第二十一話 優位な攻勢
「これは……」
「諦めて投降するがいい。そんな錆びついた剣ではもはや戦えまい」
サーヴァーが投降を呼びかけるのも当然なほど、ブレンの剣は朽ち果てていた。まるで何百年も放置されていたかのような有様で、戦う事はおろかブレンが振るだけで根元から折れそうである。
「いま死体のように這いつくばるのなら、楽に殺してやるぞ?」
「ずいぶん独特な言い回しだな」
ブレンがさび付いた剣を敵に投げつける。当然のように集団の一人が剣を砕いた時、ブレンの手にはもう新しい鉄剣が握られていた。
「剣を召喚するその魔術……貴様、帯剣の騎士ブレンか」
「まあ否定はしねえよ。怖気づいたか?」
集団にわずかだが動揺が走ったことをブレンは見逃さなかった。その小さな、しかし確かな付け入る隙をこじ開けるようにブレンは低く脅しかける。
「諦めるのはお前たちの方だ。妙な魔術で俺の剣を何本ダメにしてもすぐに代わりを出せるんだからな」
「たかだか剣を出すことができる程度だ。お前たちかかれ!」
サーヴァーの号令とともに黒装束の集団がブレンに斬りかかる。その動きは集団であるにもかかわらず、恐ろしく俊敏だ。しかも、全体が一つの生き物であるかのようにブレンに迫ってくる。
対するブレンは剣を中段に構えて攻撃をさばく。剣を操り巧みに一人の懐へと剣を潜り込ませた。
(とった!)
自分の剣が敵の胴を貫く。そう確信したブレンだったが、結果は彼の予想を裏切るものになった。肉体の柔らかい感触ではなく固いなにか……おそらく革鎧にぶつかった途端、剣がへし折れてしまったのだ。
たたらを踏んでしまうブレンに真っ黒な刃が襲い掛かる。それを剣の柄で受けて跳ね返したブレンはすかさず剣を捨て、また新しく剣を召喚した。
(それなら……!!)
どうやっても剣はダメになる。そう悟ったブレンは狙いを足元へと切り替えた。おそらく彼らは黒装束の下に革鎧のようなものを着込んでいると思われたが、身軽さから察するに下半身は無防備であるはずだと考えたからだ。
「ぐぅっ」
果たしてブレンの予想は的中した。足を切り付けられたうめき声をあげて膝をついたのだ。
すかさずブレンはそいつの頭に蹴りを叩き込む。のけぞるように吹っ飛ばされ、まず一人がそのまま動かなくなった。
「まず一人!!」
続けざまにブレンは錆びた剣に代わって新しく剣を呼び出す。そのまま二人目の足を突き刺し、左手でそいつの顔を殴り飛ばすと勢いそのままに次の敵へ襲い掛かる。
その背中を一人の黒装束が狙った。最も早く、動作も少ない刺突でブレンの背後から心臓へと剣を向ける。しかし!
「バレバレだ!」
それに気が付かないブレンではなかった。彼は振り向きざまに背中を狙った黒装束に密着するとそのまま服の襟をつかんで頭突きをかまし、ひるんだところで顔面に拳を叩き込んだ。
よろめく黒装束の男。そいつをブレンは掴むと、振り回すように人数が多い所へと投げ飛ばし、また別の黒装束へと突撃する。
また足を狙うブレンだったが、敵もすぐに対応してきた。じりじりと構え、足元を徹底的にガードしている。
「あ、そう。もっと痛いのがいいんだな!?」
言うや否や、ブレンはまだ錆びていないその剣を投げつけた。黒装束がそれをはじいた直後、剣は空中で消え去り、ブレンの手にはまた新しい剣が握られる。
だが、今度は構えが違った。ブレンは剣の刃の部分を手で持ち、柄の部分をハンマーに見立てて構えていた。
そのまま打ち下ろされた一撃が黒塗りの剣によって受け止められる。するとブレンは器用にも剣の峰の部分を柄に引っ掛けるとそのままぐいと引っ張り、敵の手から奪い取ったのだ。
「歯ァ食いしばれ!」
掛け声とともにブレンは横なぎに剣を振りかぶって男の頭を強打する。重たい鉄の棒と刃を受け止めるほど頑丈な柄に殴られた男は壁に打ち付けられると、戦闘不能になった。
「……さすがに帯剣の騎士といったところか。敵ながら素晴らしいな」
十人いた黒装束のうち四人が倒されたところでサーヴァーは慇懃にブレンを称賛した。黒装束たちも一度攻撃を止め、ブレンに対して警戒してかうかつに攻めてこなくなる。
「降参する気になったか?」
ブレンが挑発する。このまま続ければ勝利できるとブレンは確信していた。だが、そんなブレンと同じほどの確信をもって、サーヴァーはブレンの命に狙いを定めていた。サーヴァーはニヤリと怪しい笑みを浮かべて言った。
「いや。君を殺す方法が見つかった」
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