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55話〜おつかい

「ようやっと村らしくなってきたな」


「あぁ、作物が取れるようになれば大丈夫だろうとカルバンも言っていた」


 セルカとバーンダーバが村を歩きながら喋る。


「まだ魔法都市の迷宮に行かないのか?」


「うむ、スライやコリン達だけでは防衛に難があるからな」


 村の防衛は元盗賊のスライ達以外では唯一の闘気を使えるアビーの兄のコリンだけが担当している。


 それ以外の男連中の中に見回りをしている者もいるが、いざ、何かあった時に戦えるのはグルマだが多少の実戦経験のある盗賊達とコリンだけだ。


 闘気を使えるものと使えない者の間にある差はナイフと小枝程にある。


 村人の中に闘気や魔力を扱える者は他にはいなかった。


 どうやらグルマ(・・・)という魔力や闘気を操れない人間は少数派ではなく多数派のようだ。


 村を襲うのは魔物の他に盗賊もいる。


 出来たばかりの小さな村では人を攫って奴隷として売ろうとする盗賊が最も恐ろしい。


 スライのような力のない盗賊ならいいが魔力や闘気を使える連中なら20人もいればこの規模の村は全滅させられてしまう。


 ずっとゲルハルトに警護を頼んでおくのも忍びない。


 頼めばしてくれるだろう、だが、ゲルハルトは出来れば旅について行きたいようだ。


 バーンダーバが自らの剣を差し出して奴隷を買い取った。


 その行為にゲルハルトは心より感銘を受けたそうだ。


 騎士にとって剣は魂、魔王軍とはいえバーンダーバはその軍の最高幹部の地位にいた。


 そんな男が剣の代わりに得たのは自分とはなんの関わりも無い人間。


 そうそうできるものでは無い。


 ゲルハルトはバーンダーバという男に強烈な吸引力を感じていた。


「そうだな、魔法使いは戦えそうにないし」


 バーンダーバは魔法使い達の建てた掘っ建て小屋に目線を移した。


 魔法使い達は塔を建てることなどそっちのけでずっとあそこに籠って何かしらの実験に明け暮れている。


 カルバンは魔法使いは皆傲慢だと言っていた。


 実際に彼らは村人を見下している風はある。


 が、ジャスハン達はこの2ヶ月の間にさらにフェムノの事を崇めるようになった。


 今ではまるで生き神のような崇拝ぶりだ。


 魔法使いにはどうやら冒険者となって戦闘に特化した魔法を使う者と。


 ジャスハン達のように研究開発に特化した者がいるようだ。


 ジャスハン達は後者、全く攻撃魔法が使えない訳ではないらしいが「そんな物は頭の悪い魔法使いの物だ」っと言っていた。


 どうやら、そこにも派閥のような物があるらしい。


「うむ、彼らには金銭面で随分と助けて貰ったからな。 それ以上の事は求めては悪い、それに、彼らも戦う事は得意ではない。 せっかく来てもらったのだ、彼らもしっかり護らなくてはな」


 魔法使い達の小屋を見ていると中からカルバンが出てきた、セルカとバーンダーバを見つけるとこちらに向かって歩いてくる。


「どうした?」


「あぁ、デコイスが魔法具に使いたいから魔法石を買ってきて欲しいと頼まれたんだ。 俺はもうすぐここに行商が来るから離れられん、すまないがセルカに頼めないか?」


 カルバンはダイナスバザールの知り合いに行商に行く際にここを通るように頼んである。


 今は買い出しなどをロゼに頼っているが、いつまでもという訳にはいかない。


 それはカルバンにしてもそうである。


 ずっとこの村にいる訳では無い。


 自分達がいなくなってもいちいち他所の街に買い出しに行かなくてもいいように行商を頼んだ。


 ここがある程度大きな村になれば商人が支店を構えるかもしれないがそれはまだまだ先の話だ。


「どこへ買いに行くんだ?」


 バーンダーバが聞いた。


「魔法石があるとすればラスレンダールくらいだろう」


「流石に専門外だぜ、魔法石の相場なんて俺は知らないぞ」


 セルカは手をひらひらと振って見せる。


 相場を知らなければふっかけられても分からないし、物の善し悪しが分からなければ粗悪品を掴まされるかもしれない。


「そうか、どうするか・・・」


「そんなにすぐに必要なのか?」


「デコイスだけでなくてな、フェムノも『面白いものが出来そうだから急ぎ頼む』と言っているんだ。 この間に作ったスクロールも良い値で売れたからな、彼らの頼み事は出来るだけ融通した方がこの村の為にもなる」


「魔法石とはどういう物だ?」


「魔力を蓄えておける石でな、魔法具にはほとんど全てそれが嵌め込まれているんだ。 魔力を持った者に魔法石に魔力を込めておいてもらえば魔力のない者でも魔法具を使う事が出来るんだ」


「ほう、魔石によく似ているな」


「それの事だ、そういえば以前に市場に随分と出回ったのは魔界産の魔法石だったな」


「そうか、それなら私が多少の善し悪しは分かる。 だが、やはり相場となると分からんな」


「それなら欲しいのはこれぐらいの大きさだ」


 カルバンが親指と人差し指で円を作る。


「色は一般的な紫で良いらしい、相場は金貨50枚〜60枚だ。 それを3つほど買ってきてくれ」


 そう言いながらカルバンは金貨の入った袋を手渡す。


「分かった、セルカ、一緒に来てくれるか?」


「あぁ、いいぜ」


 2人はロゼに移動をお願いして乗り込んだ。

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