1話〜四天王筆頭・魔弓のバーンダーバ
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「これはこれは、四天王筆頭・バーンダーバではないか、今更何をしにこの魔王城へ現れた?」
そう言ってバーンダーバを見るのは魔王の右腕、戦闘力は無いが、その明晰な頭脳で魔王の側近を務めた男。
知将・ランバール。
「ランバール、魔王様が討たれたと聞いて来た。 自分の目で見るまでは信じられん」
バーンダーバの言葉にランバールは冷ややかな視線を向ける。
「そうだ、魔王様は討たれた。 貴様が迷宮に籠っている間にな」
ランバールのその目はまるで、無能な役立たずを蔑むような目だった。
「そんな言い方は無いだろう、私は魔王様に言われた通りに勇者が聖剣を取りに来るのを阻止する為にあの迷宮にいたんだ!」
「あぁ、そうだったな。 立派立派、見事に聖剣を護ったじゃないか! はぁーはっはっは」
ランバールは手を叩いてバーンダーバを馬鹿にしたように笑う。
「ランバール、私を馬鹿にしているのか」
魔力がバチバチと爆ぜながらバーンダーバの体から溢れ出した。
「ははは、俺を殺すか? お前なら簡単だろうな、殺るがいい、殺れよっ! そして気がすんだらとっととこの魔王城から失せろっ!! この役立たずがっ!!」
ランバールの凄まじい剣幕にバーンダーバは圧されるように魔力を引っ込めた。
「すまなかったランバール、だが」
「もういい、何も聞きたくない。 失せろ、そして、2度とここへは来るな。 貴様は魔王様が討たれた時、あの場にいなかった。 四天王筆頭である貴様がいれば違っただろう・・・ もしかしたら、魔王様は討たれなかったかもしれない。 あぁ、こんな話に意味は無い。 失せろバーンダーバ、迷宮にでもまた籠るがいい。 魔王軍に、もう貴様の居場所は無い」
ランバールはバーンダーバの方を見ずに力無く、呟くような声で言った。
バーンダーバはなにも言わないランバールになにか言おうと口を開きかけたが、ランバールの表情を見て、下を向いて諦めたように首を振った。
ランバールもまた、自分と同じように魔王様が死んだことに心の整理がついていないのを感じ取った。
そして、バーンダーバはなにも言わずに部屋から出た。
魔王城の暗い廊下を歩いていると前から見知った男が歩いてきた。
「おやおや、こいつは驚いた。 四天王筆頭のバーンダーバ様じゃないですか」
嫌らしく笑うその男は、魔王軍において戦闘能力は四天王を除けば最強と自他共に認める猛者。
五千魔将・バドカーゴ。
「いつ洞穴から出られたんで?」
挑発的な下卑た笑いを浮かべている。
「魔王様が崩御されたと聞いてな」
「それにしちゃ随分と遅いお出ましですねぇ、もう、魔王様が亡くなられて1ヶ月以上にもなる」
バーンダーバの事を兄のように慕い、尊敬の眼差しを向けていたバドカーゴが今は恨みを湛えた目でバーンダーバを見据えている。
「あぁ、」
「その聖剣をこちらへ渡してもらいましょうか。 それに、四天王筆頭の証である幻魔剣・ヘルカイザーもね。 もう誰もあんたを四天王筆頭なんて認めちゃいない」
バドカーゴが聖剣を取ろうと伸ばした手首をバーンダーバが鷲掴む。
バドカーゴの顔が痛みで薄ら歪んだ。
「コレは、私が魔王様から勇者の手に渡らぬよう護れと言われた物だ。 私が魔王様の命令を違えることは無い、魔王様が崩御されたとてな」
それは最早ただの意地だった。
バーンダーバにとって聖剣は敬愛する魔王の最後の命令を成し遂げた証と言えた。
聖剣を持っていれば魔王の命令を護る忠実な下僕であるという証明。
それを手放す事は今はまだバーンダーバには出来ない。
「それに、この幻魔剣は四天王筆頭の証明ではなく、魔王様が私に祝いの品として下賜された物だ。 私にとって命よりも大事な物、渡すわけにはいかんっ」
バーンダーバが投げるようにバドカーゴの手を放した。
「くっ、いつまでも自分が最強だと思ったら大間違いだ!! 俺はアンタが迷宮に籠りっきりの間も最前線で戦い続けた! それが証拠に俺は生き残り、アンタ以外の四天王は皆死んだ! 四天王筆頭なんぞ! もう過去の話だ! 肝心な時にいない四天王筆頭がっ!! お前なんぞ何の役にも立たんわっ!!」
バーンダーバはバドカーゴの叫びを背中に聞きながら魔王城を去った。
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バーンダーバが魔王城を歩いている時、彼を見た者達は聞こえるようにこれみよがしに彼を罵倒した。
「見たかよ、バドカーゴ様に気圧されて逃げるように歩いて行ってるぜ」
「ふん、空気男が。 現界に行ってアイツが何したってんだ?」
「はっ、戦わないのに四天王筆頭様か。 他の四天王は皆、勇者と激戦を繰り広げて死んだってのに。 【ミスターいたんですか?】って渾名がぴったりだな」
「洞窟のカビくせぇな、一生洞穴で剣のお守りしてりゃあいいのによ。 【案山子】野郎が」
魔界統一に死力を尽くして共に戦い、人間の住む現界に共に攻め入った戦友達の冷たい視線と言葉にバーンダーバは肩を落として魔王城から去った。
その手には自分が勇者から護った聖剣が握られていた。
その聖剣が憎くもあり、だが、今となっては魔王と自分を唯一繋ぐ物のようにも思える。
自分の役目は一体なんだったのか?
勇者は聖剣など必要とせずに我が魔王を討ち取った。
あの暗い迷宮の奥で聖剣を護っていたあの月日はなんだったんだ・・・
「くっ、私はなんだ? 一体なんの為に存在していたんだ・・・」
焦点も定まらぬままにバーンダーバは長い月日を歩いた。
それは、季節が移り変わる程の時間だった。
荒野を宛もなく歩き、とうとうバーンダーバは襲いかかる焦燥感に立っているのも億劫うになりその場に座り込んだ。
こんな物を護らずに魔王様の傍にいればよかった・・・
聖剣を睨むでもなく虚ろな目で見つめる。
バーンダーバの胸中は後悔ばかりが溢れていた。
「魔王様、愚かな私をお許しください」
『お主は悪くない、立派に我を勇者に渡さずに護り抜いたではないか』
「馬鹿な、勇者はハナから聖剣など無くとも魔王様を討ったのだ。 聖剣を護った事になんの意味もない」
『だが、もしも聖剣である我が勇者の手にあればもっと早く魔王も魔王の配下の四天王も討たれていたはずだ』
「たらればの話に興味は無い、私は・・・」
ん?
私は誰と喋っているのだ?
バーンダーバが不意に固まった。
『我だ、お主の持つ聖剣だ』
視線を落として聖剣を見る、コレか? コレが喋っているのか?
バーンダーバは聖剣を目線まで持ち上げて見つめる
『我はフェムノ、聖剣に宿る、まぁ、アレだな。 かつてはお主と同じように魔族と呼ばれていた存在だ、今はなんの因果か聖剣などと呼ばれているがな、かははははははっ』
・・・
・・・・・・
『おい、黙るな』
聖剣のツッコミが荒野に虚しく響いた。
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