51話〜盗賊
村人のいる場所まで戻ると村人達に囲まれてむさ苦しい男が10人ほどいた。
全員が縄で手足を縛られて、苦々しい顔で座っている。
「なんだこいつら?」
セルカが男達を見て呟く、盗賊にしても装備が粗末だ。
「うむ、襲いかかってきたので無力化しておいた。 沙汰はバン殿にお任せしようと思ってな」
セルカの呟きにゲルハルトが答えた。
盗賊達は大体顔に殴られたような痕がある。
「縄は彼らが持っていたものを使わせてもらった」
自分達が持ってきた縄で縛られたらしい、それを言われて盗賊達の顔はにがり切っている。
「なにがあった? 詳しく聞かせてくれ」
「攫って奴隷として売るつもりだったんだろう、こんな所に武器を持たない人間がこれだけいたら狙って下さいと言ってるようなもんだからな」
カルバンの答えにバーンダーバが眉を顰める。
「ノインドラの衛兵に突き出そう、多少の金になるはずだ」
「誰も怪我人はいないのか?」
村人を見渡してバーンダーバが聞いた。
「はい、ゲルハルトさんがすぐに気付いてあっという間に倒してしまったので」
近くにいたカリフが答える。
「そうか、良かった。 お前達」
バーンダーバが捕まっている盗賊に近づいていく。
「・・・」
盗賊は誰も何も答えない。
「仕事をやろう、これから村を作ろうとしているんだ。 一緒に来ないか?」
「んなっ!? 何言ってんだバン!」
カルバンが悲鳴のような声を上げる。
盗賊も驚いて目を見開いている。
「私も魔界では彼らと同じようなものだった、魔王様に拾って貰うまではな。 他人から奪って生きていた、それ以外に方法がなかったからだ」
カルバンを制するように言ってもう一度盗賊達に向き直る。
座る盗賊に目線を合わせるように屈む。
「バン、流石に反対だ。 お前の言うように仕方なくやっている奴もいるかもしれないが、好きでやってる奴もいるんだぞ! 村人も村の中に盗賊がいたんじゃ安心できんだろう!」
カルバンがバーンダーバの肩を掴む。
「いや、彼らは好きでやっているわけじゃないだろう」
「何故わかる?」
「お前達はグルマだな?」
カルバンには答えずにバーンダーバが盗賊を見つめて聞いた、盗賊達はその視線を睨み返す。
「だからなんだってんだ!」
バーンダーバが見つめる盗賊が吐き捨てるように答える。
「好きで盗賊をするような者なら大抵が力を持っている、力を振りかざして生きるのが好きな連中だ。 そんな者はどこにでもいる」
盗賊の目をまっすぐ見つめ返して話す。
「お前達は力を持っていない、それなのにその生き方はどう考えてもキツいはずだ。 したくてしている訳じゃない、違うか?」
「それはそうかも知らんが・・・」
カルバンがバーンダーバの肩を掴む手の力を緩める。
「仕事が無いからこんな事をしているんだろう、仕事さえあればしなくていいはずだ」
カルバンはバーンダーバの言葉に何も言えなくなった。
沈黙が続く。
「・・・ あぁ、お前の言う通り、ここにいる連中は全員グルマだ」
盗賊の1人が答えた、リーダー格と思しき1番ガタイのいい男。
バーンダーバに答えた以外の盗賊は顔を伏せた。
「行き場所がなくて街で乞食をやってた連中を掻き集めて俺が盗賊の真似事を始めたんだよ」
「そうか、もう一度聞くが、我々と来るか?」
「・・・ 全員の無事は約束してくれるのか?」
「勿論だ」
「・・・ 仕事はなんだ? いや、なんだっていい。 見逃してくれる上に仕事をくれるんだ、なんだってやろう。 お前らも文句はねぇな!」
盗賊達は口の中でもごもごと返事をした。
「決まりだな」
バーンダーバは笑った。
カルバンがため息をついて首を左右に振っている。
「さぁ、日が暮れる前に狩りを済ませよう。 盗賊の中から3人ほど私についてきてくれ。 ロゼ、森まで移動を頼めるか」
「あいよ」
姿を変えたロゼを見て盗賊達から悲鳴が上がる。
「縄を持ってきてくれ、今度は獲物を縛るのに使うからな」
バーンダーバはそう言って笑いながらロゼの背中に乗り込んだ。
リーダー格の男が自分の左右にいた盗賊に合図してロゼに近づいた。
「・・・ 俺達も乗って大丈夫なのか?」
《さっさと乗んな、早くしないと咥えて運ぶよ》
いつか聞いたことのあるセリフをロゼが言う。
「・・・ 俺はスライだ、よろしく頼む」
乗り込んだ盗賊のリーダーが名乗る。
「そうか、よろしくな。 私はバンだ」
全員が乗ったのを確認するとロゼが空へと飛び立った。




