プロローグ:死ぬために生きる理由
初めての連載作品です。
日記風の作品となっていますので、誰かの日記をこっそり覗き見るような、そんな非日常感をお楽しみ頂ければと思います。
『早く死にたい』
私には自殺願望がある。
幼稚園の頃、私は周りの子達と上手く馴染めず、いつも1人で本を読んだりお絵描きをして遊ぶ子供だった。
両親や先生は口を揃えて『もっと他の子達と遊びなさい』と言ってくる。でも私は誰かと遊ぶより、1人でいる方が好きだった。
小学校に上がってからも変わらなかった。クラスメイトの輪には入らず、小説を読んだり辞書の文字をひたすらノートに書いたりして休み時間を潰していた。
幸いイジメられはしなかったが、クラスでは目立たない存在だった。唯一学校で話しかけてくれる担任も、心配しているように見えるが何処か他人行儀な感じで、あまり信頼出来なかった。
そんな私に当然友達は居なく、両親は共働きでいつも家に居なかった。学校から帰ると家の中は薄暗くて、リビングのテーブルの上には『今日も遅くなります』っていう簡単なメモと千円札が数枚。
私はそのお金を持って近所のコンビニでお弁当とオレンジジュースを買って、残ったお金は全部貯金箱に入れた。
毎日行くからコンビニ店員の人に顔を覚えられて、オマケで廃棄寸前のスイーツやお菓子をよく貰っていた。
たった1人の食卓で食べるお弁当は味気ない。バラエティー番組の音も耳に入って来ない。私はこの時間が嫌いだった。食べ終わった後は本の世界に没頭することで淋しさを紛らわしていた。
それでも、夜中になると両親が帰ってくる。玄関の鍵を開ける音。静かに扉を閉める音。私を起こさないようにと気を遣った小さな足音。
私はその音を聞いて安心して眠りに就いた。
朝になると、既に両親は仕事に行っていた。テーブルの上には、ご飯とお味噌汁と目玉焼きとミニサラダ。
母はどんなに忙しくても、出かける前に必ず朝食を用意してくれる。
私はこの朝食が、家族と唯一繋がりを感じられる瞬間だった。
しかしそんな唯一の繋がりさえも、両親が離婚したことで完全に無くなってしまった。小学校卒業前だった。
私は母と一緒に暮らしていた。娘1人とはいえ、中学生になると何かとお金が掛かる。母は仕事で何日も家を空けることが多くなった。
この頃から私は毎日に嫌気が差していた。
言葉を交わさずとも同じ空間にいるだけのクラスメイト。生徒の成績や評価にしか興味のない教師達。お金だけで繋がる形だけの家族。味気ないコンビニ弁当。
生きるのが虚しくなってくる。
自分が何のために生きているのか、わからなくなる。
この息苦しい毎日から解放されたい。
そんな虚無感から、いつしか自殺願望が湧くようになっていた。
確実に死ぬにはどんな方法があるか。それを実行するにはどんな道具がどれくらい必要か。
そして、私が死んだらいくらお金が掛かるのか。
私は自分の貯金箱の中身を全部開けた。小銭やお札がパンパンに詰まっていたが、ざっと数えて10万程だった。
これだけでは葬式代なんて出せないだろう。葬式だけじゃなくてお墓もお金が掛かる。これぽっちじゃ想定足りない。
私は決心した。
1億円。1億円貯めよう。
それだけあれば、葬式代もお墓代も出せる。余ったお金は母に使うように遺言書に書いておけば使い道に困らない。
今まで虚無感でいっぱいだった私に、生まれて初めて生きる目標が出来た。
『1億円貯まったら自殺する』
私佐々木美桜が死ぬために決めた生きる理由。忘れもしない、中2の秋だった。




