竹林には昨日の五人で
竹林には昨日の五人で分け入った。
俺は高揚した気持ちを抑えきれず、早速鍬で筍を掘ろうとすると、小六に「何をしているんだ、史郎!だめだ、だめだ、だめだ!」と止められた。
彼によれば、掘るべき筍は、大きく育ったものではなく、土からほんの少し顔を出しているもの、あるいは土が少し盛り上がっている下に隠れたものだという。
了解した俺は、ほんの少し顔を出した筍に狙いを定め、鍬を振り下ろそうとした。
その時「あー!止めろ。だめだ、だめだ、だめだ」と、またしても小六に止められた。
まずは筍の先がどちらを向いているのかを確認しろと言う。
これは筍の先が向いている側に根っこがあるので、そこに鍬を打ち込み、根を切れと言う。
「分かったら、その要領でやってみろ」と彼は腕を組み、鼻を膨らませ、花里をチラリと見ながら俺に言った。
---やっぱり、俺はこいつとは仲良くなれない。---
それでも、掘り起こす作業は楽しく、起こされた土の匂いは心地よかった。
最初は小さい筍を収穫し、その後、それより少し大きい筍を掘った。
これは干し筍用であり、小六によればそのほうが適しているという。
掘り上げた筍は家の裏へ運んだ。
そこに石で即席のかまどを作り、借りてきた三つの大鍋を据えつけた。
皮を剥いた筍を縦割りにして鍋に入れ、桶で水を満たし米ぬかを加えた後、火をつけて煮る。
茹でる筍からはほんのり甘い香りが漂い、茹で上がった筍は粗熱を取った後、水を張った桶や甕へ移した。
干し筍作りでは、冷ました筍を薄切りにし、切るそばから筵に並べて乾燥させた。
天気が良ければ、二日ほどで完成すると言う。
あとは分業で進め、筍を掘りに行く者、茹でる者、筍を切り筵に並べる者、それぞれの役割を担った。
昼過ぎまで作業を続けた後、新右衛門さんと和江さんに大鍋を返すため、荷車に積んで善と小六と真之介に運んでもらう。
お礼に茹でた筍を桶に入れ持参した。
梅菊さんから借りた大鍋については、小六が「明日も筍を収穫し茹でたい」と言ったため、そのまま借り続けることにした。
三人が出かけている間、俺と花里は二人で夕飯の準備を進めた。
玄米ではなく白米で筍ご飯を炊く。
筍とふきの味噌汁を作る。
それから薄切りにした筍と鰹の切り身を鍋に入れて、水をひたひたに注ぎ、酒と醤で煮物を仕上げる。
こうしてできた筍づくしの夕飯は、五人の気持ちが一つに重なる特別な食卓となった。