5話〜魔王軍の知将と五千魔将
昨日、調子にのって2話投稿しています。
読まれていない方はそちらからお楽しみ下さいませ。
「具体的にはどうするつもりですか?」
「分からない、先ずはそこからだな。 食料を大量に手に入れて恒久的に魔界へと送り続ける、どうすればいいか・・・」
「平和的に、ですよね?」
フェイがバーンダーバの顔を伺うように見る。
「勿論だ、時の大神云々もあるが。 私自身、そんなに戦いが好きではない」
「私にも手伝わせて貰えませんか?」
バーンダーバは顎に手をやった姿勢にまま、フェイをみて固まった。
「あの、邪魔にならないように気をつけますので」
何も言わないバーンダーバにフェイは断られるかと思った。
「いや、邪魔になどはならんが、なんの得にもならないぞ」
「バーンダーバさん言ったじゃないですか、私を助ける時、同族を見殺しにできないって。 私にとってはバーンダーバさんは同族で命の恩人ですから、損得とかじゃなくて力になりたいんです」
断られなかった事に安心してにっこりと笑って話すフェイにバーンダーバは自然と顔がほころんだ。
「そうか、では、少しの間だけでも世話になろう。 よろしく頼む」
バーンダーバはフェイに手を差し出した。
フェイは嬉しそうにその手を握る。
「はい、で、とりあえずはどうしますか?」
またバーンダーバは考えるポーズに戻った。
やることが出来たとはいえ、バーンダーバには何から手を付けていいかが分からない。
『それなら、人の多く居るところに行くべきではないのか?』
暫く考えているとフェムノがさも当たり前というように答えを出した。
バーンダーバとフェイが同時にフェムノを見る。
「なにか、知恵を貸してもらえるのか? 聖剣フェムノよ」
『知恵と言うほどではないが、食料を大量に手に入れるには作るにしても買うにしても金がいる。 金があるのは人のいる所だ、まずは大きな街に向かうのが良いだろう』
バーンダーバとフェイは顔を見合わせて笑った。
『何を笑っている』
「いや、なんでもない、ではもう今日は眠るとしよう。 夜明けと共に出発だな」
「はい、なんだか楽しみですね」
フェイは幼く見える無邪気な笑顔を浮かべる。
「あぁ、私も楽しみだ」
バーンダーバは横になり、星空を見上げながら心の中で亡き魔王に誓った。
魔界を魔王様が描いていた物に変えてみせると・・・
===知将・ランバール===
魔界にある、今は亡き魔王ダーバシャッドが拠点としていた魔王城。
その魔王城の一室、かつては魔王と四天王、そして魔王軍の頭脳と言われたランバールが集まり、日夜一緒になって頭を悩ませていた会議室。
今はそこにランバールだけが座って頭を悩ませていた。
「どうすればいい?」
ランバールは誰もいない大きな円卓の前に1人で座り、ボソリと呟いた。
魔王が倒れ、四天王の内3人までもが討たれた。
本来なら唯一生き残っていた四天王筆頭・バーンダーバが生き残った魔王軍を率いるはずだった。
だが、その男はいない。
魔王が討たれて現界にいた魔族の全員が魔界へと強制的に転送されたのにバーンダーバは1ヶ月も姿を現さなかった。
その上、魔王が討たれた時にいなかった事でバーンダーバの魔王軍での立場は非常に弱くなっていた。
元々、他の四天王の内3人が魔王として既に魔界に君臨していたのに対してバーンダーバは現界に攻め入る時に四天王筆頭として魔王に大抜擢を受けてその座についた。
勿論、他の四天王はバーンダーバの実力を知っている。
バーンダーバはたった1人で現界と魔界を合わせて8種しかいない原初の竜、その中の最強の龍を相手に「参った」と言わせた伝説を持つほどの男だ。
それを知る者は少ないが・・・
さらに、元々が戦闘を好まないという魔族にしては珍しい穏やかな気性も相まって魔王軍内での人気は数少ないバーンダーバ直属の配下以外には非常に低かった。
色々な事が重なり、本来なら強い者に従うはずの魔族がバーンダーバには従わなかった。
それを分かっていたランバールはバーンダーバを半ば追い出すような形で魔王軍から遠ざけた。
それは、争いを好まないバーンダーバを思っての事でもあった。
もしも、バーンダーバを魔王の椅子に座らせるならば他の者にその力を示す為に争乱の中に身を投じねばならない。
バーンダーバならやってくれるだろうが、ランバールは友であるバーンダーバにそんな事をさせたくはなかった。
そして、ランバールは頭を抱えていた。
このままでは魔界がまた戦乱の中へと逆戻りだ、むしろ、四天王の内のバーンダーバ以外の3人が納めていた三大列強と言われた時代よりも悪いかもしれない。
魔王の、魔界を平和に、せめて貧困から少しでも救いたいという思いを聞いて魔王軍に入ったランバールとしてはどうしてもそうならないようにしたいが・・・
バタンっと乱暴に会議室の扉が開かれた。
「ここにいたかランバールさんよぉ」
入って来たのは現魔王軍において最も戦闘力が高く、あまり高いとは言えないおツムを首の上に載せた男。
五千魔将・バドカーゴ。
「どうしたバドカーゴ、何か用か?」
「アンタに用はありませんねぇ、だから来たんですよ、ランバールさん」
この男は自分が賢いと思ってこういう思わせぶりな口調で話す。
今は余裕が無い分、ランバールは露骨にイライラした。
「用がないなら出ていってくれ」
「出ていくのはあんただよランバール、あんたは魔王軍に必要ない、用が無いんだよ」
「なに? どういう意味だ?」
ランバールはバドカーゴを睨みつけた。
「簡単な話だ、弱い癖にいきがって上に立ってんじゃねぇよ。 魔王様にゴマすって今の地位までのし上がったザコが! 目障りだから出ていけと言ってるんだ」
ランバールは目を瞑った、こうなる事は予想がついていた。
強い者に従う魔族にとっては頭脳でのし上がった自分のような者は最初から反感を持たれていた。
すっと目を開けてバドカーゴを見る。
「分かった、私は出ていくとしよう。 ところで、バドカーゴ殿はこれからこの魔王軍をどう動かすつもりか聞かせて貰えないか?」
ランバールは立ち上がって扉に向かい歩きながらバドカーゴに尋ねる、その口調は実に穏やかだ。
「勿論、俺様が率いてもう一度現界に攻め入るまでよ。 俺なら必ず現界を支配してみせる。 魔王様のやり方はぬるすぎたのさ」
バドカーゴは口を歪めて醜悪な笑顔を浮かべた。
「そうか、では私は魔界の宿願が果たされるのを離れた所から願っているとしよう」
そう言ってランバールは足早に去った。
あの四天王を従えた魔王ダーバシャッド様がなし得なかったと言うのにあんなバカが出来るはずがない。
その上にあのバカはこれから1万の魔族の王になる為に魔界のあちこちで戦火を撒き散らすだろう。
ランバールは考えていた。
(必要だ)
(誰よりも強く、賢い魔王が)
(不死身の魔王が・・・)
お読みいただきありがとうございます!
もしも続きが気になる方がいらっしゃれば感想欄にて
「読んでやるから今日も2話投稿しろよ」
っと言ってくださいませ。
載ると思います。
待ってます。
無かったら残念ですが、残念ですが。
明日の朝の8時頃に投稿致します。
残念ですが。