「 ほらほら、 愚痴をこぼさないの。だんだん人間に似てきちゃって 」
「 ごめんごめん。 おこられちゃった 」
「 おーいみんな、 こっちにおいで。 宇宙がきれいに見えるよ 」
「 ああ ホントだ。今夜も星たちが 見事に遠いなぁ・・・ 」
~おしまい~




