第十二話 封鎖地区のタワープラント
壁から飛び降りて先に進んだブレンを待っていたのは荒れ果てた畑だった。
「これは……ひどいな」
灰色の雑草にまみれた畑である。しかも周りの民家でさえ、柱や壁を残してほとんど壊れてしまっている。まるで周りの全てが惨劇の激しさを物語っているようだ。
「駐屯騎士団は負けたって話だが……」
残念なことに、どんな魔物に襲われたのかを村長から聞き出すことはできなかった。村を守っていた駐屯騎士団は全滅し、村人にも犠牲者が出たためである。
「まずこの辺の魔物を倒していくか。このあたりを解放できればすぐに開墾できる」
ブレンが雑草だらけの畑に入った時だった。彼の足首が何かロープのような物で縛られると、そのまま強く引っ張られたのだ。
「うわ!?」
とっさにブレンが召喚した剣で縛っていたものを断ち切り畑から飛び出す。その背後で、土煙をあげながら大きな影が盛り上がった。
「タワープラント……!!」
影を見上げながらブレンが言う。プラントという名前の通り、それは巨大な植物だった。無数の茎がらせん状に絡まっているヒマワリの化け物。畑のあちこちから同じようにタワープラントが飛び出してきたのだ。
「こいつに襲われたのか。駐屯騎士団も負けるわけだ」
出てきたのは全部で四体。それぞれが花をブレンへ向けるといっせいに固いものを撃ち出した。
「剣よ!」
剣を召喚したブレンが飛んできたものを迎撃する。切り払うたびにガンガンと音を立てるそれはタワープラントの種だ。
「なんて威力だ」
種をはじくことはできたが、あまりの威力に剣はボロボロになっていた。いったんそれを消滅させるとブレンは新たに剣を召喚する。
幸いにもここは既に廃墟。威力の高い剣を召喚しても周りの迷惑にはならない。ブレンはサーヴァーを倒した時と同じ強さの魔法剣を召喚した。
「くらえ!」
輝く片手剣がタワープラントに直撃する。狙いは地面に近い部分、高威力の魔法剣がらせん状の茎にバリバリと炸裂した。
だが、その結果はブレンの予想を裏切るものだった。
「うそ……だろ……」
驚いたブレンが目を見開く。確かに魔法剣はタワープラントの茎をいくらか切り裂いていた。
しかし、タワープラントの再生力はブレンの想像をはるかに上回っていたのだ。あっという間に新しい茎が傷口をふさいでしまう。
そして再生するや否や、タワープラントは種を射撃してきたのだ。
「くそっ!」
前に駆け出してタワープラントの包囲網から脱する。畑の外ならと飛び出したブレンだったが、固い種が地面に落ちると、小さなタワープラントがあっという間に生えた。
「バカな! どうなってんだこいつら!」
ブレンが悪態をつく。タワープラントは攻撃と同時に種を吐き散らすので駆除が難しい魔物ではあるが、種が地面に着いた途端に発芽するなど彼には聞いたことがなかった。
慌てたブレンはタワープラントの苗を踏みつぶそうとした。しかし
「押し返される!?」
タワープラントの苗は集団でブレンの足を押し返してくる。そしてその時、ブレンの頭上を巨大な影が覆ったかと思うと、鉄のように硬い葉がブレンに叩きつけられた。
「あぐ……」
肺から空気が絞り出される。倒れたブレンの足にツタが絡みつくと体が持ち上がる。
そこへシュルシュルと別のツタが絡んできた。タワープラントは獲物の体を引き裂くことで根から吸収しやすくするのだ。
他のタワープラントからも触手が伸びる。荒縄のようなそれがブレンの身体を八つ裂きにしようとしたその時、ブレンの手から光がほとばしると触手が細切れになって飛び散った。
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