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5:孤独な危ない橋

 

 きっかけは本当に些細なことだった。



 その日はアルバイトがいつもより早く終わったのだ。


 いつもならまっすぐ家に帰るけど、この日はなんとなく寄り道したくなって、普段通らない駅の方に歩いた。



 駅前はイルミネーションが眩しいくらい輝いている。


 時間は夜8時を回ったのに、辺りはカップルや学生のグループで賑わっていた。


 イルミネーションは好きだけど、人混みは大嫌い。人の多さに酔いそうだ。


 こんなことならさっさと家に帰れば良かったと後悔してた時、私は声をかけられた。


 30代のサラリーマン風の男だった。


 軽い感じの話し方からして、恐らくナンパ目的だなとピンときた。


 私は無視して帰ろうとしたが、男はしつこく話しかけてくる。


 さすがにイラついたから、私は無理難題な要求を男に突きつけた。


『5万出すなら考えてもいい』


 これなら男も諦めて帰るだろうと思った。


 でも、意外にも男はすんなりと承諾した。






 私は男に案内されて、駅から近い焼き肉屋に入った。


 席に座ると、男はメニューを広げて何かいいかと私に聞く。私は何でもいいと言うと、男は店員を呼んで適当に注文していった。


 しばらくして、注文した肉が届くと男はどんどん網の上で焼いていく。


 焼きあがると私のお皿に乗せていった。


 私が肉に手をつけないでいると、男は気にせず食べていいと促す。


 私は仕方なく、もくもくと肉を食べる。それを見て男も肉を1切れ食べる。




 結局店を出るまでの45分間で、私は注文したうち半分以上肉や野菜、デザートの杏仁豆腐を食べていた。


 さすがに申し訳ないと思ったが、男は気にする素振りもない。そして男は鞄から茶封筒と名刺を私に差し出した。


 またいつでも連絡していいよと言うと、私に背中を向けて歩き出した。




 家に帰ると、私は茶封筒の中身を確認した。中には5万円入っていた。そして茶封筒と一緒に渡した名刺の裏には男の電話番号らしき数字が書かれていた。



 この数時間の出来事に名前をつけるなら、恐らくパパ活というやつだ。


 でも、思っていた感じとは違う。お金を貰う代わりに体を売らなくてはいけないのかと思っていたが、そうではない。


 むしろ、男は私と一緒にただご飯が食べたかったのだろう。私が食べている時、男は微かに微笑んでいたのを思い出す。


 でも、それ以上に…



 1時間。1時間一緒にご飯を食べるだけで5万円。


 私はこんなに簡単に大金が手に入ったことに驚いた。


 1日数時間のアルバイトを1ヶ月しても7万程だったのに、たった数時間で簡単に5万手に入れた。


 こんないい方法使わない手はない。


 私は男の名刺を確認する。『石井誠(いしい まこと)』。歳は33歳で、大手企業のサラリーマン。どうりで金回りがいいと思った。



 私は石井と会うことで、上手く大金を手に入れる手段を思いつく。もちろんパパ活は悪いことだけど、それ以上にアルバイトするより早くお金が貯まって死ぬという目的が果たせることに喜んだ。




 こうして、私は石井という金のなる木を手に入れた。


 でもこのときはまだ、あんな感情が湧くなんて思いもしてなかった…。






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