ⅩⅩⅣ 欲望の悪意
そして目を覚ました時、そこはどこかの医務室だった。
俺は比較的傷が少ないということなのか余り周りには人がいないが身体中に包帯を巻いているようなもの達の周りには1人に数名位はついている。
辺りに耳をすませ話を聞いていると、どうやらあの日から3日はたっていること、そして、死亡者、行方不明者は0名というヒュームなる魔物が現れた状況にしては全くと言っていいほど被害がないとも言える状態らしい。
ヒュームてあれか?あの気持ち悪い木の実をつけた魔物……
というかあの女の子は!?助けようとしたのにダメだったとかだったらガチで泣くぞ!……いや、今さっき死亡者も行方不明者も0だと聞いたばっかりだろ……色々ありすぎてまだ冷静になれてないのか……
しかし、やっぱり酷い状況だな……こんなことになってるなら何か手伝った方がいいか?幸い体は普通に動かせるし、そこまで今は対人への恐怖もない。
「あの……すいません、何か手伝えることってありませんか?」
「んぁ?あぁ、目覚めたのか、まぁ傷はあまりなかったからね」
傷があまりなかったってのも不思議な話だよな、だって1度体を貫かれてたし。
「手伝ってくれると言うのは嬉しいが、回復魔法はあるのか?それとも治療の経験は?今、人手不足が激しくてね、あまり誰かに指示していられるような状況じゃないんだ」
そうか……この状況だからこそ何かとは思ったが未経験だと逆に足でまといなのか……
「ほんとに、怪我人が多くてね、ポーションの供給すら間に合ってないから、手伝ってくれるという人は今、薬草を取りに行ってもらっているんだがあまり無茶をさせるのもね……」
薬草?
「ポーションを作る人はいるんですか?」
「うん、基本的にそういった人達は非戦闘員だから、戦闘には参加できない分ここで頑張ってもらってるよ」
作る人はいるのか……そういえばまだ冷静になってから使ったことは無かったけど、俺、薬草生み出せなかったっけ?
あ、あるある、薬草これで作れんのか?
……おっと、MPはやっぱ持ってかれたな……とりあえずこれを渡せばいいか。
「すいません、薬草持ってるんでこれ、使えます?」
「ん?おお!本当か!いいのか?ありがたい」
MPは……まだ大丈夫そうだな……
「まだあるんで持っていってください」
「分かった!早速渡してくる!」
まぁ流石に作れるなんてことは言わなくてもいいかな?言ったらめんどくさい事になりそうだし。
だが俺は、ここで1つ大きな勘違いをしていた。
俺の薬草は……
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「おい!何なんだあの薬草は!」
突然見知らぬ人……格好的に先程の人とおなじ治療班の人か?
「えっと、どうしました?まさかあの薬草、酷いものだったとか……」
まさかスキルで作った薬草に治癒効果は……いや、自分が使った時はあったんだからな……調薬すると効果が薄くなるとか?
「逆だ逆!一体なんだあの効果量は!高すぎるぞ!」
……まぁやっぱりそっちだったか……とは言っても今は事態が事態だから効果の高いものを渡すのは当たり前だと思ってる。
結局、その人もただ驚いたこととお礼を言いに来ただけだったので特に今回は問題なかった。
そう、今回は。
結論から言おう。
1人の冒険者があの薬草を売ってくれという話から始まった。
その時は怪我の治療を治すための寄付としてタダで渡したのだがそれがいけなかった。
その後、無料で効果の高い薬草をくれるという話が広まり、結果。
「お前の持ってる薬草を全てよこせ」
その一言で壊れた。
「おい!そんな奴に渡すくらいなら俺によこせ!」「いや、俺の方がまともに使うぞ!」「なら俺は色んなヤツらに渡してくる!渡せ!」「やめなさい!あ、えーと、その薬草、私にもくれるかな?タダで」「そいつを売れば儲けもんじゃないか?」
他にも色々あるが割愛させてもらおう。
だけど分かるだろう?自分がやったことが悪かった。
多少高くてもきちんと金銭は要求仕様すべきだった。
多少人数が厳しくても個数がないと言えばよかった。
多少不満を買っても高い効果のが殆どないと言えばよかった。
全ては自分の責任だった。
だけど森平は元々一般的な学生だったのだ。そんな交渉ごとなどパッと思い浮かぶものじゃない。
それに状況が状況なのだ、森平は何一つ悪いことはしていない。前回殺されかけた時も悪いことなどはしていなかった。なのに理不尽に迫られる。
また恨まれるのではないか。
また狙われるのではないか。
また殺されかけるのではないか。
怖い。
森平は逃げ出した。
人間の欲望ほど怖いものは無い。




