パンドラの箱の隣には
パンドラの箱の隣には、鳳凰の透かし彫りが施された花台の上に、蓄音機が置かれていた。
花台の下には、約五十枚のレコードが透明なケースに収められ、整然と並んでいる。
「史郎、この山百合みたいなものが付いた箱は何だ?」
「ああ、これは、この花のような部分から楽器の音や声が出てくるんだ。今度試してみよう。」
「そ、そんな仕掛けがあるのか?俺の声も出てくるのか?」
「それは無理だ。この下に並んでいる円盤、その溝に記録されているものしか出てこないんだ。」
「では、俺の声も円盤に記録できるのか?」
「それもできない。記録するための仕掛けや材料、道具も何もない。」
善はレコードを手に取り、溝をじっと見つめていた。
どうやら、自分の声を聴きたかったのか、あるいは声を記録したかったのか、とても残念そうな表情を浮かべていた。
奥の壁にはパンドラの箱と蓄音機が並び、その手前には大きなペルシャ絨毯が敷かれていた。
その上には、コの字型に配置された異なるデザインの長椅子があった。
壁側には柔らかな牛革のソファベッドがあり、両脇の片方には、世界遺産にありそうな丸い石柱を輪切りにし、L字型にくり抜いた形状の長椅子が置かれていた。
その長椅子には、見覚えのある文字が刻まれていたが、意味を理解することはできなかった。
かつて住んでいたクーズベイの町にあったケバブロール店の看板に似ている気がした。
もう片方の椅子は重厚な木製で、アジア風の彫刻が施されており、眺めていると物語が語りかけてくるような感覚に襲われた。
すべての機器や調度品には銀色のプレートが付いており、名前や説明が記されているようだったが、使われている文字が知らないものばかりで、理解できたものはほとんどなかった。
唯一理解できたのは、蓄音機に記された「留声机」の文字だけだった。
水槽に付けられていた説明書きは例外で、英語を含む二十種類の言語で記されていたため、読める内容だった。
「人類は、この青い水を絶対に直接飲んではいけません。いいですか、直接飲んではいけません。」
---直接はダメだが、間接的に飲むのは大丈夫なのか?それにしても、なぜ二回も繰り返すんだ?---
危険な香りのする青い水は、生物の投入を待っているようだった。