第二十話 敵襲
鐘の音を聞いて真っ先に動き出したのはフィアレだった。彼女は二人に「このまま待機していて」と警告を発しながらドアへと向かう。
それと同時に、部屋のドアを開けて飛び込んでくる女性が居た。ブレンとレティを案内していたロッテルだ。
「せ、聖女様! 敵襲です!」
「わかっています。敵の数は?」
「十人ほどです! 全員が黒い装束で顔を隠し、全員がショートソードで武装しています!」
「黒い装束!? おいフィアレ。そいつらの狙いはレティかもしれない」
「どういうこと?」
ブレンは手短にレティを見つけた場所で同じような黒装束の者たちに出会ったこと、そいつらが彼女の命を狙う宣言をしていたことを説明した。
「俺が出る。フィアレはレティと一緒にいてくれ。ここなら、部屋を壁に偽装できて安全なんじゃないか?」
「わかった。こっちは部屋の中から支援するね」
「了解。聞いたなレティ。お前はフィアレと一緒にここにいるんだ」
「ごすじんさま……」
しかしレティは不安げな表情を見せていた。体が震え、顔は青ざめている。無理もない。たった今目の前で、自分の命が狙われていると断言されたのだから。
そんなレティをなだめるように彼女を抱きしめたのは、ブレンではなくフィアレだった。
「大丈夫だよレティさん。ぶーちゃんは強いから」
「で、でも相手は十人も居て……」
「ぶーちゃんなら百人の軍隊が相手でも平気だよ。ね? ぶーちゃん」
「もちろんだ。じゃあ行ってくる」
フィアレの言葉に力強くうなずいてブレンが飛び出す。彼が出陣した後でレンガに閉ざされていく扉を、レティはやはり不安げに見つめるのだった。
階段を下り終えたブレンの背後で、金属が駆動する音がした。後ろを振り返ると、階段が丸ごと天井へと持ち上がっていく。
ガコンと階段が天井へと収納されるのとほぼ同時に、ブレンの耳にフィアレの声が聞こえてきた。
「ぶーちゃん聞こえるね? 聞こえていたら右手を挙げて」
フィアレの指示通りブレンは右手を上げる。遠見の水盤という魔道具を用いることで、相手の姿を見て声を一方的にとはいえ伝えられるのだ。
「ちゃんと伝わっているね。それじゃあ……ぶーちゃん前!!」
フィアレが叫ぶより早く、ブレンは剣を手にすると目の前の空間を切りつけていた。ガキッという金属音が鳴り響き、ブレンの手に確かな手ごたえが伝わる。
「もうここまで来たのかよカラスども!」
階段のあった空間に明かりがともる。レンガのくぼみまで照らされたその空間に、黒装束の侵入者たちが居た。
その数、十人。侵入者のほぼ全員が、既に階段前に集結している。そしてその中には、聞き覚えのある声でブレンに語り掛けてくる者もいた。
「カラス……? それはもしや我々の事を言っているのか?」
「真っ黒で弱い奴に群がっているならカラスみたいなものだろ。違うか?」
「畏れ多い呼称だ。今後は私のことはサーヴァーと、我々の事はサーヴィスと呼ぶが良い」
「何言ってんだ? それより今のうちに降参しておけよ。ここは一本道だ。俺を相手にしているうちに後ろから援軍が来るぜ」
妙なことを気にすると思いつつ、ブレンは手にした鉄剣を両手で構えながら警告した。だがそのブレンの言葉に、サーヴァーはくつくつと笑いを漏らす。
「女ごときに援軍を期待するとはな。もっとも、既に全員始末してきたが」
「テメエら……」
半ばそうではないかという嫌な予感が的中した事と、その物言いにブレンは怒りを募らせた。そして確信する。彼らは人を殺すことを何とも思わない人種だと。
神殿の中には巫女や治癒術師だけではなく、治癒魔術を学ぶ者たちやたまたま治療を受けに来ただけの人もいたのだ。そんな人たちですらも連中は殺した。そう思うとブレンは剣を強く握りしめていた。
「覚悟しろよ。ここを襲ったことを後悔させて、二度とレティを狙えなくなるくらいぶちのめしてやる」
ブレンが怒りとともに啖呵を切る。ここで全滅させるという強い決意が、彼の闘志を掻き立てていた。
だが、そんなブレンとは対照的にサーヴァーはあざける様子を隠すでもなく言い放った。
「そんな錆びた剣でか?」
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