表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/15

第3章③

 柊には真相をはぐらかされたまま、文化祭の当日がやってきた。ポスターは改めて貼ったが、気が付くと剥がされており、完全にイタチごっこの様相になっていた。結局、ミスコン前に碧人の認知度が上げられたのかは分からない。それでも、最後の望みをかけて、ステージに挑む。


 高校の文化祭規模のミスコンなので、ステージ内容は簡単なものだ。参加者がステージに上がり、自己紹介のスピーチをするだけ。あとは投票して順位を決めるといった内容だ。

 先に柊の出番が来た。颯爽とステージにあがると、黄色い声援があちこちから聞こえてくる。やはり大人気だ。


「こんにちは、杉原柊です。生徒会長をしているので、見たことあるなって人もいるかな」


 むしろ全校生徒が見知ってるに決まっているので、みんな笑っている。良い掴みだ。スピーチし慣れているなと感心してしまう。

 その後も、生徒のみんなが楽しめるように、生徒会長としていろいろやってきたと言いつつ、落としどころは、自分が成長も出来て楽しかったから、みんなに感謝していると締めくくった。完璧だった。ケチの付けるところがない。


 数人挟んで、碧人の出番がやってきた。今までの参加者の様子を見て、ステージに上がった時点の歓声でどのくらい人気がある生徒なのかが分かる。柊は断トツで人気者だ。ステージ上では自己紹介のスピーチしかアピール出来ないから、もはや最初の声援の大きさですでに結果は見えているようなものだった。それでも、蛍は諦めたくなかった。


 碧人がステージにあがる。その瞬間、蛍は大きく息を吸った。


「あおとー!」


 思い切り叫んだ。女子とは違う低めの声が体育館に響き、すごく恥ずかしい。でも、恥ずかしくてもやると決めていた。

 文化祭、つまり祭だ。みんな祭の雰囲気に飲み込まれていつもより陽気になっている。だから、盛り上がったらワンチャンある!


 周囲の視線が突き刺さるが気にしちゃいられない。もっと声援を送ろうと再び大きく息を吸った時だった。女子生徒の声があちこちから上がったのだ。


「きゃー、尊い!」

「あおとくん、がんばってー」

「かっこいいー」

「相思相愛、このまま付き合ってー」


 どういうことだと目を白黒させていると、たまたま隣にいた女子がスマホを見せてきた。


「碧人くんの動画、SNSで回ってきたんだ。めっちゃイケメンだし、猫や桐生くんと戯れてるの可愛いから、校内の女子達の間で超バズってるんだよ」

「え……、俺、SNSに動画なんて流してないけど」

「動画をアップしたのは、二年女子の人だよ。私は一年B組の女子から回ってきたのを見たの」


 二年女子ってことは、きっと美織だ。彼女が協力してくれる合間に撮ってた動画をSNSで流してくれたんだろう。でも、本当に有り難い。蛍のポスター作戦よりもよっぽど効率がいいし、確実に個人個人に届いている。


 ステージ中央まで歩き、碧人がマイクの前で一礼した。そして、一呼吸のちに口を開く。


「一年の桐生碧人です。まさか、こんなにも声をかけてもらえるとは思っていなくて。正直、びっくりしてます」


 碧人が照れくさそうに、ステージ上で少しだけ笑った。そのはにかみ具合が、ものすごくいい。蛍がきゅんとしたくらいだ、まわりからも再び歓声が上がる。


「俺は一年なので、まだ皆さんのために何かしたとアピールするものがありません。なので、本当にただの自己紹介をしたいと思います」


 スピーチ原稿を出すこともなく、碧人は話し始めた。


「俺は、一ヶ月前までは今と全く違う見た目をしていました。前髪が長くて、表情が良く見えず、この背の高さもあり、怖いと思われていたんです。おまけに、俺の態度も良くなかったから、自転車事故に巻き込まれて学校を休んでいたのも、喧嘩して停学になったと誤解されていました。でも、仕方ないと諦めて、そんな自分を受け入れていたんです」


 そういえば長期欠席の理由って聞いてなかったけど、怪我して休んでいたのか。

 まわりも初めて明かされる碧人の心情に、静かに聴き入っている。


「そんな俺に変わるチャンスが巡ってきたんです。最初は面倒だなと思っていましたが、誤解されたままは良くないと真っ直ぐに言われて、俺も受け入れてもらえる努力をしようと気持ちが変わりました。そして、今があります。だから、この場を借りて伝えたい。俺を変えてくれて『ありがとう』と」


 碧人が終わりの礼をする。


 すると、体育館に大きな拍手が鳴り響いた。蛍は手を叩きながら、流れ出てしまう涙を必死に拭う。


 最初は蛍の独りよがりな思いつきだった。碧人も最初は面倒だと思っていたと言っていた。でも、碧人はこの変化を良いものだと感じてくれている。それが、心底嬉しかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ