第5話 楽々ダンジョン攻略
第5話 楽々ダンジョン攻略
的当ての準備を済ませた受付嬢に案内され訓練所に入ると遠くには丸く中央には紅い丸が有りそれを囲む様に白と黒のコントラストが見栄えを良くしている。
「的は絶対に壊れない様になっているので安心して狙ってくださいね。」
「前にも聴いたよ、今まで誰も壊した事がないってな。」
(本当に壊れないのか試してみたくなるな!)
そう思っていると三人のニヤけた顔の冒険者が馬鹿にした様な態度で話しかけて来た。
「よう、お前バスターロールから追い出された荷物持ちだよなぁ?」
「そうだけど……。」
「ここは魔法使いの訓練所だぜ?」
「それは分かってるよ、魔法覚えたばかりだしな。」
「ははは! 覚えたばかりだってよ、驚かせてやろうぜ!!」
三人の内一人が俺を押しのけ定位置に着くと杖を的目掛けて翳し無詠唱で火属性の上級魔法を放つ。
「ギガファイア!」
命中すると煙がモクモクと的の周囲に残り、少しづつ消えていき何言も無かったかの様に的は残る。
「凄えな、あの的本当に壊れないんだな!」
(くく、驚いてる驚いてる。)
「次はオラだ! ガイアブラスト!!」
次の冒険者が本を開くと土属性の上級魔法を無詠唱で唱えると巨大な岩石が出現し的へと真っ直ぐ猛スピードでぶつかり建物全体を揺らす。
「お次は、ボクの番だねエレキテルサンダー!」
最後の三人目も無詠唱で雷属性の上級魔法を指先から豪雷が的へと吸い込まれるかの如くど真ん中に命中する。
「ほへ〜、凄えな上級魔法を無詠唱で唱えられるなんてな俺も何時か上級魔法を無詠唱で使える様になりてーな!」
(ぷっ、上級魔法を無詠唱でだって? コイツ馬鹿だ、俺達は予め詠唱して集中力を切らさずに待機していただけだってのにな!)
「はぁ、三人共合格よ……次はディール君ね。」
「おう、取り敢えず的に当てられれば良いんだな! ファイア!!」
俺は近くでクスクスと笑う三人を気にせず掌を的に向け下級魔法のファイアを放つとギガファイアと同じ威力の魔法が的に当たる。
「な、何だ今のは! ファイアって言ったよな?」
「今、上級魔法使ったのか?」
「そうに決まってるさ、どうせボクらと同じ事してたに違いない!」
周囲の反応は、まるで信じられない物でも見たかの様に驚愕した表情になっている。
(成程な、確かに無詠唱で上級魔法を使える奴からしたら弱すぎて驚くよな? しかし、本当に壊れないなあの的……集中砲火を浴びせたらどうだ?)
「はっ、ディール君?」
俺は両手の掌を的に向け翳すと幾つもの魔法陣を展開させ、下級魔法を無詠唱で連続して放つ。
「ファイア! アイシクル! サンダー! ロックショット! ウォーターバレット! ダークフォース! シャインアタック!」
「「「うわああああああああ!!」」」
「きゃああああああああ!!」
魔法陣から放たれた火、氷、雷、土、水、闇、光属性の下級魔法は上級魔法にも負けず劣らずの威力で的に集中砲火を浴びせ街全体を揺らす。
「まだまだああああああああ!!」
「や、止めろバカ! 建物が崩れたらどうすんだ!」
「ヒイィィィ、この世の終わりだああああ!!」
「もういい、分かったから魔法を止めろ!!」
魔法を放ち続けて数分後、的の周りには焦げ跡や凍り付いた後等は有るが全くもって傷一つ付いてはいなかった。
「やっぱ駄目か、覚えたばかりだからか威力が弱過ぎたんだな。」
「…………。」
周囲の人達はあんぐりと口を開け放心状態になっており、俺は受付嬢に合格かどうかを訪ねる。
「なあ、的には当たってたから合格で良いよな?」
「え? ええ、合格……。」
「よっしゃ!!」
俺は早速手続きを済ませ、バスターロールの面々が行ったと思われる最難関ダンジョンへと脚を運び様子を見に来た。
「よっし着いたっと皆の事心配だし様子見に来たけど大丈夫かな?」
そう考えながら最難関ダンジョン“常闇の魔窟”に入って行くが、いきなり眼の前にはグレーターデーモン三体が俺に気付き襲いかかる。
「「「ヴォォオオオオ!!」」」
「スキル発動、透明化!!」
グレーターデーモンに対して透明化のスキルを使うと一瞬にして何事も無かったかの様に消え去る。
「さて、皆はもう最奥まで着いてるのかな?」
俺は次々襲いかかる危険レベル60ものモンスターを透明化のスキルで消し去りながら、宝箱からは武器やら装飾品を取りながら最奥に着くが誰とも会わなかった。
「アレ? おっかしいな、誰とも会わないとは急遽止める事にでもしたのかな? まあ良いや、ボスモンスターも居ないし最奥のお宝貰っちゃお!」
今まで見てきた宝箱とは違い大きく豪華な装飾のされた宝箱を開けると中には先端部分には翡翠色の宝玉の付いた杖が入っていた。
「これは! 何だ? オチバが居ないから全くもって効果が解らんぞ? さて、帰るか。」
俺は来た道を戻り入口近くまで行くど、その出口の前で腕を組み仁王立ちしているモンスターが居る事に気付いた。
「くくく、よう人間もう少しで外に出られると言うのに強大な力に邪魔されるのはどんな気分だ?」
「何だ、ネズミ見たいな奴だな。」
ネズミ見たいな見た目のモンスターは、俺を見下ろしながら掌を向けてくると無詠唱で火属性の魔法を放つ。
「火炎舞踏会!!」
掌から放たれた二つの炎が交差しながら俺に物凄い速さで当たった、かの様に思ったが何故か擦り抜け俺とネズミ見たいな奴は驚く。
「「擦り抜けた!?」」
「成程、魔法擦り抜けのスキルを持っている様だな。 だが、俺様の物理攻撃は通る筈だ! おぅらうぇえ!?」
「ウィンド。」
「うぇあああああああああああああ!?」
ネズミ見たいな奴は俺に飛びかかりながらパンチを繰り出すも擦り抜け、俺は軽く風属性魔法を放つとダンジョン外の何処か遠くまで吹き飛んで行った。
「何だったんだ今の?」