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モブ王女とヒロイン

「ジオ様は私をえらんでくれる。だって私はヒロインだもの。そういうシナリオ…」


そう呟くローズを憐れな目で見つめる幼馴染のトム。


「ねえ…ローズ、ローズが好きだったかぼちゃのパンケーキを持ってきたよ。一緒に食べようよ…」


どんなにそばにいても、話をかけても彼女は振り向いてくれなかった。


フと、前を見ると隣国である姫君のジャスミンとタイガーが現れローズに話かける。


「え、あ!ジャスミン様タイガー様!ごっごきげんよう!」


トムは慌てて挨拶をするが、隣にいるローズはジャスミンを見て鼻で笑った。


「何?攻略対象者であるタイガー様を連れてきて見せびらかし?」


「…お兄様と、ローズさんの連れの方、席を外してくれるかしら?」


タイガーはジャスミンに何か言っていたが妹には逆らえず、トボトボと何処かへ行き、トムも頭を下げてこの場から離れた。



「…何なの?あんたといい、あの悪役令嬢がいけないのよ!」


「もう一度いうわ。ここはゲームの世界ではないのよ。本来お兄、…ジオ様も私も貴女も前世の記憶を持っているなんてあり得ないけれど、ここはゲームの世界に似ている別な世界よ」



「…あの悪役令嬢は役立たず。どうして、ジオ様は私を選んでくれないの…クロ様もタイガー様もライラ様、レイン様、全員よ!!!私はヒロインなのに!」



「…ねえ、たしかにあのゲーム、私も好きだったよ。大好きな声優さんの声と絵柄もクオリティ高くて好きだった。貴女と同じく、クロ様に会うと、ゲームの中のクロ様と錯覚してしまうときもあるわ。


でも、貴女も私も皆んな今この世界に生きているわ」



「…私、貴女みたいなモブ王女、嫌いよ」


少しため息をついてキッと睨み返したジャスミンは

「私もアンタみたいなヒロイン嫌いよ。

いい?最後の忠告よ!これ以上お兄様やメアリー様周りにいる人達に関わらないで!」


そう言い放ち、ジャスミンは去っていった。



「…私は悪くないわ…ヒロインだもの。愛される存在、王子様に愛されて、そして、この国のお妃になるシナリオだもの……


悪役令嬢メアリー、あの女が、邪魔なのよ。あの女が…」



ローズは虚ろな目をしながら、ドレスの準備をしなきゃ、とぶつぶつと独り言を言っていた。






「仮面舞踏会はジオ様と私の愛を育むイベントだもの」








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