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名前を呼ばれて

木曜日の昼休み。

 購買の前は、今日もパンを求める生徒でいっぱいだった。

 私は人の波に押されそうになっていた。


「梨緒、こっち!」

 声をかけてくれたのは、同じ写真部の明里(あかり)だった。

 彼女は女子バスケ部のマネージャーも兼任している。


「ありがと、助かった」

「いいのいいの。あ、先輩! こっちです」


 明里が声を上げると、人混みの向こうから長身の女子が歩いてきた。

 短く切った髪、スラリとした立ち姿。周囲の空気を一瞬で変えてしまうような存在感。

 ――水城遥先輩。


「明里、買えた?」

「はい! それと、この子が前に話した写真部の子です。部活の文化祭の写真、撮ってくれてるって」

「へえ……」


 先輩の鋭い視線が、私に向けられる。

 思わず背筋が伸びた。


「この前廊下で会ったよね?……名前は?」

「た、立花梨緒です。一年、写真部で……」

「立花梨緒、ね」


 遥先輩が口にした自分の名前が、耳の奥で響いた。

 ただそれだけなのに、心臓が跳ねて落ち着かない。


「ふーん。覚えとく」

 軽く笑った横顔に、私は思わず目を奪われていた。



「ねえ梨緒、顔赤いよ?」

 明里に指摘され、慌てて首を横に振った。


 ――名前を呼ばれただけ。

 それなのに、こんなに嬉しいなんて。


 購買を出てもなお、胸の奥の高鳴りは止まらなかった。

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