最終話:孤独の終わり 2人の始まり
あれから2年たった。
高校卒業した後、親元を離れて在宅でできる資料やデータ入力の仕事をしながら生活している。
でも、1人暮らしではない。何故なら…
『おはよう』
『おはよう、誠さん』
朝起きて朝食を作っていると、私に挨拶する優しい声がした。私はその声に返事をした。
出来上がった朝食を私はその人と一緒に食べる。食べ終わった後少しお喋りをすると、その人は背広を着て仕事に行く準備をする。
『いってきます、美桜』
『いってらっしゃい、誠さん』
私は玄関で見送ると、『誠さん』は会社へと向かった。
言い忘れたけど、私は『旧姓 佐々木美桜』。
今は『石井美桜』。
私は石井と結婚したのだ。
2年前のあの日。石井からの手紙を見た後、私は石井の職場に連絡した。石井の同僚の人達からなんとか石井が入院している病院を知ることができ、必要最低限の荷物だけを持ってすぐに病院へ向かった。
電車やバスを乗り継いでやっと着いた田舎町にある病院。
受付で面会許可が下りると、私は石井がいる病室に入った。久しぶりに会った石井は、以前よりもだいぶやつれていた。
私が石井の側に行くと、石井は不思議そうな顔をしていた。どうして私がここに来たのかわからないようだった。
私は持っていた紙袋を石井に渡した。中には今まで石井から貰ったお金が全部入っている。
中を確認した石井は驚き、紙袋を私に返そうとしたが私はそれを止めた。そして石井が私に自分の想いを伝えたように、私も石井に自分の想いを伝えた。
『このお金は石井のであって私のじゃない。私は自力で1億円貯めるまで死なない。だから…
石井も死なないで』
たとえ石井の願いであっても、私は1億円貯まったら自殺する。これだけは絶対譲れない。だから、せめて目的が達成するまでは石井と一緒に生きていたい。これが私の想いだ。
石井は紙袋を両手で握りしめたまま、膝から崩れ落ちて泣き出した。30過ぎの大人が、子供のように泣きじゃくっている。
そんな石井の姿も私は愛おしくて、膝をついて石井を抱きしめた。
私と石井は似ていたんだ。
お金でしか家族や周りとの関係を築けなかったとこ。目的のためにお金を稼ぎ続けたとこ。いざお金を手に入れても、心は満たされなかったとこ。
だから私達は出会ったんだ。
お互い想いを伝えあって、ようやく私達は気持ちがひとつになった。
1週間後。石井は手術のため海外に渡った。そして手術は無事成功した。
手術が終わって半年後。元気になった石井が日本に帰ってきた。
空港まで迎えに行き、半年ぶりに再会。
なんと私は石井にプロポーズされた。
『君の目的が果たされるまで、僕と夫婦として生きてください』
場所は私達が初めて出会った駅前の噴水の前。石井は膝をついて四角の箱を開けて結婚指輪をみせてそう言った。私はOKした。
身内だけの結婚式だったけど、みんなが祝福してくれて私達は幸せだった。
私は在宅で得たお金を全部貯金している。でも1億円貯まるのはまだ先になるだろう。だって今あるお金は、3人目の家族のために残しておこうと思っているから…
私は大きくなった自分のお腹を優しく撫でた。
私は今趣味の範囲だけど、小説を書こうと思っている。
死ぬためにお金を貯める女の子と、死ぬためにお金を使う男の物語を……
〈完〉
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。作者の美界です。
初めての連載作品でシリアスなお話でしたが、最終的には主人公の美桜ちゃんと石井が幸せになるハッピーエンドに仕上げることができて良かったです。
次回作も読んでくださると嬉しいです。
本当にありがとうごさいました。




