この部屋は謎に満ちている
この部屋は謎に満ちている。
いや、この舟自体そうであるが、この空間は年代の設定がおかしい。
さまざまな文明と時代が混在している。
「ギャッ!」という短い悲鳴が響き、振り向くと、いつの間にか善が、診察台のようなものに横たわり、その台に拘束されている。
「善!大丈夫か、今助ける!」と急いで駆け寄るが、透明なドームが台の両側からせり出し、彼を覆い隠し、外部との接触を遮断した。
彼は手足、胸、腰に金属の拘束帯で台に固定され、動けない状態にあった。
どうすることもできない状況で見ていると、頭の上にある半円形の金属体から、八本爪の大きなアームが現れ、頭を挟み付けて抑え込んでいる。
すると今度は、六本の小さなアームが現れ、そのうち四本が口の上下左右へ取り付き、強制的に開かせていた。
残る二本のアームのうち一本からは、八本爪の中心部から細長い針が伸び、透明な薬液を滴らせていた。
もう一つのアームは、八本爪をそれぞれ高速で回転させている。
見開いた目をした善の口に、針がゆっくりと挿入されていく。
彼は恐怖で目尻から涙を流している。
無情にも針は歯茎を刺し、次に高速回転する爪が無慈悲に口の中を襲った。
キュルルルルルという音とともに、歯の治療が始まったようだ。
彼の荒い呼吸の中で、二本のアームが暴れ回っている。
最後は、恐らく乳歯と思われる奥歯がアームによって抜かれた。
その後、七本目のアームが現れた。
爪の代わりに八本のブラシが取り付けられていた。
クリーニングが終わると、ぐったりとした善は解放された。
抜かれた歯は金属体からカプセルトイの景品のように排出された。
それはビー玉ほどの大きさで、弾力のある青い球体であった。
善に手渡すと、彼はそれを部屋の明かりにかざして見ていた。
歯は青い液体の中で、まるで生きているかのように浮かんでいた。
「史郎、これを貰ってもいいかな」と彼が尋ねたので、俺は頷いた。
彼はそれを大切そうに懐に仕舞い、嬉しそうな顔を俺に向けた。
その後、その歯はある寺で「御肉牙」と呼ばれ、現在も成長を続けているとされている。
また、法主が代替わりする際にのみ信徒に特別に公開されるという。
そのことについて、俺は何も知らない。