山で見つけた三つの蜂の巣
山で見つけた三つの蜂の巣の近くに、それぞれ一基ずつ巣箱を設置した。
さらに、柿の木のそばには二基の巣箱を配置した。
また、山の南側を中心に慎重に場所を選び、合計で十基の巣箱を設置した。
巣箱は一度に何段も重ねる必要はなく、二段のみにして設置数を増やした。
まずは蜂の捕獲の可能性を高めることを優先した。
本来であれば巣箱に蜜蝋を塗るなどの誘因が必要だが、今回はそれを用意できなかった。
指物師のもとで巣箱作りから設置までを小六に手伝わせたが、彼は「こんなもので蜂が捕まるのか」と半信半疑だった。
それでも梅雨入り前の分蜂が活発化する時期に間に合ったので、あとは運を祈るばかりだ。
「小六、うまくいけば秋には蜂蜜がたくさん取れるぞ。その時のために、いろいろ準備をしておかないとな」と薄く笑う俺に、小六は呆れた表情を浮かべていた。
巣箱を設置した後、俺の頭には蜂蜜を採取する光景しか浮かばなかった。
翌日、俺は花里を連れて重忠さんの家を訪れ、梅菊さんに蜂の防護服の製作について相談することにした。
梅菊さんは快く家に招き入れ、花里の訪問を喜んでくれた。
善が寺へ修行に出たばかりで、少し寂しさを感じていたのかもしれない。
また、息子ばかりで娘がいなかったこともあり、花里の存在が嬉しかったのだろう。
俺が要件を切り出すと「蜂蜜採取は危ない」と注意を受けたが、それでも協力し、裁縫まで手伝ってくれるという。
俺はその申し出に感謝し、防護服について具体的な案を示した。
腕や足の部分はゆったりと作り、蜂の針が通りにくくする工夫を施す一方で、袖口は絞って蜂の侵入を防ぎ、作業の邪魔にならないようにする。
また、必要に応じて紐や布で締められる仕様にし、顔の部分は簡単に布で覆う形にしたいと説明した。
梅菊さんにこれを相談したところ、「柿渋染めの布には虫除け効果がある」という助言を受け、生地にはそれを使うことにした。
そして、機能性と動きやすさを重視した三着の製作をお願いし、花里もその作業に参加させて裁縫を教えてもらうよう頼んだところ、梅菊さんは大いに喜んで承諾してくれた。
その後、俺は蜂蜜の採取に向けて必要な道具を少しずつ揃えていくことにした。