俺は海に一人プカプカと浮いている
俺は海に一人プカプカと浮いている。
月明かりが増したような気がして、妙に心がざわついた。
空を見上げると、輝く青い星が目に入った。
見えたと思った瞬間、波と音が消えて、静かな海はまるで月を映す鏡のように変化した。
目の前で、その鏡の海へ青い光が突っ込んだ。
そのとき、俺の体は強烈な衝撃を受け、空へと高く舞い上がった。
---本当だ、走馬灯ってあるんだ---
すべてがスローモーションのように見え、あっけなく訪れた死を覚悟した。
眼下には、光が落ちた場所にポッカリと巨大な穴が開いている。
俺がその穴へ落ちた瞬間、波と音が戻り、大きな渦と轟音へと変わった。
手足をバタつかせるが、どんどんと体は沈んでいく。
肺が圧迫され、口の中には海水がゴボゴボと入ってくる。
意識が薄れていく中、海底から無数の気泡に包まれた銀色の物体がゆっくりと浮上してくる。
もがいていた俺は、その物体に触れた瞬間、意識は完全に飛んでいた。
誰かに顔を触られているような気がして、意識を取り戻した。
とたんに猛烈な吐き気に襲われ、四つん這いになって海水を吐き出した。
ゼイゼイと苦しい息を吐く俺に、水が入った竹筒が差し出された。
---うまい!水ってこんなにうまかったのか---
落ち着いた俺の目の前には、着物姿の少年が立っていた。
「おい、あのうつろ舟はおまえのものか?」少年が指さして言う。
振り向くと、貨物コンテナほどの大きさの鈍い銀色の物体が砂浜にあった。
蓋のあるどんぶりのような形をしている。
しばらく呼吸を整え、体の痛みも和らいだ俺は、この状況の原因と思われる物体に用心深く近づいた。
周囲をぐるりと観察すると、背の高さほどの幾何学模様のレリーフがあった。
触れてみると、レリーフの真ん中から左右へスライドして開いた。
俺は勇気を出して中に入る。
少年も恐る恐るついてきた。