房総も梅雨入りした
房総も梅雨入りしたらしく、雨の日々が続いている。
こんな天候の中、訪ねてくる人もいないだろうと思い、舟は家の裏に迷彩モードで停めておいた。
シトシトと降り続ける雨音を聞きながら、三人はそれぞれ黙々と作業をしている。
俺は板の間に足を投げ出し、その様子をぼんやりと眺めていた。
花里は、どこからか手に入れた藁で草鞋や藁紐を編んでいる。
小六はろくろを使って作業をしている。
真之介はそれを手伝っている。
俺は高校を卒業した後のように、少し寂しい無職だった。
小六は俺の発案で、一週間ほどかけて完成した蜂の防護服を着用していた。
その濃い茶色の着物は袖口が細く、作業中に邪魔にならないよう工夫されている。
さらに、下にはいている筒状の袴は、高所作業員のニッカポッカのような形状で、小六は気に入って、普段からそれを着るようになった。
小六は独特な形状の刃物を使い、小さな椀や皿を木材から削り出していた。
材料には、俺が舟で伐採して、野積みにしていた細い幹の木を使用している。
その作業を手伝う真之介は、ろくろの動力となる紐の両端を交互に引いたり戻したりしていた。
ろくろは木製の台座に金属製の棒が水平に取り付けられ、棒の中央にはロープが巻き付けられている。
棒の一端には四本の突起があり、それが材料を固定し、回転させながら刃物を当てて材料を削り出す仕組みだ。
最初は俺も小六を手伝ったが、「史郎は要領が悪い」と言われて交代させられてしまった。
花里が代わりにやろうとしたが、刃先が壊れて破片が飛ぶ危険性があるため、小六がそれを許さなかった。
雨模様で少し暗い室内で、小さな灯明の下、それぞれが作業に没頭していた。
俺はその灯明の炎を見つめながら、ふとあるアイデアを思いつき、小六に話しかけた。
「小六、ちょっと頼みたい物があるんだけど、作ってくれるか?」
小六は作業を中断させられて少し不機嫌そうだったが、話を聞いてくれることになった。
「今削っている椀の内側の底を、もう少し丸く削ってほしい。それともう一つ」
そう言いながら俺はそばにあった完成済みの深皿を手に取り、「この深皿に入る、まったく同じ形状の一回り小さい深皿を作ってほしいんだ」と二つのお願いをした。
小六は了解した後、早速作業に取りかかった。
俺は椀の内側の形状を確認しながら具体的な指示を出して、椀の内側を希望通りの形状に整え、完成させた。
椀の完成を確認した後、すぐに小六は深皿の製作に取りかかった。
俺の依頼に応じて、一回り小さい深皿を丁寧に削り出していった。
完成した椀と深皿を手に取り、また薄く笑みを浮かべる俺に、小六が尋ねた。
「で、その椀と二つの深皿を何に使うんだ?」
「完成したら教えるよ」と答え、その後、俺は椀と深皿二つ、それから板戸のつっかい棒を手に取り、鼻歌を口ずさみながら舟へと戻っていった。
真之介は興味深げにその様子を見ながら、俺の背中を見送った。