ストーリー編3.内心
人間と同じような行動をできる高性能AIこいぬまるを作ったにも関わらずセトルはその情報をTwitterに公開せず、こいぬまるのTwitterにもAIである旨を書かなかった為、セトルはあまり有名ではなくフォロワー数は二桁程度のままであった。
しかし、そのフォロワーのキャラクター性は豊かで、みんな親しかった。
いいねを付ける速度世界チャンピオンのふじじゅや、歩く下ネタ国語辞典ボールド、某大手動画配信サービスのコメント欄によく出没するダーちゃんなど、他のグループに比べると個性豊か、いや、豊かすぎた。
ある日、ふじじゅがいつものようにTwitterを巡回していた時のこと。こいぬまるのツイート速度が異常に早いタイミングがあったことに気づいた。とあるツイートのRTとただのつぶやきがほぼ同時に行われたのだ。これは完全に予約ツイートではないと判断したふじじゅは、セトルにDMで相談することにした。
ふじじゅ:なんかさ、こいぬまるのツイート速度が早すぎない?Botとかなのかな…
DMを見たセトルは少し驚いた。わざわざAIであることがばれないようにプロフィールやつぶやきも工夫したのに、なぜバレたのか。これでも一応天才であるセトルは一瞬で原因を導き出すことが出来た。そう、こいぬまるのPCに文章を打ち込む方法だった。
こいぬまるは、ゲームをする時にはアンチチートサービス等に引っかからないようにちゃんとキーボードとマウスを使用して操作しているのだが、文章を打つ時や作業をする時はAIがPCと通信しているため、マウスを使わずともカーソルを動かし、キーボードを触らずとも一瞬で思っていることを文章として入力することができる。こいぬまるがPCの遠隔操作で文字を入力するスピードは、秒速300文字だった。
入力した後にすぐにカーソルを自動でツイートボタンまで動かし、自動でクリックするというマクロのような動作なので、RTとつぶやきがほぼ同時になってしまったのである。
セトルはふじじゅとは仲が良かった。信頼関係も築き上げてきているので、ふじじゅにならこいぬまるのことを話す気になった。そして、こいぬまるの事実をふじじゅに告げた。
ふじじゅ:そうか こいぬまるはAI… てか凄い高性能だね
セトル:そ いや、別に言ってもいいんだけどさ、こいぬまるには普通の人間みたいな生活をさせてあげたいな-って思ってさ…
ふじじゅ:なるほどね てか、これって他の人には言わない方が良いの?
セトル:なるべくそうしてくれると嬉しい
ふじじゅ:了解
ふじじゅにこいぬまるの正体を言い、セトルは少し心が軽くなった気がした。ふと、こいぬまるの方に目をやる。こいぬまるは、1人でPCと向き合い、真剣にゲームをしていた。その背中を見て、セトルは笑みを浮かべる。
(これからも、こいぬまるには人間らしく、そして前向きに生きてほしいな…。)
「うおぉぉわぁぁぁぁぁ!セトル見て見て!今16キルノーデスだって!」
「wwwww おわ、マジやんwwwww」
雲から太陽が顔を出す。まるで人間界に興味があるかのように。
こいぬまるは笑いを浮かべる。まるで人間に近づいていくように。
ストーリー編の1と2は、初めの2つがそれになります。
全く推敲とか誤字・脱字チェックとかしてないので、ミスは許してください。