表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/19

なんでもない放課後

金曜日の放課後。

 窓の外は西日に照らされて、校舎がやわらかなオレンジ色に染まっていた。


「なあ梨緒、帰ろうぜ」

 声をかけてきたのは拓海だった。練習は休みらしく、バスケットボールを片手でくるくる回している。

 相変わらず器用だ。


「ごめん、今日は写真部あるんだ」

「あー、そうだったか。文化祭の準備?」

「うん。ポスターに使う写真の整理」


 私がそう言うと、拓海は「そっか」とあっさり頷いて、ボールを脇に抱え直した。

 少し拍子抜けするほど、彼はいつもあっけらかんとしている。



 写真部の部室に入ると、すでに数人の部員が集まっていた。

 机の上には印刷した写真が並べられ、どれを文化祭の展示に使うかで議論が盛り上がっている。


「梨緒、こっち見て!」

 声をかけてきたのは同じクラスで友達の 明里。

 彼女は写真部の活動に加えて、女子バスケ部のマネージャーもやっている。


「これ!先輩たち、すごくかっこよく映ってない?」


 明里が差し出した数枚の写真の中に、自然と視線が吸い寄せられた。

 ボールを追う横顔。髪が揺れて、真剣なまなざし。

 ――水城遥先輩。


「……うん。すごくいいと思う」

 思わず口に出てしまい、慌てて他の写真へと目を移した。

 けれど、頭の中からあの横顔は消えてくれない。



 部活を終えて校門を出ると、拓海が待っていた。

「おつかれ。ほら、荷物持つよ」

 当然のように私のカメラバッグを肩にかける。


「待っててくれたんだ。ありがと」

「文化祭、楽しみだな。俺の試合の写真も撮ってくれよ」

「……考えとく」


 笑って答えながらも、胸の奥は少しざわついていた。

 ――なんでだろう。

 拓海といると安心するのに、あの先輩の顔が頭から離れない。


 なんでもないはずの放課後が、少しだけ違って感じられた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ