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ブラックコーヒー

作者: 未道 練

ブラックコーヒー


 リョウちゃんは今日も頭抱えてる。最近パソコンにかじりついていないし、笑顔も見たことない。リョウちゃんに何があったんだろう。

 リョウちゃんがボクを手に取ったよ。そして氷を入れるとリョウちゃんは冷蔵庫を開けた。あっ、コーヒーだ、今日のはペットボトルのものか、いつもより濃いぞ!ん?あれ?牛乳?砂糖?なんだいつものリョウちゃんだ。今日はちょっと濃いのが飲みたいんだね。リョウちゃんはスプーンでボクの中を混ぜたよ。それであったかい口に入れたんだ。

「味は薄いし、冷たくない」

え?どうして?いつもよりちょっと濃かったけど?

「もう何もかも嫌だ、なんでうまくいかないんだ」

リョウちゃんはさっきの量より多く入れて何も入れないで飲んだよ。大丈夫?

「これの粉が毒だったら、楽になれるのにな」

砂糖を見つめながらすごく怖いこと言ってる。リョウちゃんがいなくなったら寂しいよ。あっ、一気飲みだ!ヤケコーヒーだ!

「バイトもうまくいかない、就活もうまくいかない、小説もうまいいかない、本当に何もうまくいかない」

リョウちゃん?どうしたの?また頭を抱えてる。

「才能ないヤツが頑張っても無駄なんだ」

あ!リョウちゃんそんなことないよ!泣かないで!

「何が才能ないは言い訳だ!こっちの苦労も知らないくせに!!」

え?え?え?リョウちゃん?本当にどうしたの!?あ!髪を引っ張らないで!もうそんなことやめてよ!

 リョウちゃんは息を乱しながら丸めた黒い塊をゴミ箱に捨てた。そのまま机にうつ伏せになってすごいくらいに泣き始めた。

 ボクはリョウちゃんと話せないからリョウちゃんを励ませないし、応援もできないし、慰めることもできない。リョウちゃんが苦しいんでいる姿をただただ見てるしかない。

 どうしてボクはマグカップなんだろう。カップじゃなかったらリョウちゃんと話せるのに、カップじゃなかったらリョウちゃんを1人にしないのに、ボクがカップじゃながったらリョウちゃんも話して楽になれたのかもしれないのに。


 最近リョウちゃんはコーヒーをよく飲んでる。でも、リョウちゃんは毎日暗い顔をしている。前は美味しそうに飲んでいたのに、今はちっとも美味しくなさそう。それに前のリョウちゃんは砂糖と牛乳が入った甘いコーヒーが好きだったのに、今のリョウちゃんは何も入れないで飲んでいる。大人になったのかな。

 昔から飲み物はちびちび飲んでいたけど、最近は同じちびちびでも、なんか確認している感じ。でも、氷だけは欠かさずに入れてるよ、冷たいのが好きだもんね。

 そういえばリョウちゃん、パソコンで何もしてないけど大丈夫?前はあんなに使っていたのにどうしたの?


 リョウちゃん帰ってこないな。もう数日たつけど、旅行かな?ん?扉が開く音がする!リョウちゃん帰ってきたんだ。

 え?あ、リョウちゃんのお母さんだ。あれ?どうして泣いてるの?リョウちゃんは?リョウちゃんはどこにいるの?

 リョウちゃんのお母さんはボクを手に取ると机にうつ伏せになってあの時のリョウちゃんみたいに泣いちゃった。ねぇ、リョウちゃんのお母さん、リョウちゃんはいつ帰ってくるの?

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