Ⅱ-Ⅲ 金貸し屋
「……何っか最近はここら辺ばっか歩いてる気がすんな……いや、一人で歩けんのがここら辺だけってだけなんだけど……」
いつもヒナミさんに手を引かれて通るルート、ここら辺なら何とか1人でも歩けるようにはなってきた……壁伝いと言うことを含めればだが。
とりあえずこの辺り一周してまた戻ってくっかなと思ってたんだけど、この道も毎回同じという訳には行かなそうだった。
それはいつもヒナミさんがポーションを卸している孤児院の目の前を通る時に起こった。
「オイ!分かってんのか!取立てに来たんだぞ!?さっさと出せ!でないとどうなんのか分かってんだろ!」
騒々しい、尚且つ、耳障りな声が聞こえ、曲がり角から様子を見る。
「えぇ、えぇ、分かってます!分かってますから、ちょっと待ってください……」
「早くしろ!この俺が直々に来てやったんだぞ!テキパキと動くのがテメェらの仕事だろうが!!」
「はい!」
あれは……孤児院のシスターと……誰だ?なんて言うかあんまいい感じのやつじゃないな、あんまり関わりたくない、そう、自分のことしか考えてないタイプのやつだ。
「そういえば、ここには結構育ってきた獣人がいるんだってなぁ、おぉ、臭い、臭い。さっさと死んでくれればいいものを」
「ッッ……!!ただ今、お待ちしました……」
「おぉ、やっとか、ちゃんとあるんだろうな?」
今、コイツ何つった?死んでくれればいい?それはダメだろ。
つい手が出そうになったがここで俺が出ればよりややこしい事になる。ヒナミさんにも迷惑がかかるし、俺が出たところで何もできやしない、見てるしかないんだよな……
「もしこれで足りなかったら承知しねぇぞ、おら、お前ら、行くぞ。こんな汚ぇところから早く離れたい」
「ハッ!!」
ようやくあのクソ野郎とそのボディーガードらしき男たちが消えた。
それと同時に俺の足が膝から崩れ落ちた。
「うおぅ!……意外と緊張してたんだな、俺」
やっぱり人前にまともに出られるようになるにはもっともっと時間かかりそうだな……
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「手なことがあったんだが」
「はぁ、またあいつらか……」
「知ってるのか?」
孤児院で起きた出来事をヒナミさんに話したところ、そんな返答が帰ってきた。
「まぁ、一応。あそこは一応金貸し屋なんだけど、結構悪評があるところ、最初は低い利子を付けて、すぐに払えないとわかると、突然吹っ掛けてくる。それになんの証拠もないから誰も手が出せないし、面倒臭い連中」
これはまた、厄介事の匂いがしてきたな……




