【[4]我々は、爪や、髪や、悍ましい糞便や、死んだ犬(カゥン)を 全て荒野に投げ捨て、振り返らない】
健全なる死とは、
常に荒野で営まれている。
だから、ここより壁の内側は
歪に死を隠蔽した
高慢な患者達の無菌病室だ。
我々は、
爪や、髪や、
[悍ましい糞便]や、
死んだ犬を
全て荒野に投げ捨て、振り返らない。
それは禁忌故に。
ああ、忌まわしい穢れを左肩越しに放り、
我々は今日も
あの墓地を見ないように暮らす。
それでも早朝、
狭心症の胸の痛みを抱え、
打ち上げられた鷗の死骸を見た時、
私はハッキリと何者かの顔を見る。
そいつは人生であり、死であり、
笑みの無い己の顔をしていた。
打ちひしがれたキリストの磔刑像が
死や、曝気槽の汚泥や、
病や、喜びや、
痛みの混合物となった
錯体の十字架を背負いながら
私に語りかける。
「おおい!!そこのお前!!
痛みを見ないフリをするな!!
それこそがお前の家だ!!
孤独に化膿した醜い傷を抱え、
誰にも知られずに蟹と銃身を埋葬する。
座り心地の悪い玉座は
お前の肋骨を徹底的に痛めつける。
だが、それこそが!!
それこそがお前の私物なのだ!!」
ああ!!そして私は
舌下錠を口に入れ、
寒さに凍えながら、
無数の崩御された
蛤達の殻を踏みつけ
一人で帰路につく!!
誰にも知られない様に。
そう・・
あの時・・
あの時、私は自分の顔を見た!!
ああ!!それは死の顔をしていた。
それは健全な[痛み]の顔をしていた。
血を流さぬ命などない。
切り裂かれぬ命など無いのだ!!
打ちひしがれた
キリストの磔刑像の下で、
私は自分の顔を見た!!
そいつは・・
他人行儀で友の葬儀に立ち会い、
振り返りもしなかった
黒い荒野の墓地の顔をしていたのだ!!