ⅩⅩⅤ 事前準備
side:ヒナミです。
「……」
「…?どうしました?ヒナミさん」
リナが私に話しかけてくる。
「いや、ただ考え事」
あの時、ヒュームにやられそうになった後のことはまるで夢のように記憶がふわっとしていてよく覚えていない。
でも、それでも断片的には覚えている。
あの赤い猫。あれが……アイツが私の中に入ったと同時、まるで私が私でなくなった感じがした。
体が勝手に動き、その口は勝手にしゃべり。
その時の動きもうろ覚えだけど記憶にある。
あれが……私のだせる本当の全力?
あんな力があったら……あの人達は……
でも私も知らないスキルや魔法があった。合成魔法?
……あー!もう!分からない!一体何してたんだろうあの金髪……金髪?
あれ?私に入ったのって赤猫の姿で……?たとえアイツだとしても私は姿を見たことなんてないし……
待って……なんか記憶がおかしい……憑られた後遺症か?
少なくとも私は金髪じゃない、黒髪だから。なのに何で記憶に私の視界にちらっと金髪が入るの?
「はいドクターストーップ!!」
……
「なんで顔出したの?」
「え?そりゃやばそうだったから」
何で来たんだろう……多分コイツそうだよね……シェリー…………
「いや?何かさ、本当は顔出すつもり無かったんだけどね?後遺症出るとか完全予想外だし、色々と私にも責任がある訳よ、んでさ、この後やって欲しいこととか色々ある訳だし、だーかーら、ちょっと頼み事、代わりにそれ治すから」
……リナは……止まってる?と言うよりこれ、周りの時間が動いてないの?
「はいコレ」
なんか渡してきた……なにこれ、玉?
「これを森平に渡しといてー。あと1つ伝言を……」
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「……そんな事、させるとでも?」
「いや、してくれなきゃ困るんだけど……アレに関してはそっちのが手っ取り早いし、てかそれ以外の方法知らんし」
「なんでそんなことをするのか理由を聞いても?」
「ダーメ、知っちゃったら全部台無しだもん。でもやんないとあの人しんじゃうよ?あと、使うのは2章でだからすぐだよ?」
2章?一体何の話を……
「……絶対に助けてね……あの子を……でないと、ほんとに報われないからさ」
「さっきから一体何を……」
「ヒナミさん?」
ハッと。
リナが話しかけてくる。アイツはもう居ない。
もう訳わかんない……
「一体どうしたんですか?」
「あー、いや……ねぇ、リナ?」
「何ですか?」
「多分すぐに来客が来ると思うから、早めに入れてあげて」
「え……」
「疲れた、ちょっと寝る」
「ちょっと!?ヒナミさん!どういうことですか!?」
それから、後からリナに聞いた話だけど。
森平がここまで倒れ込むようにして来たのは私が寝てから3分後辺りだったらしい。
第一章あと少しで終わります。




