二人で今後の行動について
二人で今後の行動を話し合った。
明日、善が再び食べ物を運んだ後、二人で舟を詳しく調べる予定だ。
その後、海から漂着した者として、村で網主をしている善の両親に紹介してもらう。
おそらく、役人からの取り調べも避けられないだろう。
「舟は論外だが、身元を証明できるようなものは用意しておけ」と助言を受けた。
財布には、運転免許証、クレジットカード、会員証、数枚の写真、そして磨き上げた十円玉が三枚入っている。
これらのうち、運転免許証は論外だと考え、消去法により十円玉を選ぶことにした。
この十円玉は、帰国直後に日本の硬貨を珍しく思い、台所にあった重曹と酢で磨いたものだ。
「史郎、明日一番に来るから、一緒に舟を調べよう。約束だ。抜け駆けは許さんぞ!」
善の楽しそうな様子が伝わってくる。
暗くなり始めたので、彼を見送ることにした。
船外へ出ると、出入口横にある手のひらほどのレリーフに善が気づき、何気なく触れた。
すると、突然彼の手がレリーフに吸い込まれ、抜けなくなったのだ。
善の体は青い光を足の裏から放ち、全身に広がっていく。
驚きの表情を浮かべた善は泣きそうだ。
「大丈夫か?今すぐ助ける!」
彼の体を引っ張ろうと試みるが、どうすることもできない。
しばらくすると、レリーフから立体ホログラムが現れ、日本語で「エネルギー供給者登録されました。100%供給完了」と表示された。
ホログラムが消えると同時に、善の手が自由になった。
「善!大丈夫か?体に痛みや異常はないか?」
「史郎、大丈夫だ!驚いたが、体は何ともない」
どうやら無事のようだ。
二人でほっと安心し、俺もレリーフにそっと触れてみた。
しかし、「供給失敗、登録者が異なります」と表示され、何度試しても同じ結果だった。
どうやら善だけが対応できるようだ。
その後、日が暮れゆく中で慌てて帰ろうとする善に、史郎は拳を突き出して別れ際の挨拶をした。
「いろいろ助かった。本当にありがとう。明日もよろしくな」
不思議そうな顔をする善に説明した。
「これは信頼できる友達同士がする挨拶だ。お互いの拳を合わせるんだ」
善も応じ、「Yo! Zen」「よ、よう!史郎」と拳を合わせた。
夕暮れが迫る砂浜を、善は駆け足で家へと向かった。