第十四話 戦果物
「おっそいなぁ……あの人」
日が暮れるころになっても帰らないブレンに、門番の一人がつぶやいた。
「日暮れまでには戻るって話だったんだが……死んだか?」
「ばかな! だって一人でマサカーパンサーを二体も仕留める人だぞ!?」
二人が話していると向こうから人が二人やってくるのが見えた。日暮れの時間に出歩いているので門番たちは警戒したが、その正体はブレンを迎えに来たナナとレティだった。
「あれ? ハルゼンさんのところのナナちゃんじゃないか。どうしたんだ?」
「こんにちわー。あの、こっちにブレンっていう、私よりちょっと年上でがっしりした体つきの男の人が通りませんでした?」
「ああ。そいつなら、封鎖区域に魔物の退治に言ったきり戻ってきてないよ」
「え!? まだ帰ってきてないんですか!?」
ナナが声を上げる。ブレンは二人に対しても「日が暮れるまでには帰る」と言って家を出たのだ。にもかかわらず一向に帰ってこないブレンを心配して二人は迎えに来たのだ。
「さ、探しに行くわけには……」
「いや、無理に決まっているだろ。封鎖地区は魔物の巣窟になっているし、だいたい夜は危険だ。二人も早く家に帰った方がいい」
「そんな……あれ、レティちゃん?」
おろおろとしたナナは、レティがじっと壁を見ていることに気づいた。壁を見ながら、意識は壁の向こう側に向かっているようだ。
「どうしたの? レティちゃん」
「ごすじんさまが来ている気がするんです。もうすぐ帰ってくるような……」
レティがそう口にしたその時だった。たいまつに照らされた黒い人影が壁を乗り越えて四人の目の前に着地する。魔物が飛び出したかと門番の二人が槍を構えるが、人影は「待て! 俺は魔物じゃない」と制止した。
「ごすじんさま!」
「あれ、レティ。ナナもいったいどうしたんだ?」
人影の正体はブレンだった。体中土埃まみれで来ている服もあちこち擦り切れているが、無事に自分で立っているその姿は魔物だらけの封鎖地区から出てきたとは思えない。
「あ、あんた。生きていたのか!?」
「見ればわかるだろ? あ、クラースさんにも報告しないとな。村役場に行けば会えるか?」
「いや……もう日が暮れるから明日にしたらどうだ?」
そこでブレンは空を見上げるとレティとナナが自分を心配して迎えに来たことに気づいた。優しい二人の事だ。暗くなるまでブレンが帰らなければ心配するに決まっている。
「そうだな。二人とも迎えに来てくれてありがとう」
「ごすじんさま、お疲れさまでした」
「お母さんがご飯を作って待ってくれてるんです。早く帰りましょう!」
「ちょっと待ってくれ……よいしょッと」
急かすナナを少し待たせてブレンは封鎖地区から持ってきた布袋を担ぎなおす。するとその拍子にコロンと袋の口からこぼれるものがあった。
「なんだ?」
門番の一人が拾いあげてたいまつで照らす。
「うわっ!!」
それが魔物の骨であると気づいて門番は骨を放り投げた。それをブレンがキャッチして袋に戻す。
「悪い悪い。驚かせたか?」
「あ、あんた。まさかその袋の中にあるのは……」
「ああ。今日倒してきた魔物の骨だ」
何気ないブレンの一言に門番二人とナナがあんぐりと口を開けた。袋はブレンの背丈ほどの大きさもあり、それいっぱいに魔物の骨が入っているとなると、いったいどれだけの魔物をブレンは倒したのだろうか。
「す、すごすぎませんか!? うそ、これ全部魔物の骨!?」
「信じられねえ……マサカーパンサーの事といい、アンタいったいなんなんだ……」
皆が驚きの声を口々に発する中、レティだけは驚きや賞賛よりも、むしろ心配げな目でブレンを見ている。
「どうした? レティ」
「ごすじんさま、なんだかお疲れみたいです。大丈夫ですか?」
「……ああ。ちょっと疲れただけだ」
平気なように笑って見せるブレンだったがレティはなぜだかブレンの疲労を見抜いていた。
とはいえ、無理もないことである。タワープラントを倒すために呼び出した剣は八割の再現率。これは駐屯騎士団最強のブレンでも激しく体力を消耗する技だ。
「それより、ポリアさんが待っているんだろ? 早く帰ろうか」
「はい!」
「そうですね。じゃあ、私たちはこれで」
「あ、ああ」
三人が帰っていく。だが門番たちはブレンが大量の魔物を退治したことに驚くばかりで、返事は上の空だった。
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