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ちょいと偉人に会ってくる  作者: 鈴木ヒロオ
それぞれの道
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空は透き通る青さを見せ

 空は透き通る青さを見せ、山容は色彩によって輪郭を浮かび上がらせる。


 深まりゆく秋、茹でて皮を剥き、一度冷凍した栗は甘みが増していた。


 久しぶりに訪ねてきた善と、栗と緑茶で昼下がりを楽しんでいた。


 そこへ、小六が血相を変えて駆け込んできた。


 畑にいた真之介も、家の裏で作業をしていた花里も、騒ぎを聞きつけて集まってきた。


 息を切らしながら、小六は呼吸を整え、声を張り上げた。


 「聞いて驚くな!山の裏側に椎茸が生えていた!」


 その言葉に、三人は息を呑んだ。


 真之介はすぐに草鞋を履いて足を固め、出発の準備を始める。


 花里は筵を取り出し、日光に当てる。


 事情が分からず戸惑っている俺に、小六が言い放つ。


 「史郎、何をしているんだ!早く準備をしろ、椎茸はものすごく儲かるんだぞ!」


 俺たちは小六の案内で、椎茸のある場所へと急ぎ足で向かった。


 そこは日の光が適度に差し込む、二本の倒木が折り重なる場所だった。


 その倒木には、椎茸が生えていた。


 小六の指示に従い、俺たちは椎茸の軸を持ち、ねじるようにもぎ取った。


 収穫した椎茸は真之介が背負った竹かごに入れていく。


 すべての椎茸を収穫できたわけではなかった。


 すでに収穫の時期を逃し、腐ってしまい表面が崩れ落ちているものもあった。


 「しばらくの間は、ここで椎茸が収穫できる。俺が毎日通う。」


 小六は声をひそめ、静かに言った。


 俺たちは収穫した椎茸を持ち帰り、形の良いものはそのままにし、傷んでいるものは、その部分を切り落としてスライスにした。


 そうして、筵の上に並べて乾燥させ、干し椎茸にする。


 小六によれば、天気が良ければ三日か四日で乾燥するという。


 俺は彼に話しかけた。


 「小六、この椎茸の中で少し笠の開いたものを三つほど、俺に分けてくれないか。試したいことがあるんだ。」


 小六は養蜂のこともあり、俺がこれからやろうとしていることに理解を示し、「好きなだけ持って行け」と言ってくれた。


 俺は三つほど選び、そっと和紙に包み、舟へ向かった。


 後ろからついてくる好奇心旺盛な善が、俺に尋ねた。


 「史郎、何をするんだ?教えてくれ。」


 俺は振り返り、にやりと笑って、「椎茸の人工栽培を始める。それに思いついた考えがあるんだ」と答えた。


 そう、俺には椎茸栽培に関しては師匠がいる。


 あの日、師匠の武さんは新聞と赤いボールペンを手にし、明日の勝利を信じていた。


 そして、もう一人の武さんが、じっと俺を見ていたことを思い出す。






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