第7話 噂話
最難関ダンジョン常闇の魔窟を難なく攻略に成功した俺は受付嬢に手に入れたお宝を換金してもらっていた。
「もしかして、ディール?」
「ん、エナと皆かガリアスとマルタは?」
「それが、罠にかかって行方知れずでござる。」
「そうか、まあ大丈夫だろあの二人だし……そういやダンジョンで変なモンスターに会ったぞ! なんか人語喋ってた。」
「何ですって!? そのモンスターに角は有りましたか! 全身白色では!? どうやって逃げ切ったのです!!」
常闇の魔窟で絡まれたモンスターについて話すとザマの顔は青褪めながら俺の肩を揺らし質問責めをする。
「お、落ち着けよ! どうしたんだ、お前!?」
「はっ! 申し訳ありません、取り乱してしまいました……。」
「えと、あのねディール……ザマさんは昔モンスターに仲間を全滅させられた事があるの。」
「つまり、ダンジョン内で喋るモンスターに襲われたという訳でござるな。」
「ええ……、ワタクシにもっと力が有れば……あの時調子に乗らなければ仲間を死なせずに済んだ筈ですから。」
「そうなんか? 俺が会った奴は初級魔法一発で吹っ飛んでったからな、そんなに強い奴なら別の奴だろうな。」
「おい、俺様のパーティーメンバーに気安く話しかけてんじゃねーよ!」
そこへガリアスが冒険者ギルドへと入ってくると嫌味な態度で俺に話しかける。
「何だよ別に良いだろ、元はと言えばバスターロールは俺とエナで……。」
「うるせーよ! 今は俺様がリーダーなんだ、部外者は引っ込んでな!!」
「あーはいはい、好きにすれば? でもこれだけは言っておく、お前みたいな奴にエナは惚れないからな!」
「てんめぇ……。」
「じゃあな、俺はソロでダンジョン攻略楽しんどくから!」
「あっ、待ってディール! 今何処で寝泊まりしてるの? 大丈夫?」
「んー、取り敢えず今日もモランタイル侯爵家に泊めてもらうかな? 皆もじゃあまたな!!」
「「「「「モランタイル侯爵家!?」」」」」
俺は冒険者ギルドをあとにし、菓子屋でワッフルを買いに商店街へと赴く。
「お姉さん、ワッフル20個ください!」
「あらディール君、お上手ね〜でもそんなに食べ切れる?」
「いや、俺一人で食う訳じゃないから。」
「そらそうだ、お前じゃないんだから当然だな! ディール君、女には気をつけなよ家の女房を見てみろ昔は美人だったが今じゃオバサン体型だ。」
「なんだい、アンタだって今じゃハゲ散らかしてるオッサンじゃないかい!」
「あの喧嘩やめてもらえます?」
「喧嘩じゃないよ、スキンシップってやつさ。」
「そうだな、ディール君も結婚したら分かるぞ! ただ“太らない体質”とかいう女には気をつけな俺の二の舞になるからな! はっはっはっ!!」
「なーにが二の舞だい! そういや、ディール君は聴いたかい?」
「聴いたって何を?」
ワッフルを買い菓子屋の日常会話を聴いていると途中で菓子屋のオバサンから何か意味深な話を聴く事になる。
「つい最近なんだけどね、冒険者の人達から近くの森でドラゴンの呻き声の様なものが聞こえて、その近くへ行っても何も居なかったって話だよ。」
「んだぁ、害がねえなら良いじゃねーかそれより昨日来た冒険者のお兄さんの話をした方が良いんじゃねーのか?」
「んー、なんとなくドラゴンの話には心当たりがある様な……まあいいや、その冒険者の話って?」
「男のサキュバスだよ。」
「「は?」」
俺と菓子屋のオバサンはオジサンが言った一言に理解が出来ずにシラけた視線を送ってしまう。
「何言ってんだい、サキュバスに男が存在する訳ないだろ!」
「本当だって、お前だって冒険者のお兄さんの顔色見ただろ!? あんな顔色になるのは世にも恐ろしい者を見た時ぐらいさ!」
「それで、その人はどうやって逃げ切ったの?」
「それがな、仲間の一人が犠牲になって後で男のサキュバスが居た場所へ戻ると体液を吸い付くされてミイラ化した死体だけが残ってたって話だな。」
「そんな事があったのか、俺も気をつけないとな。 有難うお姉さんにオジサン!」
「じゃあ、またねディール君!」
「俺だけお兄さんじゃないのか……。」
「アンタもお兄さんて呼ばれたかったんじゃないかい!」
「ち、ちがわい!!」
オジサンは顔を赤くしながらプイとそっぽを向いてしまうが、俺は噂話を聴いた後モランタイル侯爵家へと脚を運ぶ。
「あっ、モランタイル侯爵様だ!」
「おや、君は確かディール君だったね何か様かい?」
「昨日世話になったし、メイドさんや大精霊様にお礼したくて来ました!」
「それはそれは、娘も喜ぶから入ってくれ給え。」
「ところで、何処か出かけるんですか?」
「ああ、ちょっと会議にね部屋は自由に使ってくれて構わないよ。 じゃ、またね。」
モランタイル侯爵は馬車に乗ると何処かへと出かけ、俺は遠ざかる馬車に手を振り見送った後屋敷に入る。
「すみませーん、誰か居ませんかー?」
「あらまあ、ディール様ではありませんか!? どうされました、それは?」
「あーこれ? メイドさんや大精霊様に世話になったし、そのお礼だな!」
「まあ、態々有難う御座います! 皆へ渡しておきますね。」
「じゃ、俺は大精霊様のとこへ行くけど良いか?」
「はい、どうぞ丁度今ポッコロ様が向かわれてますから仲良くしてくださいね?」
「おう!」
大精霊様の居る中庭へと入るとポッコロと大精霊様が楽しく会話しているところで俺に気付く。
「ディール様!?」
「あら、ディール君じゃないどうしたの?」
「大精霊様に世話になってるからな、ワッフル買って来た! ポッコロの分も有るぞ!」
「有難う御座います!」
「あら〜、お供え物なんていつぶりかしら! 有り難く頂くわね!」
大精霊様とポッコロの三人で楽しく中庭で俺はワッフルを食べながら色々な話をする事になった。