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転生王女と天才令嬢の魔法革命【Web版】  作者: 鴉ぴえろ
第2章 転生王女と御伽話の怪物
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第16話:事態は未だ停滞の中

 スプラウト伯爵家から帰って来た夜、私は自室で腕を組んで頭を悩ませていた。

 ナヴルくんの話を聞いた印象では、やはりアルくんを中心としたレイニ嬢への思慕が暴走した結果なのかな、と考えられる。そこにレイニ嬢の思惑がないような気もする。まだ確定とは言えないけれど。

 今まで聞いてきた印象から考えると、レイニ嬢が何かを企んでるとは考えにくい。つまり今回の一件でのアルくん達の失敗は本人達にある事になる。こうなるとアルくんがこの失態から評価を覆すには自力で持ち直すしかない。


「……大丈夫かな、アルくん」


 正直、アルくんには頑張って貰わないと非常に困る。私に王位継承権が回ってきても凄く困る。どう足掻いても国を荒らす未来しか見えない。

 それはそれとして、レイニ嬢が何の思惑も持って無いってなると彼女も言ってしまえば巻き込まれた側だ。これだけの騒ぎになった以上、立場も思わしくない事になってる筈だ。


「んー……一度ぐらいは直に見てみたい、かな」


 八割程度はレイニ嬢への疑いは私の中で消化し終わった。ナヴルくんは誰かに思考誘導を受けているようにも思えなかった。となると、問題の優先順位が上がるのはアルくんだ。

 アルくん、色恋沙汰でこれからも判断が狂い続けるようなら困った事に私が王位に就かなければいけなくなる。それはゾッとする未来だ。私は王様なんてものにはなりたくない。しかも前例にない女王など。


「私は、ただ気楽に魔学を研究したり、魔道具を開発する人生を送りたいだけなのになぁ」


 思わずぼやいてしまう。この不本意な状況は汚泥が纏わり付いて来るようで気持ち悪い。さっさと寝てしまおうかとも思ったけれども、今日は妙に頭が冴えてしまっている。

 この思考の隅を掠める引っかかりはなんなんだろうか。自分が女王になる可能性が出てきたから? どうしてこんなにも事件の中枢にいた人達がどんな風に考えていたかなんて知りたがる? 引っかかる。そう、まるで理論も根拠もない直感めいた……――。


「――アニス様、まだ起きていらっしゃいますか?」


 思考に耽っていると、ノックの音と共に扉の向こうから聞こえてきた声に目を丸くする。小走りで扉に駆け寄って開ければ、すでに寝る準備が終えたユフィが立っていた。


「ユフィ? どうしたの?」

「少しよろしいですか?」

「構わないよ、どうしたの?」


 ユフィを部屋に招き入れて来客用の椅子に座らせる。スプラウト伯爵家でのやりとりを一瞬頭に過らせたけれども、すぐに露と消えた。


「何か飲む? お茶ならすぐ出せるよ?」

「では頂いても?」

「わかったよ」


 私の部屋には私がすぐにお茶を飲めるように魔道具一式が用意されてる。本職であるイリアの淹れるお茶には敵わないけれど、お手軽にお茶を飲めるので気に入ってる。

 尚、同型の魔道具は父上も自分用に寄越せと言ったので渡してる。安全性の確立と量産の目処が立ったら貴族に、そして平民の間にも広がるようになるかもしれない。その日を思えば少しだけ待ち遠しい気もする。

 お茶の用意を終えて、ユフィに勧めてから私も着席してお茶を飲む。


「それで、どうしたの?」

「アニス様は今日はどちらに出かけてたのですか?」


 ユフィが真っ直ぐに私を見ながら問いかけてきた。私は自分で用意したお茶を飲みながら一呼吸を置く。

 さて、どうしたものかな。ユフィに学院周りの話を聞いていたのを話すべきかな? 話して嫌な気分にならないかな。どう気を使ったら良いか考えて……私は素直に話す事にした。本人が関わる問題だから、どうあっても関わりを断とうとも断ち切れないだろうし。


「スプラウト伯爵家に。ナヴルくんに会って来たよ」

「ナヴル様にですか?」


 ユフィが少し驚いたような顔をしてから、複雑な表情へと変える。ナヴルくんの話題はユフィにとっては気持ちの良い話題ではないだろう事はわかっていたので、そこはあまり気にしない。


「色々とね。何を考えてたのか、思ってたのか。そこに何か陰謀の手引きがあったのかとか探ってみようかな、って」

「アニス様が自らですか?」

「王位継承権が転がり込んで来たしね、今回の件は放置するのはどうにも釈然としなくて。最初はスプラウト騎士団長に事情を聞いてたんだけど、本人にも話を聞きたくてね。何かどうにもひっかかるんだよね」

「……疑問は解消されましたか?」

「八割ぐらいは?」


 そう言って、また一口お茶を飲む。ユフィは沈黙していたけど、すぐに顔を上げて問いを投げかけてきた。


「ナヴル様はどうでしたか?」

「ちゃんと話してみたら落ち込んでたよ。自分が何をしでかしたのか、説明すればわかって来たみたい。反省出来ても、ここから巻き返せるかは本人次第だけどね」

「そうでしたか……」


 ユフィの声に力はない、表情も暗いままだ。やっぱり気に病んじゃうよね。まだ時間がそんなに経ってないし、全部が解決した訳でもない。


「……恋の病は私にはわからないね」

「恋の病、ですか」

「熱病のようだと知っていても、実感がないから処置の仕方なんて知らないし。せいぜいお大事に、って所だよ」

「アニス様は恋をする事は病のようなものだと思ってるのですか?」

「心が正常じゃなくなって、正しい判断が出来ないという意味では病だよ。つける薬もない厄介な病だ」


 恋は溢れ出した感情の発露だ。自分の中に留めきれないもの、強い思い。だからこそ恋というのは厄介だ。自分で体感した事はないから、あくまでそう認識しているだけだけど。


「迷惑な話だよ、まったく」

「アニス様が迷惑だと他人を非難するのはどうかと……」

「あ、うん、ごめんなさい。……まぁ、魔法に恋をしてると言えば否定出来ないし。いや、どうかな? 私の魔学への思いはもう愛の領域かな」

「恋と愛は違うのですか?」

「んー。私は違う、かな。あくまで主観によるものだけど」


 恋はするもの。求めてしまえば止まらない、心が昂揚で満たされる激しい熱病のようなもの。

 対して愛は何か? 愛は、なるもの、あるものだと私は考えてる。


「愛は自然なんだと思う。誰かを愛するのも、何かを愛するのも自然体になっていく。当たり前になっていって、だから意識しないと気付けない。そして愛に気付いたら深まる。愛は真理にもよく似ていると思うよ」

「真理ですか?」

「愛がなくても人は生きていけるけど、愛があれば豊かになる。豊かだと言う事はそれだけ満たされるという事だよ。そこに形があるものがなくても満たされるのなら、何かに満たされている自分を知る事が出来る。それは素晴らしいものだと私は思うよ」


 究極的に言えば愛なんてなくたって人は生きていける。それでも人が他者との繋がりを切りきれないのは誰かを愛する事が出来る機能、心があるから。

 心あるものとして生まれたからには何かを愛してしまう。それは自然な事だ。ただ、それを愛と呼ぶには追求が必要で、切っ掛けがないと愛とすら認識しないかもしれない。

 恋は愛の切っ掛けで、愛は恋に繋がるのかもしれない。恋は語れない私だけど、愛なら語れる。それは今の私を作っているものだとはっきり言えるから。


「……アニス様は馬鹿なのか天才なのかはっきりしませんね」

「突然、失礼だね」


 馬鹿と天才は紙一重とは言うけど、私だってお説教なんて柄じゃない。ナヴルくんだって、彼は自分で気付けた。私が説教したからじゃなくて、ただ私との会話が切っ掛けだっただけだ。

 一息を吐いてユフィの顔を見つめる。ユフィはどこか困ったように笑って視線を落としていた。憂いを帯びたような表情を思わず見つめていると、ユフィが見られている事に気付いたのか苦笑に表情を変える。


「……ふと思うんです。こんなに良くして貰って、このままでいいのかと不安になって」

「だから訪ねて来た?」

「アニス様だったら答えてくれそうな気がして」

「勿論答えるよ。ユフィはその才能と努力で私の眼鏡に適ったんだ。当然の権利という奴だよ。それはアルくんにも、ナヴルくんにも、そしてレイニ嬢にだってないものだよ」

「ありがとうございます。……休む事も、足を止める事も大事なのはわかってるんです。けれど、なんだか穏やかすぎて、落ち着かなくて」


 どこか困ったようにユフィは表情を歪ませて、手に持ったカップの縁を指で撫でる。


「だからなんでしょうか。今日もどこに出かけたのか気になって。帰ってからずっと、どこか悩んでいるようでしたから。それでアニス様が頭を悩ませてるのが私が起こしてしまったことで、なんだか申し訳なくて……」

「ユフィが責任を感じる事はないんだけどな。被害者でしょ、ユフィは」

「いえ。……私が、悪い所もあったのでしょう。でなければ何もおかしな事にはならなかった。違いますか?」

「それも否定しないけど……」


 ユフィに責任が一切ない訳でもない。けれど不可抗力だとも思う。ユフィは必要以上に情を抱かずに王妃として完璧になろうとしていた。それ自体は悪いとは思わない、ただ他人に理解を求めるべきだったと思う。

 そして理解すべきはアルくんだったのだけどね。その点ではアルくんに情状酌量の余地はないと思ってる。だからといって完全にアルくんが悪いかと思うかというと、そうじゃない自分もいて、なんか複雑だ。


「……結局の所」

「はい?」

「私は、誰かが悪いなんて諦めたくないのかもしれない」


 皆が幸せであれば良いなんて、ふとした時に誰もが思う願いであって欲しいと私は思う。

 けれど人間が理解し合えないのだって仕方ない事だって思う。それを嫌という程に痛感した。もう夢なんか見ない、望まない。そう思った事がないなんて言わない。

 悪い人は悪いし、罪は罰を受けて償わなければならない。どうしたって人間比べれば差が出来て、悪い事に手を染めてしまう人も、悪い事に転がっていく事態だってあるのもわかってる。

 わかり合えない人もたくさんいる。現実はいつだってままならない事ばかりで。時にどうしようもない程に切なくなって、昔の夢を思い出してしまう。


「魔法はね、私にとって理想だったんだよね。魔法があれば皆を幸せに出来る、笑顔に出来るって。そう思ってたし、信じてたし、信じたままでいたかった。だから、尚更私は魔法に執着してるのかも。現実はそんな簡単じゃないんだけどね」

「……アニス様」

「あはは、ごめんね。こんな自分語りを聞かせるつもりはなかったんだけどね。なんか、ままならないなって思っちゃうと不満を溜め込んじゃうみたいで」


 こんな事、話せる相手も少ない。だからついつい心に澱みのようになって溜まってしまう。研究に没頭出来ていればそんな事も考える必要はなかったんだけど、そうもいかなくなりそうだ。

 少なくともアルくんが王になるか、私が女王になるかまで。王位継承権が戻ってきてしまった以上、向き合っていかなければならない問題だ。この国を守る為にも避けられない必要な事。


「お互い、ままならないね」

「……えぇ、そうですね」


 お茶は少し不味い味がして、やはり美味しくない。でも少し苦みが強いぐらいのお茶の味が今の気分には丁度良かった。



 * * *



「最近、気が滅入る事が多いのは刺激が足らないからだと思うのよ!」

「朝からお元気ですね、姫様は」


 翌朝、睡眠をぐっすりと取って冴えた頭で私は思った。そうだ、ストレス解消をしようと。

 確かに基礎を充実させるのも大事で、ユフィも表舞台に立つのは今は憚れる。だから大人しくしていた方が波風は立たない。

 そんな風に考えていたなんて、この私ともあろうものが大人しくなりすぎたのかもしれない。人間は日々欲求を満たしながら生きていると言うのに!

 ビバ研究! そうだ、何か新しい事を始めよう! 新しい研究に没頭していれば嫌な事なんて忘れましょう!


「という訳で何が良いかしらねぇ。何か良いアイディアはないかしら? ユフィ、イリア」

「突然言われましても……」

「姫様以上に奇抜な返答は致しかねるかと」


 奇抜って何よ、奇抜って。些細な一言からアイディアが花を開く事だってあるというのに。

 でも実際、新しい事に手をつけると言っても何が良いだろうか。今までにした事のない事にチャレンジしてみたい気が今は凄く強い。


「今まではどのような発明品を? 飛行用魔道具、護身用の携帯に便利な魔剣、私のアルカンシェルに、アニス様のドラゴンの刻印、あとはこの離宮で使われてる日用品……私が知る所でそんな所ですが」

「形になったものはだいたいそんな所かな」


 生活を便利にしたいという思いから作った日用品魔道具。それは離宮でこそ使われてるものの、量産はそこまでしてない。便利で需要が高い分、事故がないようにチェックは念入りにしたいと思ってるからだ。でないと予算も出ない訳だし。

 日常的に使うとなれば怪我や事故の要因が多く付きまとう。私としても出来るだけ危険になる要素は排除したい。こればかりはじっくり研究を詰めていくしかない。


「魔法で空を飛びたい、生活を楽にしたい、格好良いものが作りたい……大分夢は叶えてるのよねぇ。そう、最近はアイディアに詰まってたのも感じるのよね。何かこう、新しい世界の扉を開きたいと思わない?」

「はぁ……」

「ノリが悪いよ、ユフィ!」

「そう言われましても……」


 困ったように苦笑を浮かべているユフィ。うぅーん、何か新しい事が出来ないかな。この状況に感じるストレスを一気に帳消しにしてしまえるような何かが!


「それについては、私から少々意見が」

「お、イリア。何かな?」

「いきなりアイディアを出せと言われても困るのですが、ユフィリア様に来て頂いたお陰で今まで姫様に足りなかったものが埋められるので、そこも軸に出来るのではないでしょうか」

「それって魔法って事?」

「はい。姫様は魔力こそあれど、魔法を使う事は出来ません。これは周知の事実ですね」


 うん。魔力はあっても魔法は使えない。それは私を知る者にとってはよく知る常識という奴だ。


「なので姫様の使う魔道具は魔力を使って疑似的に魔法を再現する為や、魔力を有効活用しようと作られたものが多いのですが、魔道具には一つ共通点があります」

「共通点ですか?」


 ユフィが疑問に首を傾げた。魔道具の共通点。それは私が作ってきたものに見受けられるという意味でイリアは言いたいのだと思う。私も思い当たる事が一つある。


「折角だから、ユフィに答えて貰おうか」

「えぇ!? ……魔道具全般の共通点ですか?」

「はい」

「……申し訳ありません。見当もつきません。飛行用魔道具も、アルカンシェルも、この離宮の日用品も含めて、という事ですよね? そこにどんな共通点があるのか」

「んー、その分類で言うと実はアルカンシェルは例外だったりするんだよね」

「アルカンシェルは例外なのですか? ……余計にわからなくなりました」


 ユフィが困ったように眉を寄せてしまった。まぁ、目新しさというか、既存にない印象のせいでそう見えないだけなんだけどね。


「ユフィが可哀想だし、答え合わせをお願いしても良いかな? イリア」

「はい。魔道具の共通点は“シンプル”だと言う事です」

「……シンプル?」

「言い換えれば、魔道具一つで使える機能は原則一つなんですよ。なのでアルカンシェルは例外です。ユフィリア様の魔法を補助する、という意味では一つと言えますが」

「確かにそうですね。ですが、その用途の為に作られたのであればそれは当たり前の事なのではないですか?」

「確かにその通りです。ですが魔力を有効活用しようとした魔道具は別にしても、魔法を再現しようとした魔道具は“ないから作るしかなかった”んですよ、ユフィリア様。姫様は魔法を使えません。つまり応用も難しい」

「……ぁ」


 イリアの指摘にユフィが漸く理解したと言うように息を漏らした。


「魔法が使えるという事はそれだけで応用に使えます。……それに魔道具も作ろうと思えば複雑な、複数の機能を備えたものとて姫様なら設計だけなら出来るでしょう。但し、姫様は作りません」

「何故ですか?」

「使い勝手が悪くなるからです。だったら最初から機能はシンプルに、そして理解しやすいように作った方が良い。それが姫様の持論ですよね?」

「まぁ、そうだけど」

「しかし、それは姫様がそうしたかった訳ではありません。姫様は自由に魔法が使いたいのです。本来であれば複数の機能を兼ね備えた魔道具だって作るでしょう。けれど、作らないようにもしているのが本音ですよね?」

「“魔学は危険”だからね」

「……魔力があれば使える魔道具が様々な応用が出来てしまうと、どのような用途に利用されるかわからないからですか?」

「そう。それが問題」


 例えばマナ・ブレイド。あれは派生品もあるけれど基本的に剣として使えるようにしか作ってない。離宮で使っている日用品もそうだし、飛行用魔道具だって飛行にしか使えない。

 これは扱いやすくする為の意味もある。複雑な機能があればあるほど、混乱してしまう可能性もあるからね。これはいずれの量産を見据えれば、どうしても必要な事だった。万人受けしない道具は廃れるからね。

 そしてもう1つの理由。応用しやすい作りにすると悪用される可能性が高いから。

 万が一私の魔学が悪意ある者によって利用されてしまえば、誰かの為に作ったものが応用で何に化けるかわからない。それこそ前世のダイナマイトが良い例と言える。

 あれは本来、工事の為に使う事を目的に作った。その通りに使えば人の利益になるのは間違いない。でもダイナマイトは戦争に使えば兵器に早変わりする。便利な技術がどのように使われるのか、私は出来るだけ想定して責任を持って世に送り出さないといけないと思ってる。

 その意味で言えばマナ・ブレイドだってかなり危険だ。護身用として非常に優秀な出来だと思うけれど、これが暗殺者の手に渡れば暗器に早変わりするだろう。こういう不安要素は出来るだけ排除したい。


「姫様は人格と常識が破綻した困ったちゃんではございますが……」

「イリア、酷い!」

「否は認めません。ともあれ、他人様に迷惑をかけようと思って道具を作ってはいません。しかし先程の例にあげて貰った通りアルカンシェルはある意味、例外です」

「確かにアルカンシェルは少なくとも魔剣と魔杖の両方の機能を有していますね」

「姫様には扱いかねるものですが、ユフィリア様には丁度良かったのでしょうね。これに関しては今までの姫様の発明品とは毛色がやや異なります」

「そりゃ量産品とオーダーメイドは違うよ」


 そんな事を言ったら私の刻印だって違うし。あの技術は私以外に使わせる事を想定してない。量産なんかもするつもりもない。


「量産を前提にしているのは将来の事を見越してでもありますが、すぐに使わせる人がいなかったのも理由の一つだと思っていましたが?」

「それも否定しない……」


 基本的に私は魔法使いから印象が良くない。私と友好的に接して来ようなんていう魔法使いなんていなかったし、私もそれならそれでと諦めていた所がある。

 だから魔法を使いたいとは思っても、自由に使えるものよりは誰にでも使えるものを、と製作してきたんだな、と自分を振り返って思う。


「ならば、今一度原点に立ち戻って見るべきなのではないでしょうか?」

「原点?」

「姫様が自由に魔法を扱えるように出来ないか、ですよ」


 イリアから告げられた言葉に、私は思わず目を丸くするのだった。



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