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Ⅴ 命の零れる時間

「ハッ……ハッ……ハッ……!?」


逃げなくては逃げなくては逃げなくては逃げなくては逃げなくては逃げなくては逃げなくては逃げなくては


先へ進めば進む程、足場はどんどん不安定になっていく。何度もつまづきそうになり、突き出た木の枝には引っかかって身体中に切り傷をつくる。


だが立ち止まっては行けない。

止まったら……




殺される。




何でこうなったのかは分からない。だが気を失っていて、目が覚めたら森の奥地らしき場所で眠らされており、探知を使用してみた所、複数の魔物たちに囲まれている状態だった。


幸いだったのは魔物が互いに牽制しあい、中々襲いかかって来なかったため、隙を見て逃げることが出来たことだろう。

……いや、もしかしたら意識が戻る前に殺されていた方がマシだったのかもしれないが……


だが今はもうそんなことを考えている暇はない。

背後からは木々のなぎ倒される音が聞こえる。


複数の鳴き声も聞こえるため、今は取り合う前に獲物(おれ)を仕留めるために協力をしているのだろうか?

いや、ただ獲物(おれ)を仕留めることにしか興味が行っていないだけかもしれない。


一応所々で隠密のスキルを使っているのだが、どうしても巨大なカメレオンモドキの魔物に見つかってしまい、効果が切れてしまうのだ。


そろそろ体力も限界に近い。そんなことも言ってられる状態では無いのだが、足が重くなり、感覚がなくなっていく。


「あっ……」


人間は……いや、ほとんどの動物は神経から与えられた情報を元に行動している節がある。

前を見ていてもあまり何かにつまづくことがないように、画面を見ていてもコントローラーを動かせたり。


だがその感覚がなくなってしまえば一体どのタイミングで力を込めればいいのかが分からなくなってしまう。


更に不安定な地面なら尚更だ。

転んでしまうのも無理はない。


「ウッソだろ……!?体制を立て直さないと……」


だが足は動かない。それもそうだ。

今まではあくまで慣性の力を利用して走っていたに過ぎない。


左足を動かし、止めればその力で右足を動かし、その右足を止めればその力で左足を動かす。


それはあくまでもずっと走り続けていたからできたことであり、1度止まってしまうと……


「うご……かな……ッ!?」


咄嗟に腕の力だけで地面を転がり飛んできたものを避ける。


巨大な茶色の塊。イノシシのようなそれはだが額にある青白い宝石が普通の生き物ではないことを主張している。


とはいえ直線に対してしか強くないのか、今なお減速はしつつも止まらずに前へ進んでいく。木々がなぎ倒され、針路上の魔物もはね飛ばされている。


これで魔物が減る。


だが、魔物が減る事が決していいこととは言えなかった。


ー魔物が互いに牽制しあいー


魔物が複数いるから対立していたのだ。


いくら標的をひとつに定めたとはいえ、互いが邪魔なのは変わりないだろう。


つまりだ。


多くの足をバラバラに動かし、尚且つこちらのみを見ている巨大ムカデを邪魔するものはいなくなった。


「は……はは……なんっ……で俺が……こんな……」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


見つけた。


リナから教えてもらったルートを通ると少し開けた場所に出た。


薬草は生命力が高く、数が多いとほかの植物からも少しだけ生命力を吸収する性質を持つ。

そのため、薬草はの群生地近くにはほかの植物はあまり生えていないのだ。


例の人物が薬草を取っているのもこの辺りだろう。


ヒナミはそこで魔法を利用する。


「世界を映せ」


無詠唱。


本来魔法を使うには基本的に詠唱を使う。

だが、それを無くして発動できる彼女は魔導師としても高位の存在になるだろう。


今回使用した魔法は所謂この辺りで発生した出来事の過去を映し出す魔法だ。


ほかの魔法には人の過去を映し出す魔法もあるが、それは対象が近くにいないと使えない。


魔法の光は当たりを包み、少し経つと立体的なえいぞうを映し出す。


『おい、どうすんだ?』


声が聞こえてきた。その声は酷く落ち着いている。

……肩には気を失った青年を抱えているのに。


『直接殺すわけにゃぁいなねぇな、ンなことしたら”レッド”になっちまう』


レッドというのは所謂、犯罪証明色であり、1度でも犯すと罪の重さ関係なく冒険者カードに記されてしまう。


そうなってしまうとギルドでの受付の際絶対に見せる必要があるため、依頼を受けることが困難になるし、どういう罪なのかもしられてしまう。


一応罪の重さに応じてギルドから罰(場合によっては騎士団が派遣される事もあるが)を受け、軽い罪ならばまたランクを大幅に落とされた後、依頼を受けることが可能になる……まぁまともな生活が遅れるとは思わないが。


だが、それはあくまで直接罪を侵した時のみ発動する。


ならばどうするか。


魔物のいる森に殺さず放置しておけばいい。

そうすればあとは勝手に殺してくれるから。


「ッ!!クズが……」


そう一言だけ呟いて過去を映す光を追跡する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


道中やはり魔物たちが襲って来たがそんなものに構ってる暇な無い。


青年の形をした光を追いかけるたび、どんどん青年が危険な状態になっていくことが分かる。


いま、光は人間を映すことしか設定していないため、青年の光しか見えないが、その逃げる姿からは魔物たちから逃げていることが容易に想像ができる。


と、そこで魔物がこちらへ向かって走ってきた。


確かこれはブーストボアという魔物だったはずだ。

普段はゆっくりと移動しているが、獲物を見つけた時のみ脅威のスピードで走り出す。


その衝撃で相手を殺し、止まることに成功してから戻り獲物を捕食する(まぁその時にはほかの魔物に横取りされていることが多いが)


だがそのブーストボアが走っているということは獲物がいたということだろう。そしてその獲物というのは……


「急がないと……」


幸い木々はボアになぎ倒されており視界は開けている。今はとりあえず青年を追いかけるのみだ。

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