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17話〜赤龍の王・ロッソケーニヒ

「光の屈折率を捻じ曲げて隠していますがここに入口があります」


どういう事か分からずに岩壁を前に固まっているフェイとバーンダーバにロスベールが説明を付け加える。


「なるほど」


そう言ってバーンダーバがなんの躊躇いも無く壁に手をつけようとすると抵抗も無く手が岩肌をすり抜けた。


「不思議だな」


そのままバーンダーバは岩肌に体ごと入っていった。


フェイは相変わらず固まっている。


「ご安心を、不安であれば手を貸しましょうか?」


ロスベールが手を差し出した。


「えっと、大丈夫です。 頑張ります」


おずおずと岩肌の前に立ち、そっと手を出すと岩に触れることなく手が入っていく。


フェイは目を瞑って1歩を大きく踏み込んだ。


恐る恐る目を開けるとそこは巨大な王宮のような空間だった。


天井が無く、空が見えていた。


「なにこれ、どうなってるんだろう・・・」


「魔法で空を映し出しています、擬似的な物なので一定の間隔で同じ空が映されていますが」


天井を見て独り言のように呟いたフェイの言葉に答えたのはいつの間にか横にたっていたロスベールだった。


「凄いですね」


「お褒めに預かり光栄です」


バーンダーバは少し先に行った場所で周りをキョロキョロと見回していた。


彼の周りには胸に手を当てた男女が整列して腰を折ってお辞儀をしていた。


服装はロスベールと同じ物だ。


「すごいな、レッドドラゴンはこんな物を作れるのか!」


「いえ、作ったのは入口と天井だけでございます。 城の造りは全てドワーフの物です」


ロスベールが答える。


「そうか、ドワーフか、ここにはドワーフも一緒に住んでいるのか?」


「いえ、我等が始祖、闘争の龍(アグレスドラゴン)様がドワーフから奪った物で御座いますから。 その時にドワーフは皆去りました」


「なるほど、何処へ行っても乱暴な男だ。 まぁ、私が言えた義理では無いな」


バーンダーバは苦笑いを浮かべて首を左右に振った。


「参りましょう、我等が王がお待ちです」


お辞儀している男女の横を通り進んでいくと巨大な階段があり、そこを登ると美しい装飾の施された巨大な両開き扉があった。


その前にロスベールが歩み寄る。


「王よ、魔弓のお方をお連れしました」


《通すがいい》


地響きのような声が聞こえ、扉が開かれると奥に巨大なレッドドラゴンが体を丸めている。


入っていくと見上げるような広い空間に変身する前のロスベールの1.5倍はありそうな巨大なレッドドラゴンの全容が見えた。


《我が父、アグレスドラゴンを敗北せしめた魔弓よ。 お初にお目にかかる、吾輩がアグレスドラゴンの第一子にしてレッドドラゴンの王。 赤い鱗の王(ロッソケーニヒ)である》


ロッソケーニヒは地響きのような声で喋る。


「初めまして、私が魔弓のバーンダーバです。 こちらはフェイ、私の旅の連れです」


《うむ、して、何用でこのレッドドラゴンの城を訪れたのか伺おうか》


ロッソケーニヒはどことなく威嚇する様な声色だ。


「あぁ、用事と言われれば特に無いのだが。 私は色々とあって現界で冒険者をしていてな、すると依頼書にレッドドラゴンの卵を取ってくるという物があって。 旧友であるアグレスドラゴンの子供であるレッドドラゴンに会ってみたくて来たのだ」


・・・


・・・・・・


《ふはははははっ!》


暫しの沈黙の後にロッソケーニヒは笑った。


《旧友か、妙なことを言う。 我が父、アグレスドラゴンが魔弓殿の事について我らに伝えた時に言っていたのは〈奴には絶対に手を出すな〉だった。 死滅させられたくなければ、という言葉を添えてな》


決して面白いと思ってはいない口調でロッソケーニヒが話す。


「なんと、そんなふうに言ったのか。 穏やかでは無いな、私はアグレスドラゴンの事は7日7夜戦った戦友だと思っていたが」


バーンダーバは少し不服そうな顔をする。


《もうそんな事はどうでもよい、それで、吾輩の卵を欲してやって来たという訳か?》


「それはついでと言うか、切っ掛けなのだが。 貰えるのか?」


《すまないが、卵は遠慮して貰いたい》


「そうか、まぁ、私もどうしても欲しい訳では無い」


《ところで》


そこでロッソケーニヒはフェイの方に向かって鎌首をもたげるように視線を向けた。


フェイが身を固くする。


《そなたの背負う剣は一体なんだ? 凄まじい気配を感じるが・・・》


ロッソケーニヒが目を細める。


『ほぅ、分かるか。 我は聖剣フェムノである』


フェムノは喋る前に喋りかけられて嬉しそうに答えた。


《なにっ! 聖剣だとっ!!》


その言葉を聞いてロッソケーニヒがフェイを睨みつけた!


フェイは小さく「ひっ」と悲鳴をあげた。


ロッソケーニヒは「ぐるる」と威嚇する様に喉を鳴らす。


《貴様ぁ、貴様が聖剣の勇者か・・・》


怨みの篭った声だ・・・


《何故、吾輩の元へと訪れなかった! 吾輩は貴様に加護を与える為にこの世に生を受けたのだ! 答えよっ!! 返答次第では噛み殺してくれる!!!》


ロッソケーニヒの言葉が空間に響き渡る。

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