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放課後の会話

火曜日の放課後。

 私は授業の疲れを癒すように、図書室へ足を運んだ。

 昨日のことが少し気になって、心のどこかでまた先輩に会えるかも、なんて思ってしまう。


 棚の前で本を探していると、ふいに声がした。


「立花さん、また来てたんだ」


 振り返ると、やっぱりそこには水城先輩がいた。

 自然体の笑顔に、胸が一瞬きゅっとなる。


「は、はい……ちょっと読みたい本があって」

「ふふ、昨日の続きかな?」

「えっと……そんな感じです」


 先輩は同じ棚から別の本を手に取り、私の横に並んで立った。

 その距離が思ったより近くて、息が詰まりそうになる。



 机に向かい、しばらくそれぞれ本をめくっていた。

 でも、不思議と沈黙が心地いい。


「ねえ、立花さん」

 先輩がふいに声を落とす。


「この作家の作品、どこから読んだ?」

「あ、えっと……最初は短編集からで。読みやすくて、気づいたらはまっちゃって」

「同じだ。私も短編集から入ったんだ」


 共通点がまた一つ。

 ただそれだけなのに、胸の奥がふわっと温かくなる。


 先輩は少し考えるように目を細めてから、柔らかく笑った。

「……立花さんとは、なんか気が合いそうだね」


 その一言に、頬が熱くなる。

 うまく返せなくて、本のページをめくる指先がぎこちなくなった。



 帰り道、校門を出てからも先輩の言葉が頭から離れなかった。

 気が合いそう――それだけのことなのに、何度も反芻してしまう。


 私は、どうしてこんなにドキドキしてるんだろう。

 胸の奥で、今までにない感情が少しずつ芽生えているのを感じていた。

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