1 七川冷 著 干支 『龍の仕事』
辰は自分の年が来ない限りは暇をもてあます日々を過ごしていました。
大昔のように自分を崇めてくれる人を守護龍として危険から守ったり
正義に燃える者に悪者を懲らしめる力を授けてあげたりして忙しい日々を過ごさなくても良くなってしまったからです。
まぁ、ヨーロッパに棲んでいる親戚のドラゴンは主に絵本の世界で悪役(主に剣などで切り倒されてたりますが…)として賢明に働いているのにもかかわらずに…
だからといって、干支仲間(特に卯や戌)のように
辰は人間相手に愛想良くしてかわいがられると言う事はプライドが高いので決してしませんでした。
眠くなるような説明をしている間に、
辰はあるおじいさんがフラフラしながらも自分が棲むやしろに近づいている姿を見かけました。
そのおじいさんは、くぼんだ目には泣いた跡と深いクマがあり、満足な食事が摂れていないのかほっぺたと体がやせているのでいつ倒れてもおかしくないような状態でした。
なので、辰は思わず「おいしい物をたくさん食べたい」とお願いしに来たと思いこんでしまいましたが、どうやらおじいさんのお願いは違うようです。
「我が村をあなたが持つ偉大な力でどうかお救い下さい!数週間前に即位した皇帝が行われている増税で儂のように貧しい人達は苦しんでいます。村仲間で数週間前から1つの金貨やお札を幻覚で見てしまう人がいるぐらい酷いのです。」
涙を流しながら真剣にお願いを言うおじいさんを
辰は人間に化けた姿でなだめ、おじいさんと共に魔法で出した村仲間の分の食料を分け与えました。
それから、おじいさん達を満腹にさせて寝かしたらこっそりと皇帝がいるお城へ向かいました。
どうやって、辰は解決させるつもりなのでしょうか?
その頃、皇帝はと言うと…お城で数人の大臣達となにやら話しをしていました。
どうやら、お城の近くの街が貧しい状態に陥っているようです。
あれ?村の人々が貧しくなってしまうほど大量な税金を取っているので貧しくないはずでは…?
「この間の戦争で負けた時に払った金が原因で、問題は金の稼ぎ方だろう?なら、お前らは大臣だから何とかしろよ!」
皇帝が、大臣達に怒鳴っている時に目の前の扉から辰が占い師の姿で入ってきました。
「誰だ!お前は!?」
頑固な大臣に辰は「名乗る者ではないが、龍永という占い師だ」と名乗りました。
「ちゃんと名乗っていますよ?えっと、龍永さん?」
頑固な大臣と辰と気弱な大臣のやりとりに皇帝は溜め息をつきましたが、辰にお城に来た目的を尋ねました。
「旅をしていたら、一人のおじいさんから貧しい人にとって増税で生活するには苦しい状態になっていると聞いておじいさんが暮らす村とこの国を救いに来ました。」
「どうやってだ?」
もっともな質問に辰は皇帝の腕を引っ張って村まで連れてくると
付いてきた大臣と皇帝は驚きました。
村の大地から石油が出てきているからです。
「どんな魔法を使ったか知らないが、大したものだ。」
「ただ、北にあるやしろに棲む龍のお告げを従ったまでの事ですよ。」
辰は嘘を言って石油が出る場所を知ったわけをごまかしました。
後ほど、石油で他の国に貿易したおかげで皇帝が治める国と村は豊かになり、
辰はささいなお願いを聞いてかなえてあげる仕事で暇をもてあます必要がなくなりましたとさ
(終)