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第十五話 予想外の激高

 「戻ったか」


 ブレンたちが家に着くと、ちょうどハルゼンにでくわした。彼も仕事を終えたところだ。


 「お父さんただいまー」

 「ただいま戻りました」

 「ふん、死なずに済んだか」


 そう言い捨てて戻ろうとするハルゼンにブレンが待ってほしいと声をかけた。


 「なんだ」

 「荷物があるんですけど、どこに置けば?」

 「倉庫にでも放り込んでおけ。全く何を持って帰って」


 いらだたしげにハルゼンが袋をひったくる。しかしその中のものを見た彼は、門番たちと同じく驚いてブレンを見た。


 「お前これ、まさか全部一人で」

 「ええ。そんな事より、倉庫に置いておけば良いんですか?」

 「……」

 「ハルゼンさん?」

 「村のやつに手伝わせたのか?」


 ハルゼンのその声は、静かだが怒りを内包していた。


 「いや、一人で行きました。でもどうして」

 「嘘をつけ! 王都なんかでぬくぬく暮らしていやがった騎士なんかに魔物退治なんざできるわけがねえだろ!」


 ハルゼンがブレンを怒鳴りつける。三人は一斉に顔をこわばらせ、特にナナはレティをかばうように抱きしめた。


 「お、落ち着いてください。いったいどうしてそんなことを言うんですか」

 「うるせえ! だいたいそのバカ丁寧な言葉づかいも気持ち悪い! まったくポリアのやつは本当にどうしてこんなやつを……」


 ブレンの反論も待たずにブツブツと言いながらハルゼンは家へと戻ってしまい、後には三人が呆然と残された。


 「あ、あの。ハルゼンさんはどうしたんですか? もしかして、レティが何かおうちの手伝いをしているときに失敗したんじゃ……」

 「そんなはずないです! レティちゃんは一生懸命でしたよ」

 「ああ。あれは俺に怒っていたんだ。レティは悪くない」


 ナナとともにレティをなだめるブレンだったが、真鍮には疑問符が飛び交っていた。

 なぜハルゼンは、急に激怒したのだろうか。


 「なあナナ。どうしてハルゼンさんが怒ったのか心当たりはないか?」

 「ごめんなさい。私にもわからないんです……」

 「そうか……」


 娘であるナナにも心当たりがないとなると、いよいよブレンには手の打ちようがない。


 (もしかして、信用がないのは初対面だとか、実力がわからないとかだからじゃないのか?)


 もしそうなら、実力を示せば信頼されると考えていたブレンにとって深刻な事態だ。

 家長であるハルゼンの発言権は強い。今はブレンたちが居候することに反対していないが、彼が二人を家から追い出すと言えば、ナナたちは反論できないだろう。


 「ごすじんさま」


 おずおずとレティがブレンの袖を引く。声には涙がにじんでいて、今にも泣きだしそうだ。


 「心配するな。それにまだここに住み始めて二日もたってない。まだこれからだし、俺が守ってやる。だから大丈夫だ」


 そう言ってレティを勇気づけたブレンだったが、結局夕食は凍り付いた空気の中で進み、ハルゼンとブレンの間に会話はなかった。

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