7.5 金の審判者
今回は閑話なので早めの投稿&短めです。余り読まなくても本編には影響は出ない程度の話です。
「歪み歪ませ歪んでいく。さぁさぁ皆様お待ちかね、壊れた物語の喜劇で行きます行きましょう行きませんか?」
ここは廃墟。
本来誰も使わないような場所。
電気も通っておらず、水も流れない。だが近くの都市にいる人は誰も寄り付かない場所。
身を隠すにはもってこいの場所である。
「誰だ!!そこで何をしている!」
その廃墟に住む。いや、根城にしているその男たちは侵入者を拒むべく、立ち塞がる。
持つは銃。
皆も知る化学の産物である。
「何だ何だろ何だろね?世界は回っていくはずなのに、私の周りは回らない。だけどだけどねだからこそ、私が勝手に回し行く」
男達の前に現れたのは少女。
日本人には思えない金髪。だが染めているようにも思えない。
見たところ15、6歳あたりの年齢の少女だが、男達の向けてくる銃には微動だにせず、何かを口ずさんでいる。
「聞いているのか!?それ以上近づけばガキだからって撃つぞ!?」
それでも少女は止まらない。
口元にうっすらと笑みを浮かべたまま、ゆっくり、ゆっくりと近づいてくる。
「やだねやだよやだからね?皆皆で遊びましょ?」
瞬間、少女の体がブレる。
ブベッ?
という声がした。
拳。
少女の拳が隣の男……同僚の顔に入ったのだ。
ストレート。だがあまりの速さに見えることすらなかった。
いや、拳もそうだがいつ近づいた?ざっと距離は30メートル。そこまで遠くない距離だが2秒もかからず近づくのは無理だろう。
「ねぇ」
もう1人の男……俺の耳元で声がした。
「早く治療してあげなよ?これでもスピードは抑えたから致命傷にはなってないはずだよ?」
一瞬目を逸らしただけなのに気づけば隣にいる。訳が分からない。
だが分かるのはこいつに抵抗しては行けないことだろう。
「ん、冷静、冷静!そういう人、好きだよ?」
先程の何を言っていたのか分からないような声ではなく、今でははっきりと聞こえる。
その明るい声。今では逆に不気味に感じる。
「んー、何かここで変な感じがしたんだけどなー?AFも無さそうだし?無駄足?……まぁいいや、んじゃ、食べ歩きと行こうかなー!”この世界”の美味は何だろなー!」
分からない。少女自体もそうだが、何を言っているのかさえも。
怖い……怖い!
だがこれだけは聞いておきたかった。いま、このタイミングで聞くのは馬鹿らしいと自分でも思う。下手したら隣の同僚と同じ目に合っていたかもしれない。
だが、聞かずにはいられなかった。
「……アンタの……名は?」
「んー?私?私はシェリー。……あぁ、こっちで名乗った方がいいかな?
シェリー·トワイレント。自称”調節者”だよ!」