表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

おもひで ぼそぼそ

それは、遠くて近い、とある国でのお話。




ずっとずっと東にあるソレイユ王国に、とても勇敢な王様と、それはそれは優しく美しい王妃様がおりました。

二人はとても仲がよく、結婚後すぐに子を授かるものと思われていました。


しかし、待てど暮らせど懐妊の兆しが見えません。

王様も王妃様も思い悩みました。


そんな折、怪しげな旅の商人が現れます。


「おやおや、これは大層お困りのご様子。ならばこれを差し上げましょう。この薬、飲めばたちどころにコウノトリが赤ん坊を運んで来るという、一子相伝、秘薬中の秘薬。ただしこの奇跡の秘薬には、一つ難がございます。生まれてくるのは女児のみ。けれど、そこは、お二人のお子。

美しく珠のようなお子でございましょう。いえいえ、お礼などにはおよびませぬ。どうぞ、よいお子を。そしてソレイユ王国の末永い繁栄を…」

そう言うと商人は薬を置いて、風のように去って行きました。

まあ、なんと不思議な、と王様も王妃様も首を傾げました。が、藁にも縋る思いの二人はその秘薬を試すことにいたしました。


それからすぐに王妃様には新たな命が宿り、十月十日とつきとおかの後、珠のように愛くるしい姫君を授かりました。


王様と王妃様は商人にお礼をしようと、近隣の国を家来達に探させました。

しかし商人の足取りは、ソレイユ王国を出てからパッタリと消えていました。




数年後、広いお城のお庭で遊ぶ幼いお姫様の姿がありました。

柔らかな、見る者全てを幸せにするような笑顔を浮かべ、無邪気に母である王妃に駆け寄ります。


「母様!」


しゃがんで腕を広げていた王妃様に抱き着くと、幸せそうに頬擦りをしました。


「あらあら。ルージュは甘えん坊さんねぇ」


王妃様は目を細めてお姫様の髪を撫でています。


「髪は女性の幸せの歴史なのよ。あなたの髪も、健やかに美しく伸びるわ」


「ふぅん…切ってはいけないの?」


「そうよ。髪の美しさと長さが幸せな人生を表すのよ。ルージュの髪は、美しく、長く伸びるわね」


「母様みたいな綺麗な髪になれるかな」


「そうね…母様より、綺麗になるわ」


膝にお姫様を抱いて、幸せを噛み締めるように王妃様は言いました。


お姫様の成長した姿を想像して、少し胸が熱くなりました。


そんな王妃様のお膝の上で、お姫様は夢の中です。


「どうぞ、優しく、しとやかで素直な女性に育ちますように…」


小さく神に祈ると、お姫様の額にキスをしました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ